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DX 時代に知っておきたい!オープンイノベーションの成功事例6選

DX 時代に知っておきたい!オープンイノベーションの成功事例6選

産学連携や異業種交流という言葉は昔から使われていますよね。実はこのような動きを、最近では「オープンイノベーション」という言葉で呼んでいます。その目的は、外部で生まれた技術やアイデアを自社のものと融合して新しい製品やサービスを生み出すこと。

デジタル化の急速な進行で、新しい製品やサービスが次々に開発される時代には、自社の技術やノウハウだけでは、こうした変化に対応して行くのが難しくなり、改めてオープンイノベーションの重要性が認識されています。今後もオープンイノベーションの流れは進み、今までの常識を覆すようなアイデアが生まれてくるかもしれません。この記事ではそんなオープンイノベーションの事例を取り上げるので、あなたのビジネスに新しいヒントを与えるでしょう。

そこで今回はオープンイノベーションとはどんなものか、事例を交えてお伝えします。

オープンイノベーションとは

相互交換のイメージ

オープンイノベーションとは、企業が垣根を越えて連携することによって、単体では作り出せない新しい商品やサービスを生み出そうとする動きのこと。例えば企業が中心になって様々な機関が技術を持ち寄り、斬新なアイデアを製品化する動きが、オープンイノベーションです。

こうした動きは最近始まったものではなく、異業種の企業同士が交流して互いのアイデアや技術を取り入れたり、企業と大学の協働による産学連携、そこに自治体や政府機関を交えた産官学連携もオープンイノベーションであり、そこから生まれた製品やサービスは少なくありません。

つまりオープンイノベーションには、単なる技術の交換や共同研究・共同開発による製品開発という結果だけではなく、異文化の導入で社内に化学反応を起こして、革新を促す狙いもあります。

※ オープンイノベーションについて詳しくはこちらをご覧ください。

オープンイノベーションって何?定義や特徴などをわかりやすく解説 | お多福ラボ
オープンイノベーションは「内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、イノベーションを創出する」という意味ですが、近年ではオープンイノベーションという手法は多くの企業で採用され成果を出しています。そこで今回はオープンイノベーションの定義や特徴などについてお伝えします。

オープンイノベーションの重要性

市場のイメージ

なぜオープンイノベーションが必要なのかというと、企業が競争に勝ち残るためです。

日本の企業は、長い間自社の中だけで製品やサービスを開発し製造から販売まで一貫して行う、自前主義を用いてきました。なぜこの方法を使っていたのかというと、自社が開発して生まれた技術や製品は市場で独占することが可能であり、成功すれば大きな利益を得ることができたからです。

ところがITやデジタル技術の進歩により、新製品やサービスが次々に生まれ、グローバルな市場競争が激しくなりました。それにより、既存の技術や製品が陳腐化して、大企業や老舗企業でも、将来を見通すことが難くなってきました。

例えば写真はデジタルコードで保存するようなったため、アナログフィルムは事実上絶滅してしまい、既存のフィルムメーカーは業態の転換を迫られました。デジタル化への対応が遅れたコダックは倒産し、富士フィルムは医療機器や化粧品・医薬品メーカーに変貌しました。

このように、企業のビジネスモデルは急激に変化しつつあり、利益の独占を狙って自社開発や独自技術にこだわっていると、時代に取り残されてしまいます。そのため、これからは一企業や業種の枠を乗り越えて、オープンイノベーションを積極的に導入・活用して革新を起こし、自社の技術やサービス・製品の価値を高めることが、グローバルな競争に勝ち残るキーになるに違いありません。

オープンイノベーションの成功事例3選【国内編】

企業のイメージ

企業がオープンイノベーションを導入することによって、新しい市場の開拓やビジネスの展開に成功しました。そこで、オープンイノベーションで成功した事例を、いくつか紹介します。

富士ゼロックス

富士ゼロックスは中小・ベンチャー企業6社が参加するオープンイノベーションプロジェクトを立ち上げ、これらの企業が持つ技術を活用し、ドラえもんの「ひみつ道具」を作り出そうとしました。

そこから、ロボットが人間を相手にして将棋を指す「セルフ将棋」遠く離れた相手の耳元でささやくように声が届く「望遠メガフォン」など、複写機・レーザープリンタメーカーの富士ゼロックスのアイデアや技術だけでは実現できない製品が生まれました。

空想の産物であったドラえもんのひみつ道具を実際に作ったというのは、すごいですよね。実際に参加した企業は、将来性や技術力の高さについて大きな注目を集めることに成功しました。

花王

花王は洗剤メーカーですが、従来から自社ブランドを活かした新規事業の開拓に積極的で、さらに開発したものの活用できていない多数の休眠特許や技術を活用するため、これらを外部に提供して、オープンイノベーションを導入し、新製品や市場開拓に繋げようとしてきました。

花王には、もともと一つの経営テーマに対して部門の垣根を越えて対応するというマトリクス運営という社内文化が根付いており、それがオープンイノベーションのスムーズな導入に繋がりました。

さらにカネボウ化粧品を買収して、化粧品やコスメ事業に力を注ぎ、そこに花王本体やオープンイノベーションによって得た技術やノウハウを投入しました。そこから新しい化粧品やコスメが次々と誕生し、2019年にはファインファイバーという技術を応用したスキンケア商品を発売して注目されています。その結果として、花王の化粧品事業は、今では売上高の4割を超える基幹事業に成長しています。

コニカミノルタ

コニカミノルタは、デジタル化の進行によってカメラ事業から撤退し、複写機やプリンターに主力事業をシフトし、異業種からの人材を集めて新規事業と市場の開拓を行う組織を設けました。これは技術進歩による今後の市場環境の変化に備えて、それに対応していくためです。

その一環として大阪工業大学などとのオープンイノベーションにより、臭いを検出するニューラルネットワークに基づくプラットフォームを開発しました。大学以外にも臭気判定士や調香士、工業デザイナーとなどが参加す多数の専門家がこのプロジェクトに参加しています。

これによって体臭や口臭を検知し、数値化して表示するチェッカーを開発して製品化することに成功しました。この製品は歯科治療目的への応用も検討されているということですが、臭いを数値化して表せるというのは、すごい発想ですよね。

オープンイノベーションの成功事例3選【海外編】

アイディアのイメージ

オープンイノベーションで成功した例は、海外でもあります。では、オープンイノベーションの海外で成功した例について解説しましょう。

スターバックス

スターバックスは世界で展開するコーヒーチェーンですが、誰でも新メニューが考案できる「My Starbucks Idea」というWebサイトを設けていて、消費者を巻き込んだオープンイノベーションを実現しています。

このサイトはは世界中からアイデアを募集し、採用されたものはすべてサイト上で公開されます。その中にはドリンクやケーキだけでなく、グッズ、レジ、店内のインテリアなども含まれています。

これは、スターバックスが企業の規模が大きくなって組織が複雑になると、商品やサービス開発のスピードが遅くなることを危惧し、消費者から直結情報やアイデアを受け取るためのシステムを設けたのだとか。

また、シアトルの本社内にはイノベーション・ラボラトリーとして模擬店舗を設けて従業員を対象にして、新しい商品やサービスを実験的に展開しています。商品は有料で、従業員が実際に購入する価値があるかどうかをテストしています。

実際にクラウド・マキアートという、メレンゲのような食感のマキアートは、2018年にラボラトリーで考案され、好評だったことから、女優のアリアナ・グランデとのコラボ商品として翌年再発売されました。

サムスン

サムスンは韓国の半導体や携帯端末メーカーですが、早くからオープンイノベーションの導入・活用によって画期的な家電製品や精密機器を開発してきました。

これはサムスンが多角経営の展開を重視し、新規事業や市場の開拓史を促すための組織作りを行ってきたからです。サムスンには今でも多数の社内ベンチャーが生まれており、スピンアウトして新規企業として独立するケースもあるとのこと。

大手ソーダメーカーのSodaStreamと提携して製品化された、冷蔵庫内で炭酸水を製造して供給する機能を持った冷蔵庫も、サムスンのこうした革新性を重んじる土壌から生まれました。この冷蔵庫は、炭酸水が好まれるアメリカで高く評価されました。

LEGO

LEGOは1934年に設立されたプラスチックブロックの知育玩具メーカーですが、1990年代の終わり頃から事業の多角化を目指した新規事業への投資の失敗などで業績が悪化し始めました。

そこで選択したのは原点回帰、消費者ニーズを重視した製品企画でした。それをきっかけに、消費者からにアイデアを募るユーザーコミュニティを設立しました。

つまり、消費者を巻き込んだオープンイノベーションを開始したのです。その結果、子供のごっこ遊びを再現したフレンズなどのヒット商品が生まれ、さらにマインドストームという教育用の玩具教材が中国で大ヒットしました。

このような、消費者から一定以上の支持を得た商品の開発を進めるという手法を取り入れた結果、年間収益の6割をこれらの新商品が占めるようになり、復活を果たすことができました。

オープンイノベーションの成功の秘訣

活発な意見交換のイメージ

ここまでで、オープンイノベーションの事例について見てきました。そんなオープンイノベーションの成功の秘訣について、見てみましょう。

異文化受け入れの土壌を作る

オープンイノベーションを導入・活用する目的は、他の企業や外部の組織の技術や情報を導入するだけではありません。外部の文化に触れることによって自社の組織や文化にイノベーションをもたらすことも見込める可能性があります。

異なる文化をリスペクトして、それを咀嚼して取り入れることで自社内にイノベーションを起こし、新たなアイデアや発想の誕生が期待できるかもしれません。そのためには、異業種の人材の中途採用や人事交流を行ったり、専門分野が異なる人材を登用したりすることも考えられます。

実際に米国ではサイエンティストが金融業界に入り、金融工学を作り上げ、金融業界からIT企業に移った人材が新しい決済サービスのフィンテックを生み出した例があります。

そのため、オープンイノベーションを成功させるためには、企業が外部の文化を受け入れる土壌を作りましょう。

オープンにする技術や情報を明確化する

現在でも自社の大事な技術やノウハウを外部に流出させるのはリスクが高いのではないか、と不安になる方もいますよね。もちろん、企業の存立基盤になっている技術情報や他社が真似できないオリジナルの技術やノウハウをコアコンピスタンスと言い、これを外部に提供してはいけません。

コアコンピスタンスは企業の生命線であり、外部に流出した場合には、企業の存亡に関わるリスクがあります。そうなると市場での優位性が損なわれ、収益の低下や最悪市場からの撤退に繋がりかねません。

このため、オープンイノベーションで外部に提供する技術や情報と、そうではないものとの線引きを明確にしましょう。

目的の明確化し、優れた外部組織を呼ぶ

オープンイノベーションを成功させるためには、導入する目的を明確にして、ビジョンや戦略を立てる必要があります。

まずは企業が、将来的な成長戦略を立て、どういった市場を開拓し、そのためにどういった製品やサービスを、どのように開発・投入するかを決定します。

その上でどの分野をオープンイノベーションで革新・強化するのかをトップレベルで明確にする必要があります。また連携相手となる優れた外部機関や企業をリサーチし、連携について双方が合意形成できるかどうかがポイントになります。

メディア(AIZINE)を運営しているAI(人工知能)/DX(デジタルトランスフォーメーション)開発会社お多福ラボでも、そんなオープンイノベーションのサポートをしています。興味がある方は、ご相談ください。

AI(人工知能)/DX(デジタルトランスフォーメーション)開発のお多福ラボ

さて今回はオープンイノベーションの必要性・重要性と、その成功事例についてお伝えしてきました。ここで、今回の内容を振り返りましょう。

  1. オープンイノベーションとは、企業の連携で、単体では作り出せない新しい商品やサービスを生み出そうとする動きのこと
  2. 現代は技術革新によって新しい製品やサービスが次々に生まれた結果、自前の技術やノウハウだけでは対抗できなくなってきた。そこで、オープンイノベーションの必要性が認識されるようになった
  3. オープンイノベーションを成功させるためには、外部の技術と自社の技術を融合させて、新しい製品やサービスを生み出すことが必要
  4. オープンイノベーションで成功した企業に「富士ゼロックス」「花王」「コニカミノルタ」「スターバックス」「サムスン」「LEGO」がある
  5. オープンイノベーションに成功した企業に共通するのは、いずれも既成概念や固定観念に囚われず、外部の情報やアイデアを積極的に取り入れている点である

企業同士の業務提携や産学連携・異業種交流という形でのオープンイノベーションは以前から行われてきましたが、外部の技術や情報を吸収するという意識だけでは、成功に結びつきません。

異なる企業や組織同士が持つ技術や情報の融合によって、新しいものを生み出すのがオープンイノベーションの目的です。技術や情報・ノウハウのトレードオフではなく、融合によって互いにwin-winの関係が構築できるようにしましょう。

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