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人手不足を救う「介護ロボット」、その実態と今後についてまとめてみた

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自分が年老いて動けなくなった時、誰が世話をしてくれるんだろう・・・なんて誰しも一度は考えたことありますよね。でもたいてい「人の世話にはなりたくない!」と意識の外へ強制追放。どうにもならないことを考えるのは面倒ですから。

でも、そんな誰もが不安に思っている介護問題に救世主が。そう、それが「介護ロボット」です。介護ロボットがあれば、介護者は腰を痛める心配がないし、介護される側だって気を使わなくていい。「利用しない理由がない」でしょう。

でも実はこの介護ロボット、開発は進んでいるのにまだあまり普及していません。介護ロボットに活躍してもらったら、大変な介護が楽になりそうなのに「どうして?」と不思議に思いますよね。

今回はその理由を解明するために、「介護ロボット」についてその「実態」と「今後」についてお話します。

そもそも介護用ロボットとは

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介護ロボットとは、「利用者の自立支援」、「介護者の負担の軽減」のために役立つ「ロボット技術」が応用された介護用機器のこと。

「ロボット技術」のロボットは、次のような要素を持っている機械システムのことをいいます。

  • 情報を感知し(センサ系)
  • 判断し(知能系・制御系)
  • 動作する(駆動系)

このような、知能化した機械システムのことを「ロボット」といい、この技術を応用した介護機器を「介護ロボット」と呼んでいます。

介護ロボットの具体例としては、「見守りセンサ」や「歩行アシストカート」、介助者の身体の動きを助けてくれる「装着型パワーアシスト」など。

これらの介護ロボットは冒頭でもお話した通り、まだあまり普及していません。ここは日本の将来のためにも、政府が積極的に改善に乗り出して欲しいところですよね。

次に、「国」は介護ロボットについて「どのような取り組みをしているのか」をみてみましょう。

介護ロボットを開発・支援する国の取り組み

介護ロボットのイメージ

厚生労働省と経済産業省は、「介護ロボットの開発と普及のための取り組み」において、次の6分野の「開発導入を支援」しています。

ロボット技術の介護利用における重点分野

  • 移乗介助(装着型パワーアシスト、非装着型パワーアシスト)
  • 移動支援(屋内・屋外の歩行支援器、装着型移動支援機器)
  • 排泄支援(排泄物処理機能付き移動トイレ、トイレ誘導機器、着脱など動作支援機器)
  • 見守り・コミュニケーション(見守りセンサやアラーム、コミュニケーションロボット)
  • 入浴支援(浴槽に出入りするための動作支援機器)
  • 介護業務支援(ロボット技術を用いて情報を収集し、そのデータを支援に活用する機器)

※カッコ内は介護ロボットの例

国はこれら6分野において介護ロボットの「開発・実用化支援」や介護現場での「導入・活用支援」に取り組んでいます。国のこのような取り組みを知る機会はなかなかないけれど、着々と普及に向かって進んでいることがわかると「ちょっと安心」できますよね。

では次に、実際現場ではどのような介護ロボットが活躍しているのか、種類別にチェックしていきましょう。

介護用ロボットの種類を実際のロボットと一緒に解説

介護ロボットのイメージ

私たちの介護を助けてくれる「介護ロボット」は、機能別にみると次の3つに分類できます。

  • 介護支援型
  • 自立支援型
  • コミュニケーション型

ではこれら3種類にわけられる介護ロボットを、実例をあげてみていきましょう。

介護支援型

この介護支援型は、「介護する人」を支援する介護ロボットです。

ロボットスーツHAL® 介護支援用(腰タイプ)

ロボットスーツHAL® 介護支援用は、「人を抱きかかえる」動作をする時、腰の負担を軽減してくれる介護ロボット。身体を動かそうとした時「脳」から「筋肉」へ送られる「信号」をキャッチして動作をアシストしてくれます。

頭で「考えたこと」がロボットに伝わるって、「技術はここまで進んでいたのか」と驚きです。

【移乗サポートロボットHug】

移乗サポートロボットHugはその名の通り、利用者がロボットを抱きかかえるように寄りかかって使用します。自力で立ち上がることが難しい方用で、ベッド・車いす・お手洗いの移乗と、着替え時の立位保持をサポートする介護ロボット。

「足に重心を移動させながら立ち上がる動作」をHugが補助し、残っている脚力を最大限にいかすことが可能。Hug自体が35kgと軽量で、操作性が良いのも特徴です。

利用者にとって、介護者への「重いのに申し訳ない」という気持ちが軽減されるので、ベッドからの移乗が気軽になるでしょう。

自立支援型

この自立支援型は、「介護される人」の自立を支援する介護ロボットです。

【ロボットアシストウォーカーRT.2】

ロボットアシストウォーカーRT.2は、電動アシスト付きの歩行器。通常の歩行器だと蛇行したり転倒したりする危険がある場合に、それらを防ぐ介護ロボットです。

上り坂や下り坂、傾いた道でのサポート、自動ブレーキなど便利な機能がいっぱいついているので、歩行が心もとない方には心強い味方でしょう。本体の重さは9kgなので、折りたたんで自動車に積みこむことも可能です。

コミュニケーション型

このコミュニケーション型は、「介護される人」の癒しになったり、見守りをしたりする介護ロボットです。

【スマイビS】

スマイビSは、癒し型のコミュニケーションロボット。表情豊かで赤ちゃん語でお喋りします。その効果は主に次の4つ。

(利用者本人の行動や効果 → 介護者の負担軽減内容)

  • 話しかけてかわいがる → 見守り・監視の負担軽減
  • 赤ちゃん語や表情から、気持ちを想像 → 赤ちゃん語を言い換えて入浴や排泄を促す。介護抵抗の軽減。
  • スマイビSを抱くことで心の拠り所を得る → 徘徊の抑制。監視・誘導対応の軽減。
  • スマイビSと日中過ごすことで、お昼寝時間の減少 → 夜間の失禁管理、徘徊監視負担の軽減。

スマイビSはお世話をすると「泣いたり笑ったり」と反応があります。無気力になりがちな施設の生活の、良い刺激になりそうですよね。

【シルエット見守りセンサ】

シルエット見守りセンサは、赤外線画像で動きを感知し、ベッドからの落下や徘徊を防ぎます。ベッド脇の壁にセンサを取り付けると、指定(入力)した動き(起き上がり、立ち上がりなど)があった場合、離れた場所にあるパソコンやスマホに通知がいくシステム。

画像で動きを確認する時「シルエット画像」なのでプライバシーも守れます。いつもカメラで見張られていたらストレスになりますから、利用者も「シルエット画像」なら受け入れやすいでしょう。

シルエット見守りセンサは、施設での夜間の見守りに特に便利。センサの取り外しが簡単なので、必要に応じて別の部屋で使うことも可能です。

さて、機能別に5種類の介護ロボットをご紹介しました。これらの介護ロボットを駆使したら、介護現場の人手不足解消に役立ちそうですよね。

次に、介護ロボットを導入するとどんな良い点、悪い点があるのかをみてみましょう。まずは介護ロボットを使うメリットから。

介護ロボットを使うメリット

ロボットを利用するイメージ

介護ロボットを使用すると「介護する側」と「介護される側」双方にメリットがあります。

介護する側

介護する側のメリットとして1番に挙げられるのは、腰痛など身体的負担が軽減される点。介護者は1人で1日何人もの利用者を「トイレ、食事、散歩、入浴」などのたび、車いすやベッドへ抱えて移動しなければいけません。腰痛は介護者の職業病のようなものですから、これが解消されるのは大きなメリットでしょう。

また、見守りセンサなどで各部屋の様子が手元の端末で確認できると、見回りの回数も抑えられて精神的負担も大きく軽減。

このように、介護ロボットは「介護する側」の身体的・精神的負担を軽くしてくれるメリットがあります。

介護される側

介護ロボットを使うと「介護される側」にも大きなメリットが。それは介護ロボットがないと、次のような問題点があるからです。

  • 忙しい介護者に遠慮して、つい何でもガマンしてしまう。
  • トイレ、入浴、着替え時の「恥ずかしさ」がストレスに。

忙しそうなスタッフには頼みにくいことも、介護ロボットなら気を使わなくていいから楽ですよね。

では介護ロボットを使うことによってデメリットはあるのでしょうか。次でみてみましょう。

介護ロボットのデメリット

介護ロボットを使うことによって考えられるデメリットは

  • 介護ロボット導入にかかるコストが大きい
  • そもそもどのような介護ロボットを導入すればいいのかわからない。
  • 導入しても、各介護者が全員「使いこなす」のには時間と手間がかかり、余裕のない現場ではそのまま放置されることもある。
  • 介護ロボットが「大きい」「重い」ために取り扱いが不便で、スペースも必要。

せっかく高価な介護ロボットを導入しても、使いこなせないのではもったいないですよね。国は介護ロボットの導入後も「調査・評価」などのフォローをすることによって、活用につながる支援をしています。

ここで、介護ロボットを導入している事例をみてみましょう。

介護ロボットを導入した事例

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では実際に介護ロボットを導入した施設の事例をご紹介します。

事例1.ロボットスーツHAL® 介護支援用(腰タイプ)の導入事例

大和ハウスライフサポート株式会社では「ロボットスーツHAL」を、介護スタッフの腰の負担を和らげるために有料老人ホーム6施設に計6機導入。

しかし、最初の半年は使いこなすことができず全く浸透しなかったそうです。
その後全員が慣れるまでトレーニングを重ねた結果、1年10か月後には大半のスタッフが効果を実感。それが職場のイメージアップにつながり、「学生のなりたい職業TOP10」入りを果たしたそうです。

これはわかりやすい「成功例」ですよね。

事例2.シルエット見守りセンサの導入事例

社会福祉法人友愛十字会特別養護老人ホーム砧ホームでは、シルエット見守りセンサを5台、タブレット端末8台を導入。

主に夜間の見守りに利用したところ、利用者のプライバシーを守りつつも、ベッドからの転落や転倒防止に役に立っているそうです。

従来のセンサでは間に合わないようなケースでも、シルエット見守りセンサなら早めに動きを感知し、すばやく駆け付けることが可能。タブレットで様子を確認できるため、各部屋への見回りが減り業務の効率化につながっています。

そしてその他にも次のようなメリットが。

  • 施設利用者の家族へ、画像を見せて状況説明が可能
  • 生活パターンの把握ができる
  • 起き上がる理由の把握により、快適な睡眠のための環境整備に役立つ

このような点においてもシルエット見守りセンサは、介護業務の負担軽減に大きく貢献しています。介護者に心の余裕が生まれると、よりきめ細やかな介護が実現できるでしょう。

では最後に、介護ロボットの未来について考えてみました。

今後の介護ロボットの未来

ロボットのイメージ

介護スタッフ、施設利用者、どの場合においても、介護ロボットを導入するメリットは数多くあります。政府も開発・導入に力を入れているので、介護ロボット普及への道のりは順風満帆な気がしますが・・・。

ただそれには次のような問題点もあります。先ほど「デメリット」のところでもお話しましたが、

  • 介護ロボットの単価が高い
  • スペースの確保
  • 現場のニーズに合わせた介護ロボットの選択が難しい
  • 操作技術の不足

このようなことが、今はまだ解決されていません。

1つずつみていくと、「価格」は大量生産されるようになると落ち着いてくるはずです。介護ロボットの開発技術が進歩すれば小型化も徐々に可能になるでしょう。
現場での問題は、その対策として今「スマート介護士」という民間資格が注目されています。「スマート介護士」は介護ロボットやセンサ機器を効果的に使って、質の高い介護と業務効率化を目指す資格。

この「スマート介護士」が現場目線で介護ロボットの活用に取り組み、その「効果」をわかりやすい形で可視化できたら、一気に利用拡大が進みそうです。

残念ながら介護ロボットが導入しやすい「価格」と利用しやすい「形」に落ち着くまで、まだ相当時間がかかるでしょう。でも介護業界の頼みの綱である介護ロボットに、今は希望を託したいところ。そして将来を憂うことなく安心して老後を迎えたいですよね。

 

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今回は介護ロボットの実態と、今後について次のようなお話をしました。

  • 介護ロボットとは「利用者の自立支援」、「介護者の負担の軽減」に役立つ介護用機器のこと
  • 国が「介護ロボットの開発と普及のための取り組み」に重点をおいている6分野のご紹介
  • 介護ロボットには「介護支援型・自立支援型・コミュニケーション型」の3種類あること
  • 介護ロボットのメリットは、「介護する側」の負担軽減、「介護される側」の精神的な負担軽減に役立つ点
  • 介護ロボットのデメリットは、「コスト・ニーズのギャップ・操作方法・大型であること」
  • 介護ロボットの導入事例「HAL」と「シルエット見守りセンサ」について2つご紹介
  • 介護ロボットの未来は、スマート介護士の活躍が鍵

まだ問題点は山積みですが、今後ますます深刻になっていく高齢化社会に向けて、介護問題は「明日は我が身」。私たちは「自分の問題」として政府の動きを見守っていく必要がありそうです。

介護ロボットが広く普及したら、私たちの老後は豊かで希望に満ちたものになるでしょう。「人の世話にはなりたくない」なんて後ろ向きな考えは消え去って、「老後は何をして楽しもうか」と考える余裕も出てきそうです。

私たち誰もが「老後が楽しみ」と思えるような社会になるといいですよね。

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