AI(人工知能)と健康管理

リハビリテーションを支援するロボットについて調べてみた【2021年版】

リハビリテーションを支援するロボットについて調べてみた【2021年版】

脳卒中などで手足に麻痺が残った場合、本来の機能に少しでも近づけるためにリハビリをしますよね。しかし、ただ人が支えたり杖などの道具を使うだけでは長続きしにくいうえ効果にも限界があります。そこで注目されるのが、リハビリを支援するロボットです。

リハビリ支援ロボットは、器具を上肢や下肢に装着して起立や歩行をアシストしたり、そこにモニターを加えて理想の歩く姿を映し出しながら歩行意欲を促すものでます。これらは、動こうとする意志により脳から発せられる電気信号をセンサーが察知して適切な補助を行うので、希望する動作がよりしやすくなる仕組みです。

他にも言語機能を回復させる会話ロボットや脳に錯覚を起こして動かない指を動けるように促すロボットなど、その種類や機能は年を追うごとに増加しつつあります。しかしその一方で、普及には解決すべき課題も存在するとのこと。

この記事では、リハビリ支援ロボットについて詳しく解説するので、今後のご自身のリハビリに役立つに違いありません。

そこで今回は、リハビリ支援ロボットの種類や実例、導入状況や推進の取り組みについてお伝えします。

リハビリテーションを支援するロボットって何?

リハビリのイメージ

脳卒中や脊髄損傷の後遺症、長期入院による筋力の衰えなど、リハビリが必要となるケースはあまたありますよね。本人はもちろん、家族や周囲の人たちにとっても、少しでもその苦しみから逃れたい、元の状態に近づきたいと願っています。

それらのニーズに応えるべく機能改善を促したり運動補助を行うのが、リハビリ支援ロボットです。例えば脳卒中後に手足に麻痺が残った場合、本人の意志と力だけで回復するのは容易ではありません。

しかし、リハビリ支援ロボットを利用すれば、反応しにくくなった神経や衰えた筋肉を症状に合わせて適切に補助するので、各段に動きやすくなります。動かないと思っていた部分が動くように変化すれば、もっと良くなりたいという意欲やリハビリへのモチベーションが大幅に向上するでしょう。

身体の機能が衰えた人の補助をするという点では、介護ロボットとどう違うの?と気になる方もいますよね。介護ロボットは、日常生活の移乗介護、排泄支援、入浴支援など、要介護者を介助するためのロボットで、本人ではなく介助者が負担軽減のために使用するケースも多いです。

一方、リハビリ支援ロボットは、機能回復や生活の質の向上を前提として、リハビリを行う本人が使用するのが原則。また、主に理学療法士などの専門知識をもったスタッフがリハビリのプロセスで必要に応じてロボット操作を行うのが一般的です。そのため、リハビリ支援ロボットは個人向けレンタルもありますが、現在リハビリテーションができる病院や介護福祉施設を中心に導入が進められています。

リハビリ支援ロボットの種類とは

ロボットの種類のイメージ

リハビリ支援ロボットの種類には、主に「装着型」「据え置き型」「対話型」があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。

装着型リハビリ支援ロボット

もっともオーソドックスなリハビリ支援ロボットが、この装着型です。専用の運動装置を上肢や下肢に装着、または腰に巻き付けるなどして、皮膚にとりつけた電極が脳からの生体信号が筋肉に伝わる時の微弱電流を読みとり、立ちあがる、歩く、つかむなどの動作をアシストします。

アシストする力は手元で細かく調整できるので、動作の難易度に応じて自由にセット可能です。例えば、立ち上がる時は足にも腰にもかなりの負荷がかかりますよね。そのような場合は、アシストを強めに設定しつつ、歩き始めてリズムがとれテンポよく動けるようならアシストを弱くするといった具合です。

このように、体力に合わせながら何度も装着して動くことにより、歩く、つかむ、などの感覚が徐々によみがえってきてリハビリ効果があらわれます。なかには正しい動きを機械学習したAI(人工知能)が、不適切な動きを修正するかたちで動きをサポートするものもあります。もちろん自立歩行が難しい場合は、人が支えたり、杖や歩行器を併用したり、ハーネスを上から吊り上げて負荷がかからないようにして使います。自分の足で立てるようになったり、壁を伝いながらもある程度自立歩行できるくらいに回復した方におすすめです。

据え置き型リハビリ支援ロボット

麻痺などの後遺症が重く、その場から移動が難しい場合は、据え置き型のリハビリ支援ロボットを使います。この種類では、ハーネスを上から吊り上げて体重を軽くし、動くコンベア上をゆっくり歩きます。

多くの場合、前面にモニターを設置して歩く姿を映し出したり、重心の偏り具合を表示します。なかには、コントローラーを使って獲物をキャッチするなどゲーム機能を備えたタイプもあるので、楽しみながらリハビリができますよね。

一般的に、発症してから6ヶ月までの急性期にどれだけリハビリが進むかで、その後の回復度合いが違うといわれます。逆に6ヶ月を過ぎて慢性期に入ってしまうと、リハビリがマンネリ化して目に見えた効果が薄くなるのだとか。よって、リハビリをスタートしてすぐの段階から据え置き型リハビリ支援ロボットを導入すると効果的でしょう。

対話型リハビリ支援ロボット

主に話すといった言語機能に問題がある場合は、対話型リハビリ支援ロボットが役立つでしょう。多くの場合、卓上に据え置く形でAI(人工知能)が語りかけます。「こんにちは」という挨拶から「今日は何曜日ですか?」「趣味は?」など簡単な会話をもちかけ、AI(人工知能)が学習機能によってその相手にあわせて会話内容をカスタマイズします。

相手が人だと緊張してしまうこともありますよね。でも、ロボットならばリラックスできるうえ会話が続かなくても気を遣う必要もありません。やめたければいつでもスイッチを切れますから、自由度が高い点はリハビリ向きでしょう。

リハビリ支援ロボットの実例

サポートのイメージ
続いては、リハビリ支援ロボットの代表的なものを紹介しましょう。

CYBERDYNEのHAL

CYBERDYNE株式会社(茨城県つくば市)の『HAL自立支援用下肢タイプPRO』は、脚の長さや腰幅、足のサイズなど個人の体格に合わせて調整のうえ装着できるリハビリ支援ロボットです。人が動こうとするときに、脳から神経を通じて筋肉に流れ体表に漏れ出る生体電位信号を皮膚につけたセンサーがキャッチします。

例えば「右足を前に出したい」「左足を後ろに下げたい」など、実際はできなくても脳内で考えるだけで、その意志を組んだHALが適度な力でその動きを促し実現させます。生体電位信号に基づくこれらの運動を繰り返すと、やがて脳神経と筋系のつながりが促され、かつて行っていたような身体機能の回復が期待される仕組みです。

シンプルなインターフェースでスタート、ストップなどの設定変更ができ、専用のモニター画面に動作状態を映し出すことも可能です。よって、視覚で確認できる分修正点が自覚しやすいため、リハビリ効果がより高まるでしょう。実際に多くのリハビリ効果が評価され、国指定の難病8疾患への保険適用が認められています。

トヨタのウェルウォークWW-2000

トヨタ自動車株式会社(愛知県豊田市)の『ウェルウォークWW-2000』は据え置き型のリハビリ支援ロボットです。ハーネスを使って上から上半身を吊り上げ、膝上までのロボット脚を装着してコンベアの上を歩くとAI(人工知能)を搭載した複数のセンサーが歩行状態を自動検知します。

ウェルウォークでは、コンベアの上を歩くと正面のモニターでその姿が映され、理想のスタイルとの違いもリアルタイムで表示します。また、検知内容によって「振り出し困難」「体幹の後傾」「急激な膝関節の伸展」など画面上の数十の項目が点灯し、異常歩行についても音声でフィードバックするので、自分でも補正しやすいでしょう。

このウェルウォークWW-2000がユニークなのは、ゲームを使って楽しくリハビリにアプローチしている点です。画面には、東海道五十三次の道のりや行き交う人たちの姿などがにぎやかなレイアウトで表示され、実際に歩くと各宿場に到着します。歩行距離によって点数がアップするので、モチベーションも上がるに違いありません。

リハビリは不安との闘いでもありますから、このような工夫は気が紛れて助かりますよね。実績が認められ厚生労働大臣賞を受賞した『ウェルウォークWW-1000』の後継機として、AI(人工知能)を搭載のうえ、満を持してリニューアルされました。

インターリハのKiNvis

インターリハ株式会社(東京都北区)のKiNvisは、脳に錯覚を起こしてリハビリを行う支援ロボットです。例えば、右手が麻痺していて左手が健常だとします。据え置き型のブース内に座って左右の手を反転させて、あらかじめ撮影しておいた麻痺していない左手が動く動画をモニターに映し出します。

すると、あたかも麻痺している右手が動いているように錯覚できます。これにより、脳から右手を動かすための筋肉を動かす刺激を送るように促す効果があるのだとか。

身体の一部が麻痺するというのは、想像を絶するショックを伴います。よって、もうダメと脳が思い込んでしまうケースが多いため、それが回復を邪魔しているのも事実。しかし、その脳の思い込む力を逆手にとったのが、この自己運動誘導錯角システムを搭載したKiNvisです。実際に、KiNvisでリハビリした結果、積み木のブロックが持てなかった人が、スプーンを使えるまでに回復しました。

リハビリ支援ロボットの導入状況

病院のイメージ
リハビリ支援ロボットは、リハビリ病院で医療保険が適用される形で使用するケースが多いです。しかし、いつまでも保険適用下でリハビリを継続できるわけでなく、医療保険には適用制限期間があり、多くの場合90~180日で終了となります。その後は、40歳以上なら介護保険が適用される場合もありますが、自費でのリハビリという場合も多いです。

すると経済的な理由で思ったようにリハビリが続けられないケースもあり、いたずらに多くのリハビリ支援ロボットを増やそうという機運は生まれません。また、介護ロボットは国や自治体の補助金の支給や免税措置、金融機関からの低利融資などが受けられることが多いですが、リハビリ支援ロボットの場合は、高額(1台数千万円)にもかかわらずその点が(介護ロボットに比べると)手薄です。

よって、リハビリ支援ロボットは導入件数が限定的といわざるをえません。(トヨタのウェルウォークWW-2000でも年間売り上げ目標はわずか50台)自宅用のレンタルサービスもありますが、月額10万円近くになるため、こちらも利用者は限られています。

また、リハビリ支援ロボットが対応できる疾患が限られており、筋肉の硬さや痛み、痙性の強弱の細かな違いに合わせた使い分けは技術的に難しいのが現状です。よって、症状によって使用制限があるため導入数が増えないという一面もあるでしょう。

リハビリ支援ロボット導入推進の取り組み

お金のイメージ

CYBERDYNEの『HAL自立支援用下肢タイプPRO』を使う場合、筋委縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症をはじめとする8疾患については、保険適用が認められています。しかし、それ以外の疾患のリハビリには、保険期間が限られている現状があります。その理由は、他の疾患は患者数が多く、そのすべてに保険適用を認めるのは財政的に難しいからです。

上記8疾患の場合は難病にあたるため、機能回復というより延命のためにも悪化を遅らせるのが主目的。よって、命の危険にさらされているわけではない中での機能回復や生活の質を向上する目的のリハビリについては、国を挙げて導入を奨励しているとまではいえません。

ただ、自治体によっては、法人や個人への導入費用の助成やリハビリ支援ロボット開発のための助成金を支給している例もあるため、制度を利用して高品質で低価格なロボットの開発が進めば、導入の推進が期待できるかもしれません。

リハビリ支援ロボットのこれから

支えるイメージ

リハビリ支援ロボットのクオリティは、ときと共に進化を遂げています。今後もAI(人工知能)をはじめとする高度なデジタル技術を活かして一人一人により適したリハビリ方法が開発・実装されれば、さらに需要は高まるに違いありません。

もちろん、リハビリ支援ロボットは高額なうえ、国や自治体による補助制度が限定的なため、導入するのは容易ではありません。ただ65歳以上の高齢者の割合が総人口の30%に達しようとしているなか、寝たきりや要介護者を増やさないためにも、リハビリ支援ロボットのさらなる普及は必須の課題です。それを考えると、一億総活躍社会を実現するためにもリハビリ支援ロボットの存在意義は大きいです。

まとめ

さて今回は、リハビリ支援ロボットの種類や実例、導入状況や推進の取り組みについてお伝えしました。

リハビリ支援ロボットは、脳卒中や脊髄損傷の後遺症、長期入院による筋力の衰えなど、リハビリが必要な場合に機能改善を促したり運動補助を行うロボットです。リハビリ支援ロボットには、主に「装着型」「据え置き型」「対話型」の3タイプがあります。CYBERDYNEのHALは装着型、トヨタのウェルウォークWW-2000とインターリハのKiNvisは据え置き型です。

リハビリは保険期間に制限があるため、その後は自費で継続しなければならないことが多く、国や自治体の補助も介護ロボットほど手厚くないため、導入状況は限定的といわざるをえません。しかし、今後さらに高品質で安価なリハビリ支援ロボットが開発されれば、需要は増加していくに違いないでしょう。

また、HALをはじめとする秀逸なリハビリロボットに特定の難病以外への保険適用が認められ、国や自治体の補助制度が充実すれば、高齢化社会が進むなか、寝たきりにならずにすむ人も増えるはずです。今後、リハビリ支援ロボットの必要性が社会に広く認知され、適切に導入数が増えることを期待しましょう。

【お知らせ】

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