DX(デジタルトランスフォーメーション)

DXを企業で成功させるなら、知っておくべき3つのポイント

DXを企業で成功させるなら、知っておくべき3つのポイント

AI(人工知能)社会や消費者行動の変化にともない、最近ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組む企業が増えていますよね。DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタルを導入して企業のビジネスモデルに変革を与えることです。

でも「DXをどのように進めたらいいかわからない」と悩んでいる企業も多いのが現状。そんな時に参考にしたいのは、DXを成功させた他社の事例です。最近は、メディアでもDXの成功事例が数多く紹介されていますが、実際のところ、業界や事業規模が異なると、どの部分が自社に活用できるのか見極めるのは困難でしょう。

しかも、「日本企業のDX取り組み実態調査」(アビームコンサルティング 2020.12.14)によると、DXに「成功した」と認識している日本企業はわずか「6.6%」。この調査から、DXに取り組む企業の多くが苦戦していることがわかりますよね。この記事で、他社の事例を知れば、自社のDX化に役立つに違いありません。

そこで、今回はDXを成功させている企業の事例を紹介し、DX実現へのポイントや注意点をお伝えします。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは

デジタルのイメージ

まず、DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは何かを説明しましょう。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、スウェーデンのウメオ大学教授エリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した、「デジタル技術が全ての人々の生活を、あらゆる面でより良い方向に変化させる」というコンセプトが起源とされています。

また、日本では経済産業省がDXを以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。
引用:DX推進ガイドライン

つまり、DXとは「AI(人工知能)やIoTなどのデジタル技術を使って、新たな価値を生み出せるよう従来のビジネスや組織を変革すること」と言えます。それに、ビジネスとは企業や消費者に向けて行うものなので、企業のDXを進めれば社会全体に変革を起こすこともできます。

このように、私たちの生活も大きく変えるDXは、企業の競争力を高めるためにますます注目されています。

※詳しくはこちらをご覧ください

今注目されている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは?わかりやすく解説 | お多福ラボ
近年では、あらゆる業種でDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが始まっています。実際に、経済産業省が2018年12月にまとめた「DX推進ガイドライン」を発表しており、今後ますます注目されていくでしょう。そこで今回はそんなDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か?についてお伝えします。

では、DXを推進することでどんなメリットがあるのか、次に解説しましょう。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)を行うことのメリット

コストのイメージ

企業がDXに取り組むと、以下のようなメリットがあります。

業務の生産性が向上し、コストも削減できる

DXを導入すれば、これまでアナログで行っていた作業が自動化され、業務の効率化が進みます。さらに、従来の業務体系を見直し最適化すれば、優先度の高い業務に集中でき企業の生産性を上げることもできます。また、作業をデジタル化すれば、24時間365日の稼働が実現し、人的ミスも抑えられコストに削減につながるでしょう。

消費者ニーズに対応した新しいビジネスにつながる

DXは、単にデジタル化を進めるだけではありません。DXに取り組めば、AI(人工知能)や5Gなどの技術で、日々変化する消費者ニーズに合わせた新しい商品やサービス、ビジネスモデルを展開することができます。さらに、他業種と連携することで、一気に大きなビジネスにつながるかもしれません。

レガシーシステム(旧型システム)からの脱却でリスクを回避できる

日本では、今でもレガシーシステムを抱えている企業が多く、このまま使い続けると爆発的に増えるデータを活用しきれず、システムの維持・運用にも多くのコストがかかります。さらに、サイバーセキュリティの脅威が増し、システムトラブルなどのリスクも避けられません。

※レガシーシステムによる弊害については以下の記事をご覧ください

しかし、DXに取り組めば既存の古いシステムから脱却して、時代に即した新しいシステム環境を整えることができます。そして、システムの最適化によりコストも抑えられ、ビジネスの変化に合わせたスピーディーな対応が可能になります。

では、ここからはDXで大きな変革を起こした実際の企業事例を見ていきましょう。

代表的なDX(デジタル・トランスフォーメーション)で成功した企業

企業のイメージ

DXに取り組む企業は増えていますが、特に参考になる3社の事例を紹介します。

社会全体の生活スタイルを変えたAmazon

世界的企業に成長したAmazonは、本のオンライン販売からスタートして、今やインターネット通販サイトの領域を超えた新しいビジネスを展開しています。

こんなAmazonの企業理念は「顧客第一主義」。地球上で最もお客様を大切にする企業であることを目指しています。そこで、「Web上の本屋」であるAmazonは、「どうすれば顧客が自分に合う本を見つけやすくなるのか」を考え、独自のシステムを導入。そして、「あなたにおすすめの本」や「これを購入した人はこんなものを合わせて購入しています」などのおすすめ機能を付けました。これで顧客は、実店舗に行くよりも自分が欲しい本を買い求めやすくなりました。

さらに注目したいのは、「本や日常品を注文後、早ければ当日に届ける」という驚くような納品スピードです。これは、顧客の注文履歴をAI(人工知能)に学習・分析させ次に何を買うかを予測し、顧客の近くの倉庫に商品を移動させて、スムーズに配達できる仕組みを取り入れることで実現しました。

実は、既存の大手書店もAmazonと同じようなECに参入しましたが、「既存書店の延長」のような考えで、在庫・発注・物流などの見直しを図らなかったため失敗しました。一方、Amazonは「店舗を持たずにインターネット経由で本を販売する」という新しい発想のもと、デジタル前提に業務プロセスをゼロから組み立てたことが成功につながりました。こうして、リアル店舗の本屋よりも優れたネット販売ビジネスを作り上げたのです。

さらにAmazonは、スマートスピーカーの「Amazon Echo」を開発。話しかけるだけでAmazon商品の買い物や、家電操作もできる夢のような便利な生活を実現させました。他にも、レジに人がいない無人コンビニ「Amazon go」や、ドローンの宅配サービス「Amazon Prime Air」(計画中)など、Amazonは新しいビジネスを次々と展開しています。

このようにAmazonは、書籍だけでなくあらゆるものがネットで素早く買える仕組みをつくり、さらに現在進行形でビジネスを拡大し続ける、DXの代表的な成功例と言えます。

人を動かさない発想で物流革命を起こしたSGホールディングス(佐川急便)

次にご紹介するのは、佐川急便を傘下に持つSGホールディングス。近年、佐川急便などの物流業界では、ネット通販の普及で宅配荷物が増大しています。それにともない、配送ドライバーや荷物の積み下ろしを行う物流施設での深刻な人手不足が経営課題になりました。

そこで、SGホールディングスは次世代型物流施設「Xフロンティア」を稼働。ここでは、今まで手作業で行っていた商品の取り出しや仕分け、梱包、発送までの作業の一部をロボットが代替しています。それにより、半分の人手で効率は5倍になったとのこと。また、作業員は端末に必要なデータを入力するだけなので、アルバイト初日の人でも、ベテラン作業員と同じ生産性を出せます。

この「Xフロンティア」でのDX化が成功したカギは、「人を動かさずに、荷物を自動で動かす」という新しい発想です。つまり、人力に頼るという従来の発想を打ち破ることで、自動化と省人化が実現しました。

また、佐川急便の配送現場でもDXは進められています。たとえば、従来は人が行っていた1日約100万件もの手書き配送伝票の入力作業を、手書き文字を読み取るAI(人工知能)に代替させることで、月間約8400時間も作業時間を短縮しました。さらに、電力の仕様状況から在宅の配送先をAI(人工知能)が割り出し、再配達を減らす実験も行われています。

こうしたスムーズなDX化の要因は、佐川急便東京本社営業部の席の隣に10名程度のエンジニアデスクを設けたこと。これにより、エンジニアが配送ドライバーなどの「現場部門の要望」を直接聞けるようになり、現場業務の素早い改善につながっています。

データの一元管理で経営の見える化を目指す安川電機

最後にご紹介する安川電機は産業用ロボットで有名ですが、AI(人工知能)を使って新規事業を創出するなどの大きなDX化ではなく、「経営を見える化」して足元をきちんと固めるというシンプルなDX化の事例です。

まず、安川電機の経営課題は「部門によってデータの管理方法が異なっていて、データのやり取りに手間がかかる。さらに、社内に埋もれるデータが多く適切な経営判断が下せない」ということでした。

そこで、安川電機は「データを世界の共通言語に」をスローガンとし「YDX(YASKAWA digital transformation)」と銘打って独自のデジタル変革を進めました。まず、拠点や部門によってバラつきのある社内用語を統一し、部門によって異なっていたデータの管理方法も一元化。それにより仕事が進めやすくなり、各部門の売上高や利益、経費などの経営状況も一元的にリアルタイムで把握できるようになりました。こうして「社内の利益の見える化」が実現しました。

このように、企業全体の「本当の利益」が見えるようになると、トップは正しい経営判断ができ、現場でも職務や成果が明確になって働き方への意識改革につながっています。
しかし、最初は「なぜ、従来のような部門ごとの管理ではいけないのか」と、慣れ親しんだやり方を変えることに現場から多くの反発がありました。そこで社長は、社員の不満を取り除くために、生産、販売、技術開発の組織再編を先に進めて、データ一元化のメリットを全社員で共有しました。また、社長自らが各事業部に出向き、DXの必要性を説いて回ることで、今では「YDX」によるデジタル変革が社内に定着しつつあります。

ここまで、DXで成功した企業事例をご紹介しましたが、次にDXを成功させている企業の特徴をまとめました。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)で成功した企業の特徴

リーダーのイメージ

DXをスムーズに進める企業には以下のような3つの共通点があります。これら3つのポイントを踏まえて、自社のDX化に取り組めば成功に近づくに違いありません。

リーダーがDX化への明確なビジョンを持っている

DXを進めるには、リーダーが「DX化によりどのような企業を目指すのか」「どんな価値を提供するのか」など、将来のあるべき企業像を明確にする必要があります。そうすれば、目標を達成するための経営戦略が自ずと見えてきて、それに応じたシステム改革もスムーズに進みます。

たとえば、Amazonは「顧客第一主義」という企業理念から、「お客様を大切にする企業」だとわかりますが、「どうすればもっと顧客に喜ばれるか」という視点からDX化が進められていますよね。

このように、リーダーに明確なビジョンがあれが、「DXを行う理由」や「DX化のメリット」が全社員に周知され、DXへの理解が得やすくなります。

新しい発想で自社ならではの変革につなげている

DXを成功させるには、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネスモデルを展開することが大切です。

今回ご紹介したSGホールディングスは、「人ではなく物を動かす」という新しい発想で人手不足を解消しています。また、Amazonは「店舗を持たない本屋」という新しいシステムを作り上げていますよね。さらに、安川電機も「社内のデータ一元管理」を成功させるために、先に組織を再編成するというユニークな取り組みをしました。

とはいえ、新しい発想なら何でも良いというわけではありません。企業の強みや特徴を生かしつつ、時代の変化に合った変革が求められます。そのためにも、既存の部門や業種の垣根をなくし、異業種、スタートアップ、政府・自治体などと連携して、新しい発想でDX化を進めるのも一つの方法です。

自ら変革するという意識が社内に根付いている

DXは企業にシステムを導入して終わりではなく、刻一刻と変化する環境に合わせて新しい価値を生み出し続けることも大切です。つまり、顧客ニーズに合わせたビジネス変革が継続的に必要になります。

そのためには、まず社員一人ひとりが「従来のやり方」を変えなくてはなりません。とはいえ、今までの慣習を打ち破ることは社員の不安や不満につながることも。そのような時は、安川電機の事例のようにリーダー自らがDXの必要性を説いて回れば、社員の心理的抵抗感は少なくなり、社内改革を推進する体制もでき上がるでしょう。そして、従業員自らが変革していくという意識が強まれば、全社的なDX化につながるに違いありません。

では最後に、DXを実現するために気を付けるべきことをお伝えします。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)を進める上での注意点

時間のイメージ

上記のようなポイントを押さえていても、DX化に失敗する企業は少なくありません。なので、DX推進における注意点も知っておきましょう。

DXを進めるには、既存システムの見直しや、企業の経営戦略に適した新しいシステムを導入する必要があります。しかし、今の日本企業では、導入したシステムやツールを使いこなせる人材が慢性的に不足しています。さらに、システム運用中にトラブルが発生するケースもあり、長期的にトラブルシューティングできる人材も必要です。ですから、システムを使いこなせる人材を、日頃から社内で育成しておくことも大切です。

また、DXを始めても結果が出るまで時間がかかります。一般的に目に見える効果が現れるまでに、平均で3年~5年程度かかるとのこと。今回お伝えした安川電機のデジタル変革も、2017年から取り組み始め定着には2.3年かかっています。

そのため結果が出ないからとすぐにやめてしまうのではなく、長期的な視野を持ちましょう。さらに、DX実現には長期的にプロジェクトを実行できる予算の確保も不可欠になります。ましてや、資金力がない企業でDXを進めるには、コスト抑制など様々な工夫も必要です。当メディア(AIZINE)の運営会社お多福ラボも、御社がDXを進めるサポートをします。DXを企業で導入したい場合は、まずご相談ください。

AI(人工知能)/DX(デジタルトランスフォーメーション)開発のお多福ラボ

さて今回は、DXを成功させている企業事例をご紹介し、それを参考にしてDXを実現させる3つのポイントをお伝えしました。

まず、DXとは「AI(人工知能)やIoTなどのデジタル技術を使って、新たな価値を生み出せるよう従来のビジネスや組織を変革すること」ですが、今やビジネスが生き残るためにはDXへの取り組みは避けられません。しかし、DXの進め方がわからず、既存業務の効率化に終わっている企業も少なくありません。

そこで、DX化へのお手本になるAmazon、SGホールディングス(佐川急便)、安川電機の事例をご紹介し、その特徴を分析して成功への3つのポイントを解説しました。

それでは、3つのポイントを振り返ってみましょう。

  1. リーダーがDX化への明確なビジョンを持っている
  2. 新しい発想で自社ならではの変革につなげている
  3. 自ら変革するという意識が社内に根付いている

こうしてみると、DXを企業で成功させるには、システム導入だけでなく、全社員を巻き込みながら、「DXでビジネス変革を起こす」という社内全体の意識改革も大切です。とはいえ、DXを進めても効果が出るまでに時間がかかったり、予想外の結果が出て試行錯誤することもあるでしょう。

そうした時こそ、DXを成功させる3つのポイントをヒントにすれば、自社独自のDXもスムーズに進むに違いありません。

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