AIとは何か

Artificial Intelligenceを略してAI!今こそ見直すAIの基本

Artificial Intelligenceを略してAI!今こそ見直すAIの基本

WebやテレビなどではAI(人工知能)に関するニュースを毎日目にするようになりましたよね。ところで、AI(人工知能)とはArtificial Intelligenceを省略したものなんですが、このArtificial Intelligenceという言葉が誕生したのがなんと1956年というから、ちょっと驚きですよね。今や現在の先端技術の代表選手のイメージがあるAI(人工知能)ですが、既に60年を超える歴史を持つ技術なんです。

現在のAI(人工知能)ブームの立役者であるディープラーニングの元となる技術は既に1957年に考案されていましたが、当時のコンピュータ性能不足などの理由により大きく研究が進められることはありませんでした。近年、ディープラーニングが注目されている背景には、昨今のコンピュータ性能の大幅な向上に加えて、ビッグデータによる大量の学習データ入手が可能になった点があります。

今回は、今こそ見直すAI(人工知能)の基本ということで、AI(人工知能)の得意分野と苦手分野についてお伝えします。

Artificial Intelligence(人工知能)の歴史

歴史のイメージ

まず最初にAI(人工知能)の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

Artificial Intelligenceという言葉が使われ始めたのは1956年です。当時、実質的なAI(人工知能)研究の出発点となる会合である「ダートマス会議」において会議の主催者であるジョン・マッカーシーにより「Artificial Intelligence」という名称が定義されました。コンピューターによる推論や探索により特定の問題に対して解を提示できるようになりブームとなりましたが、様々な要因が絡み合っているような現実社会の課題を解くことはできないことが明らかになり、60年台後半にはブーム終了となってしまいます。

1980年台前半に始まる2回目のブームでは知識をコンピュータが理解できる形で記述することにより、AI(人工知能)が実用可能な水準に達し、様々なエキスパートシステム(専門家のように処理可能)が生み出されます。日本では「第五世代コンピュータ」という政府主導のプロジェクトが進められましたが、人間の思考回路を含めた世の中全てのことを、人間がコンピュータ用に記述する(こうだったら、ああする)ことは無理と判明、再びブーム終了となってしまいました。
2000年代に入り、全てのことを人間がコンピュータ用に記述するのは無理、といった課題を解決すべく登場したのが機械学習です。人間が記述するのが無理であれば、機械(コンピュータ)に記述させてしまおうという考えです。機械学習の実現には、いくつかの手法が検討されますが、2006年、カナダ・トロント大学のジェフェリー・ヒントン教授がディープラーニングの概念を提唱します。

2012年、画像認識技術を競う世界的な競技会「ILSVRC」において、ディープラーニングを使用したジェフェリー・ヒントン教授率いるチームが圧勝したことでディープラーニングは俄然注目を集めます。本競技会では毎年1%レベルの改善で進んでいたのをディープラーニングにより、一気に約10%の改善を実現してしまいます。また同年の6月、Googleとスタンフォード大学がディープラーニングにより猫の画像を「猫」と認識することに成功、2016年にはディープラーニング技術によるディープマインド社の「AlphaGo(アルファ碁)」が韓国の棋士イセドルに勝利などの様々な業績を達成したこともあり、ディープラーニングとAI(人工知能)は一気に世の中の注目を集めます。

以上、現在のブームに至るまでの経緯を簡単に確認してみました。次に、AI(人工知能)の得意分野について確認しましょう。

Artificial Intelligence(人工知能)の得意分野

ゲームのイメージ

AI(人工知能)の得意分野の事例として、囲碁対戦および医療画像認識について確認しましょう。

囲碁対戦(完全情報ゲーム対戦)

2016年のAlphaGoによる韓国の棋士イセドルへの勝利は大きなニュースになりましたよね。棋士イセドルは2007~2011年の世界ランキング1位の棋士で、そのあまりの強さに当時の評判は「AlphaGoが勝てる訳がない」でしたが、結果はAlphaGoの5勝1敗。2016年当時世界最強の棋士柯潔(かけつ)はこの結果を受けて「自分なら負けない」と豪語しますが、翌年のAlphaGoとの対戦で3戦3敗と完敗します。

囲碁などの完全情報ゲームは探索空間こそ非常に広いですが、ルールで決められている閉じた空間であるためAI(人工知能)にとっては得意分野となります。

AlphaGoはその後も改良を続け、イセドルに勝利したAlphaGoに対し100戦100勝の能力を持つAlphaGo Zero、更にはその後、囲碁以外に将棋とチェスまで対応するAlphaZeroまで改良を続けることにより、人類の能力を遥かに超えた領域にまで到達してしまいます。

AlphaGoがどれだけすごい影響を及ぼしたのかは以下の記事に詳しく書いてあります。

また、なぜAlphaGOが勝つことができるようになったのか、はこちらの記事をご覧いただけるとより理解できるでしょう。

(参考)完全情報ゲーム:これまでにとられた行動や実現した状態に関する情報がすべて与えられているゲーム。囲碁/将棋/チェス/オセロなど。不完全情報ゲーム:ポーカー/麻雀/花札など。

医療画像認識

理化学研究所と国立がん研究センターの研究グループは、米ハワイの学会においてAI(人工知能)を使って早期胃がんを発見することに成功したと発表しました。早期胃がんは専門医でも炎症との判別が難しい診断ですが、熟練医に迫るところまで精度を高めたAI(人工知能)により、がんの80%をわずか0.004秒で発見することに成功しました。

日本はCT(コンピュータ断層撮影)では台数/人口100名当たりの台数とも日本が世界1位、またMRI(核磁気共鳴画像法)では台数は世界2位、人口100名当たりの台数は世界1位ですが(2017年6月時点)、CT/MRIで撮影した画像解析を行う放射線科医が世界に比べて圧倒的に少ない状況です。

このような背景もあり、医療画像診断における、がんなど病変見落としの問題も発生しており(医療事故情報を収集する日本医療機能評価機構の調査によると平成27~29年の3年間に発生した病変見落としは32件)今後の医療分野におけるAI(人工知能)活用に期待が高まっています。

以上、AI(人工知能)は既に高い能力を持っており、いずれ私たちの多くの仕事を奪ってしまうのではないか、と不安な気持ちにもなりますよね。それでは、AI(人工知能)は何でも対応できる万能選手なんでしょうか?次にAI(人工知能)が苦手な分野について確認しましょう。

Artificial Intelligence(人工知能)が苦手な分野

コンビニのイメージ

私たちにとって極めて高度な能力を示すAI(人工知能)ですが、私たちが普段意識することなく出来ていることが実は苦手であることが分かっています。例えば、私たちがコンビニなどで商品を取り上げる操作が該当します。

「ロボットアームを操作し、おもちゃや本を動かそうとする。その動きはあまりにもぎこちなく、たどたどしい実験を繰り返している」これは、2018年10月の米カリフォルニア大バークリー校のAI(人工知能)研究室での光景です。

1980年代のAI(人工知能)学者やロボット工学の研究者により示された「モラベックのパラドックス」というものがあります。これは「コンピュータに、専門知識による処理を行わせるよりも、4~5歳児レベルの知覚と運動のスキルを与える方が遥かに難しい、あるいは不可能」というものです。モラベックによると(Wikipediaより。カッコ内は筆者追記)、

  • 動物にも共通するような人間のスキルは長期間発展してきたため、我々はそれらをリバースエンジニアリング(この場合は、人間の動作を解析して人間の動作原理を明らかにすること)する困難さを予期すべきである。
  • 最古の人間のスキルは無意識のうちに働くことがほとんどであり、我々には簡単なことに思える。
  • したがって、一見して簡単なスキル(4~5歳児レベルの知覚と運動のスキル)はリバースエンジニアリングするのが難しく、逆に努力を要するスキル(専門知識による処理)のリバースエンジニアリングは簡単かもしれない。

コンビニ店員が私たちが購入した複数の商品について、例えば各々の弁当のメニューを判断しながら、最適な順序/方向でレジ袋に詰め込む作業はAI(人工知能)にとっては驚異の技に見えるかもしれません。

 

以上、今回は、今こそ見直すAI(人工知能)の基本ということで、AI(人工知能)の得意分野と苦手分野についてお伝えしました。

  • Artificial Intelligenceという言葉が使われ始めたのは1956年の「ダートマス会議」から
  • Artificial Intelligence(人工知能)の得意分野

囲碁対戦(完全情報ゲーム対戦):囲碁などの完全情報ゲームは得意分野
医療画像認識:熟練医に迫る精度を持ち、短時間で高い精度でがんの検出が可能

  • Artificial Intelligence(人工知能)が苦手な分野

私たちが普段意識することなく出来ていることが苦手。例:コンビニなどで商品を取り上げる操作

現在のAI(人工知能)は、特定の業務のみに極めて有能なパートナーと捉え、AI(人工知能)の得意不得意を利用しつつ私たちが有効活用することにより世の中の様々な課題解決を目指してゆく必要がありますよね。

 

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