最近ではいろんな商品やサービス、その宣伝や広告を見かけるようになりましたよね。そんな商品の情報を発信するときに必要となるのが、マーケティングです。
このマーケティングには様々なデータを必要とします。私が担当しているWebマーケティングでも、この記事が読まれた率、読まれた後に次に別の記事をクリックされているかどうか、記事がどれくらいの時間読まれているのか・・・など日々いろんなデータを分析しています。でも、このデータが毎回多くて、分析が地味に大変なんです。
データが多いと、特に考えるだけでも頭が回らなくなりそう。汗
そんなマーケティングにおいて、最近では「データドリブンマーケティング」が誕生しました。データドリブンマーケティングは今までよりもはるかに多いデータを分析するので、より細かいマーケティングができ、本当に私たちが欲しかった商品が手元に届くようになるということにもつながるでしょう。しかも今まで自分の頭で考えていたものが、ツールなどを使ってより効率的になるのだとか。
でもそんなデータドリブンマーケティングって自分には到底無理そう・・・と考える方も多いかもしれません。この記事ではなるべく身近な例を出しつつ、マーケティングの考えに触れながら解説するので、一歩一歩できるようになるはず。
そんなわけで今回は、データドリブンマーケティングについて一から実際にやってみるまで解説しましょう。
データドリブンマーケティングとは
まずはそもそも「データドリブンマーケティング」とはなんぞや、からお伝えします。データドリブンマーケティングを一言でまとめると、売り上げデータやWeb解析データ、お客さんの行動履歴など多種多様なデータを活用するマーケティングのことをさします。
マーケティングをざっくりいうと、「売り方を考える」こと。わかりやすくイメージするために、私たちが手作りの熊のぬいぐるみを作ったと仮定しましょう。
- 誰を対象にするのか:男性、女性、年代
- どうやって売るのか:メルカリなどのサイトに出すのか、フリーマーケットに出品するのか
- 宣伝方法はどうするのか:Web、チラシ、DMなど
を考えて戦略を立てるのが、マーケティングです。
このマーケティングを考える上で必要になってくるのが、「アンケート」や「行動履歴」などのデータ。というのは、データによる根拠があれば、マーケティングの効果がグッと高まるためです。
これがどういうことか、例をあげて説明しましょう。仮に私たちが熊のぬいぐるみの前にも同じようなデザインの熊のキーホルダーを作って売ったことがあるとします。熊のキーホルダーがどうやって買われたのかを分析すると、
- 熊のぬいぐるみを買った人:女性・30代が多い
- 買った方法:Webサイトが多かった
などがありました。そうすると、「女性」「30代」「インターネットで物を買うのが好き」な人に売ると効果的かもしれない、と考えられるでしょう。
すると「この熊のデザインが女性に気に入られた」「Webサイトだとハードルが低くて買いやすい」などの仮説が考えられます。そこで、熊のぬいぐるみを売る時もWebでの販売方法やデザインなどの戦略を立てます。
このようにマーケティングは売り上げのデータやアンケート、Webの解析データなど様々なデータを分析して、戦略を立てます。マーケティングはデータを集めることが必須ですが、データドリブンマーケティングとはそのデータの種類が多くなったマーケティング、というイメージです。
なぜ、データドリブンマーケティングを行うのか?その意味とは
ではなぜデータドリブンマーケティングができるようになったのでしょうか。その鍵はビッグデータの存在です。今までは私たち人間がデータを実際に見て判断したり、分析ツールを使って分析していたけれども、やはり限界がありました。
例えば私たちが何気なくWebサイトを見ている時、「サイトを閉じる」「次の記事をみる」「買い物カゴに入れたけど、戻す」「入力フォームを途中まで入力するけどやめる」などの行動をとったことがありますよね。でもこの行動を一つ一つ単体で見るよりも、データを組み合わせると「このユーザーはサイトから入ったけど、めんどくさくなって離脱した」などの行動するストーリーが見えてきます。するとこの「めんどくさくなった」には、何が原因があるのかを考えましょう。Webサイトの場合だと、
- サイトの構造が複雑すぎて迷子になった
- 購入するときの入力フォームが入れづらい
などで、対策が見えてきます。しかしこれはデジタルだけの世界なので、実際にこれが原因だ、という明確な理由は見えてきません。もしかしたら実際にWebサイトで商品を見たときに、「思っていたのと違うな」と感じている可能性もあります。それにこのストーリーを見出すのは、ツールを使っても結構大変。
この辺りはなんというか、マーケターとしての勘が問われます。私もまだまだ初心者なので、その辺りの勘があまりないのが難しいところ・・・(悩)
かつデータドリブンマーケティングはデジタルだけでなく、今までの商品をかってくれたお客さんのデータなどもを掛け合わせることができます。これらもデータとして、マーケティングに使えるでしょう。
さらに精度が上がったマーケティングは、会社の経営にも役立てることができます。会社でどんな商品を売っていくか、どんな業界に営業をかけていくかなどには、確実に進めたいですよね。データドリブンマーケティングなら、多方面からのデータを分析できるので、マーケティングの無駄をなくせるに違いありません。
こうしてデータドリブンによってマーケティングの精度をあげつつ、より多方面からマーケティングができるようになりました。
実際にデータドリブンマーケティングをやってみるステップ
マーケティングを考える上で、「何から手をつければ良いのかわからない」「このデータとこのデータはどんな因果関係があるのかわからない」「データが足りない」「どんなツールを使えば良いのかわからない、しかも費用がかさみすぎる」・・・など、かなりの課題がたくさんありますよね。
では、実際にデータドリブンマーケティングをやる上での手順をマーク・ジェフリー著作の「データ・ドリブン・マーケティングーーー最低限知っておくべき15の知識」にそって解説します。
まずはデータを集める
何はともあれ、まずはデータを集めましょう。ただし闇雲にデータを集める必要はなく、あるポイントがあるとのこと。
マーク・ジェフリーは本の中で、マーケティングを始めるにあたって、データを100%揃える必要はないとしています。それよりもまずやるべきことは「重要性の高いデータを集める」だとか。
なるほど、先ほどの熊のぬいぐるみの例でもそうでしたが、まずは「自分の商品を気に入ってくれた人」はどんな人か、を分析するってことなんだ!
こうしてデータを集めることで、問い合わせする人がどんな人なのかを分析でき、ターゲットの選定につながるでしょう。そしてそのデータを使って営業をかけられれば、早い段階で結果をあげることができるに違いありません。
データの関連性を見えるようにする
データドリブンマーケティングの難しい点の一つに、「データの結果の原因が多くて因果関係を特定しにくい」ことがあります。
例えば「扇子の売り上げが上がった」に関して、起きた分析した時に「天気が晴れだった」「気温が上がった」の2つの現象が起きたとします。この結果だけなら「天気が晴れだった」「気温が上がった」のどちらも原因として考えられますが、データドリブンマーケティングは扱うデータが多いので、これらのデータの関係性が見えなくなりがちです。
こういう時に仮説が必要になるけど、データが多いと頭が混乱しそう・・・汗
かつ、マーケティングの施策(キャンペーンなど)が行われていると、どれがどのように効果を発揮しているのか判断しにくくなることも。これでは、どんな施策なら効果があるのかわからなくなってしまいますよね。
そこでマーケティングはまず、データを分析してから小さい規模からの施策を行いましょう。それによって効果が上がった・下がった原因を特定しやすくなります。
データ集めや施策での戦略を立てる
データ集めと関連性が見えつつも、なんとなくでデータが集まりらない・・・というときはデータ集めの戦略を立てる必要があります。特にBtoBの企業は代理店を通して商品・サービスを販売しているため、データそのものが少ないことが課題になりやすいです。そんな企業に向けては、次のような点を心がけましょう。
販売代理店や連携店舗とデータを共有する
まずBtoBの企業が一番先に連携がとりやすいのは、「実際に販売しているお店」です。実際に販売したお客さんのについての情報を集めましょう。ただし、販売代理店側が「今個人情報とかうるさいし・・・」などの理由でデータの提供を拒否する可能性もあります。
アンケート、グループインタビュー、またはプロの調査会社に依頼する
自社のマーケティング部門でデータを集めているけれども、なかなかアンケートの作成などに時間が避けないこともありますよね。またデータを集めるのに苦労する場合は、思い切ってグループインタビューやアンケートを代行してくれるプロの調査会社に依頼するのも一つの手です。
少し費用はかかりますが、実際に商品を使っている人のデータを集めるのはやはり重要です。
自分の商品を買ってくれている人を大切にするキャンペーンを開催する
実際に自社の商品を買ってくれる人は、とても貴重な存在ですよね。そんな人たちをただ買わせるだけでなく、さらに次の商品を買わせるキャンペーンを開催すると、リピートする確率も高まるでしょう。
例えば、サントリーでは卸売業者・バー・飲食店・スーパー・自動販売機などからデータを通じて集めています。そのキャンペーンの一つとして、現在では代表商品である「ザ・プレミアムモルツ」の缶ビールの商品にシールを貼っています。そのシールには缶の容量ごとに点数が振られていて、レギュラー缶(350ml)なら1点、ミニ缶なら0.5点、ロング缶なら1.5点と点数がついています。これを24点貯めて応募すると、なんとビールサーバーかオリジナルのおつまみをプレゼントするとのこと。(2020年4月現在)
このようにキャンペーンに応募することで、どんな年代の人がリピートしてビールを消費しているのかのデータを集めることができます。さらに企業としてもこのようなプレゼント企画を行うことで、結果的に商品や企業のファンを増やすことができるに違いありません。
へー!これはそういう目的でやっていたんだ!
データ集め・分析のインフラを立てる
マーケティングの範囲は経営の方向性まで扱うレベルに広いので、効率的に作業を行う必要がありますよね。もちろん事前にこのデータ集め・データ分析をやっていてわかることもありますが、一連の流れをしっかりできるようにするためにも事前に上記のプロセスを確立させましょう。
詳しくはExcelや関連ツールを使って実際に分析をやる方法は以下の本がおすすめです。なお、この本は「統計」の知識にも触れていて初心者にはもしかしたら難しいと感じるかもしれません。しかし実践レベルまで扱っていますので、データ分析を効率化したい方にはこの本を使って試しましょう。
もちろん、最初少しだけ読んで判断したい・・・という方もいますよね。そんな方は以下のnoteに第1章を無料公開しているので、こちらも目を通しましょう。
このほかにもデータドリブンマーケティングで集めたデータ・施策の報告書の作成にビジネスインテリジェンスを使用したり、実際に施策を行う営業部門・管理部門などの連携をどのように行うか、などのインフラをしっかり立てることも重要です。
マーケティングに企業を巻き込む
こうしてデータドリブンマーケティングが成果を出しつつ、仕組みを整えることができたらデータドリブンマーケティングを企業文化として根づかせます。つまりマーケティング部門だけでなくインフラを作るIT部門の方や会社経営幹部を巻き込むことによって、できる幅がどんどん広がるでしょう。
このようなマーケティングの考え方を浸透させることで、ゆくゆくは企業全体の売り上げアップにもつながるに違いありません。
データドリブンマーケティングをやる時の注意点
さて、そんな中でデータドリブンマーケティングをやる上での失敗しがちなことや注意すべきことについてお伝えしましょう。
データを作る・とるのに精一杯になりすぎない
「実際にデータドリブンマーケティングをやってみる方法」の「まずはデータを集める」でも少し取り上げたように、データドリブンマーケティングで必要なデータには優先順位があります。しかし、たとえ「データが全然そろっていない・・・」となっても大丈夫。まずは集めたデータからマーケティングの施策を立てましょう。
顧客データを集めるのに精一杯で時間がかかってしまった、となるとせっかくのお客さんをつかむチャンスを逃してしまいます。そのため、データが少なくても少しずつマーケティングの施策を回すことが大切です。
しっかりPDCAを回せる体制を作る
マーケティングで特に大切なのが、「PDCA」を回すことです。
このため、まずはマーケティング計画や設計はしっかり行いましょう。将来企業はどんな方向へ進んでいきたいのか、どんな商品を売りたいのか、などの計画を出すことが大切です。
また意外と重要なのがマーケティングのチャンスを逃さないこと。そのため、やるべきことや施策を決めたら最もやりやすい施策を行って、成功事例を作ります。そうすると企業内でもマーケティングにおける信頼度が高まるでしょう。
そしてそのプロセスを毎週、毎月の短期的な振り返りだけでなく3ヶ月ごと、1年ごとなどでしっかり振り返りましょう。この時の現状評価では、目標に対してどんな課題があって、どんな改善できるチャンスがあるのか、この施策を行うことでどんなリスクや見返りがあるのか、費用はどれくらいなのか・・・など様々な視点から評価します。
そして改善策を立てて、実行します。この体制がスムーズになるように、企業側でも仕組みを作るようにするのがポイント。
ある程度財務・統計の知識があった方が、データの分析はやりやすい
マーケティングとなると、マーケティング用語だけでなく財務・統計の知識を持つ必要があります。実際にマーク・ジェフリーの「データ・ドリブン・マーケティング」での調査では、64%の企業がマーケティングにおけるデータ分析するスキルを持った社員が足りていない、と回答しています。実際にデータ分析を行うには、統計の知識も必要になります。
さらに55%の企業では、マーケティングにおいてROI(投資収益率:かけた費用でどれだけの利益が発生したか)やNPV(正味現在価値:将来受け取れる価値が、今受け取れるならどれくらいの価値を持っているか)などの財務的な知識が不足している、と答えました。マーケティングも予算が限られているので、やはり費用対効果をしっかり見極める必要がありますよね。
確かに、Webマーケティングから販売促進などを行うときは、費用対効果とかも考える必要があるよなぁ・・・。耳が痛い・・・。
このため、データドリブンマーケティングを行うときはデータ分析や統計・財務的な指標についての知識も身に付けましょう。
今後、マーケティングの未来はどうなるのか
データドリブンマーケティングができるようになったことで、私たち消費者にとってより良い商品・サービスが提供されるかもしれません。
例えば旅行会社のJTBでは社内でデータドリブンを行う組織を作り、データの統合や分析を行うようになりました。このチームでは「データベース」「データの分析」「施策の設計と実行」の3つのチームに分けて、設計・運用を行っています。このときデータも数量的な物だけでなく、SNSでの内容などの質的な分析も行いました。
また同時に、マーケティング分析ツールやAI(人工知能)を導入する企業が増えるかもしれません。膨大なデータを分析するとなると、やはり人だけでは限界があります。このためツールやAI(人工知能)を活用すると、今までとはまた違ったマーケティングの視点が生まれます。
データドリブンマーケティングを使って、今までになかったけどこれ欲しかったんだよね!という商品がうまれてくれるとありがたいな!そんなマーケティングができるように、腕を磨かねば。
ということで、「データドリブンマーケティング」について解説しました。それでは、今回の内容についてざっと振り返りましょう。
- データドリブンマーケティングとは「データの活用をメインにしたマーケティング」のこと
- 今、Webや実際の行動などデータの種類が多いので、データドリブンマーケティングの需要が高まっている
- 実際にデータドリブンマーケティングをやってみる方法としては「データを集める」「データの関連性を見出す」「データ集め・施策の戦略を立てる」「データ分析のインフラを立てる」「企業全体でマーケティングを巻き込む」がある
- データドリブンマーケティングの注意点としては、「不完全なデータでも良いので、まずはやってみる」「しっかりPDCAを回す」「マーケティングだけでなく財務・統計の知識も身につける」がある
- 今後データドリブンマーケティングによって、もしかしたら私たち消費者に寄り添った商品・サービスが生まれるかもしれない
もちろん「マーケティングってなんだか難しそう・・・」と感じる方も多いかもしれませんが、私たちが商品・サービスをスムーズに使ったりすることも、商品・サービスの存在を知ることができるのも、全てマーケティングの力です。データドリブンマーケティングがもしいろんな企業で使えるようになったら、もっと便利な商品・サービスが登場して私たちの生活に変化があるに違いありません。