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もうオペレーターは不要?コールセンターへのAI適用事例4件

もうオペレーターは不要?コールセンターへのAI適用事例4件

私たちが普段からよく利用するコールセンターですが、プッシュボタンや自動音声の導入など、比較的早くから自動化が進んでいます。近年、企業へのさまざまなAI(人工知能)適用が進む中、コールセンターのオペレータ業務は「AI(人工知能)に奪われる仕事」の上位にランキングされているイメージがあります。はたしてオペレータはAI(人工知能)により、いずれ不要になってしまうのか気になりますよね。

そこで今回は企業へのAI(人工知能)適用事例として、コールセンターへのAI(人工知能)適用について考えてみます。

従来、コールセンターには顧客からのクレームや質問に対する電話対応の役割が求められていましたが、近年は製品・サービスを購入した顧客とのコミュニケーションによる顧客満足度の向上(相談・質問して良かった!)、更には顧客からの改善要望のフィードバックにより自社製品・サービスの価値を高める、という極めて重要な役割も担っています。
一方、コールセンターは電話業務の多忙さやストレスの多さから離職率が非常に高く、慢性的な人手不足への対策としてAI(人工知能)による業務効率化が行われています。

それではまず最初に、コールセンターへのAI(人工知能)適用による業務効率化例として、よくある質問(FAQ)への自動回答オペレータ支援機能がありますので、それぞれについて確認してみましょう。

よくある質問(FAQ)への自動回答

スマホより問い合わせているイメージ

コールセンターには日々様々な問い合わせが寄せられますが、問い合わせ内容には似通ったものが多く、パターン化することができます。

このようなパターン化された「よくある質問(FAQ)」については、AI(人工知能)で対応させることでオペレータの工数削減を実現すると共に、ルーティンワークからオペレータを解放することになります。そうすると、人間でないと対応できない高度な対応業務にオペレータを集中させることができます。また、よくある質問(FAQ)への対応であれば、オペレータ対応が困難な深夜の問い合わせへの対応も可能となります。

(適用事例)三菱東京UFJ銀行
三菱東京UFJ銀行は、スマホから音声により銀行取引の各種手続きに関する問い合わせが可能なスマートフォン・AI(人工知能)アプリ「MAI/MAIQ」を提供しています。銀行取引の手続きに関する質問を音声入力すると、AI(人工知能)が音声の質問内容を文字データに変換/解析し、三菱東京UFJ銀行のウェブサイトに掲載されている「よくある質問(FAQ)」より回答を案内してくれます。なお、問い合わせ内容がAI(人工知能)アプリでは応対困難な複雑な手続き、あるいは相談の場合には、直前までの会話履歴と共にオペレータに引き継いでくれます。

それでは次に、2つ目の業務効率化例であるオペレータ支援機能について確認しましょう。

オペレータ支援機能

ディスプレイの表示内容を確認しているイメージ

オペレータ支援機機能とは、お客様とオペレータとの会話内容をコールセンターのAI(人工知能)が解析し、適切な回答例をパソコン画面上に表示することができるものです。

従来の、顧客からの問い合わせに対しオペレータ自身で情報検索し回答する方法では、オペレータ個人のスキル差により新人オペレータとベテランオペレータ間で顧客対応の品質に大きな差が生じていました。

しかしオペレータ支援機能を導入するとナレッジの共有が容易に行えるようになるため、オペレーター全員が適切な回答を行うノウハウを身につけ、顧客対応の品質差を小さくすることができます。また、オペレータによる対応状況はリアルタイムで現場管理者がモニタリングできるため、必要に応じて管理者がアドバイスを加えることも可能となっており、新人オペレータの教育コスト削減も可能となっています。

(適用事例)東日本旅客鉄道
東日本旅客鉄道は2018年4月より、IBMのAI(人工知能)であるWatsonをコールセンターへ導入しています。
顧客からの問い合わせ音声を文字データに変換し、Watsonが解析のうえ回答候補文章をオペレータに提示します。1日あたり数千~数万件の問い合わせを処理しており、従来の同じ業務時間に扱える電話の対応件数が2割増えており、顧客サービスの向上につながっています

以上、AI(人工知能)による業務効率化例として、よくある質問(FAQ)への自動回答およびオペレータ支援機能について確認しました。

これらの事例はいずれも、AI(人工知能)がオペレータの作業代行あるいは作業支援することにより、慢性的な人手不足を解消しようというものですが、そもそも、この人手不足が生まれる原因であるオペレータの離職をAI(人工知能)により防止しよう、という新しい取り組みも行われています。次の項目で確認してみましょう。

離職の可能性のあるオペレータをAI(人工知能)で予測

オペレータと面談しているイメージ

コールセンターにおける離職率の高さの背景には、クレーム対応によるストレスの大きさがあります。顧客からのクレームには、商品・/サービス改善のためのヒントを含んでいる場合もあり、クレーム対応は極めて重要な業務ですが、オペレータにとって精神的にかなりの負担になるため離職につながってしまうケースも少なくありません

このような課題に対し、離職の可能性のあるオペレータを、なんとAI(人工知能)で予測する取り組みが行われているんです。

(適用事例)トランスコスモス
全国のコールセンター拠点から集めたAI(人工知能)学習用データ(オペレータの属性/勤怠/パフォーマンスなど)に基づき、AI(人工知能)が予測モデルを構築します。この予測モデルにより離職の可能性の高いオペレータと、その想定される離職理由をリストアップします。そして現場管理者は本リストを活用して毎月面談を実施し、離職理由につながる要因が発生していないかケアすることにより、半分近いオペレーターの離職を抑止することに成功しました。

最後に、顧客の音声から感情分析を行うことにより、顧客対応品質の改善に取り組む事例について確認してみましょう。

音声認識技術による感情分析と顧客対応品質の改善

顧客が電話に怒りをぶつけているイメージ

顧客の怒りが強い場合、あるいは初心者オペレータでは判断/対応が困難なクレーム対応などの場合には、最適なタイミングで責任者あるいはベテランオペレータへのエスカレーション(指示を仰ぐこと)が欠かせません。

しかしながら、初心者オペレータではそのようなタイミングに気づくのは難しく、また現場管理者がモニタリングできる範囲も限られています。

このような場合、AI(人工知能)による感情認識技術を活用することにより、顧客の怒りの度合いを感知することが可能となり、最適なタイミングでエスカレーションすることができます

(適用事例)エンパス社「スマートコールセンター・システム」
エンパス社は音声感情解析AI(人工知能)の開発/販売を行うベンチャーで、企業のコールセンター業務をAI(人工知能)で支援する「スマートコールセンター・システム」を開発しました。本システムでは、例えば顧客の「ありがとう」という電話の音声より、感謝の気持によるものなのか、あるいは「もう結構」という気持によるものなのかを判断することができます。具体的には顧客が喜んでいるのか、/不快に感じているかを数値化し判断することができます。本システムにより顧客の感情把握が可能となるため、現場管理者はオペレータの顧客対応の品質を正確に把握することができます。また、本システムをオペレータの音声解析に活用することにより、業務中の感情/ストレス把握が可能となるため、オペレータのケアに活かすこともできます。

 

コールセンターで使用する電話器のイメージ

以上、今回はコールセンターへのAI(人工知能)適用事例について考えてみました。

  • よくある質問(FAQ)への自動回答

オペレータの工数削減を実現すると共に、クレーム対応などの高度な業務にオペレータを集中させることができます。

  • オペレータ支援機能

顧客とオペレータとの会話内容を解析し適切な回答案を提示することにより、オペレータ間の顧客対応品質差を小さくすることができます。

  • 離職の可能性のあるオペレータを予測

離職の可能性のあるオペレータを事前に把握できるため、定期的なケアにより離職抑止を実現できます。

  • 音声認識技術による感情分析と顧客対応品質の改善

顧客の音声から顧客感情分析を行うことにより、オペレータの顧客対応品質を正確に把握することができます。

コールセンターのオペレータ業務は「AI(人工知能)に奪われる仕事」の上位にランキングされているイメージがありますが、少なくとも現時点ではコールセンター業務の全てをAI(人工知能)で代替するのは非現実的です。特に顧客の気持に沿った対応が欠かせないクレーム対応はデータベース化された情報だけでなく、心情的な要素を含めた対応が必要なため、人間であるオペレータにしかできない業務です。

今回の事例でも確認できたように、コールセンターにおいてAI(人工知能)はオペレータが働きやすいよう、オペレータを献身的に支えてくれる黒子のような存在なのでしょう。

今後、コールセンターには顧客の生の声を収集できるという顧客ビッグデータ生成の役割が期待されています。

顧客とオペレータとの会話の中には、製品への要望など極めて貴重な情報が多く含まれています。オペレータによる顧客の声の収集スキルに、AI(人工知能)の音声認識機能や感情分析機能などのテクノロジーが加わることにより、顧客ニーズの収集源としてコールセンターの重要性は今後益々高まっていきそうです。

 

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