AI(人工知能)について調べたり見聞きしたりしていると、ピンとこなかったり、なかなか理解の難しい用語と出会う機会も多いはず。さまざまな用語のうち、技術的特異点(シンギュラリティ)もよくわからない用語のひとつですよね。技術的特異点(シンギュラリティ)はAI(人工知能)のことを知る上で大事な用語であり、ぜひとも押さえておきたいところ。
そんな技術的特異点(シンギュラリティ)ですが、何なのかわからない、難しそうな言葉で取っつきにくい、と感じる人も多いでしょう。とはいえ、技術的特異点(シンギュラリティ)はAI(人工知能)を理解するうえで避けては通れません。実はシンギュラリティとは、もしかしたら私たちの未来に関わることなので、この記事を読んで学ぶと役立つに違いありません。
そこで今回は、技術的特異点やシンギュラリティをめぐる話題について解説します。まずは、技術的特異点(シンギュラリティ)についての解説しましょう。
技術的特異点(シンギュラリティ)とは?
AI(人工知能)分野における技術的特異点、すなわちシンギュラリティとは英語ではTechnological Singularityと呼ばれています。技術的特異点(シンギュラリティ)とは、AI(人工知能)が人間の知性を超え、また自分自身の知性を超えるようなAI(人工知能)を生み出すようになる時点を指します。語弊を恐れず別の表現をすると、人間よりも賢くなったAI(人工知能)が、人間の手を介さずに新たに自分よりも賢いAI(人工知能)を生み出して進化していく、といえるでしょう。
しかし将来、汎用的な能力を持った強いAI(人工知能)が登場し、弱いAI(人工知能)のように人間に使われる立場から脱却したAI(人工知能)が登場すると考えられ、その後強いAI(人工知能)が人間を超えて技術的特異点(シンギュラリティ)を迎える、と考えられています。
そんな技術的特異点(シンギュラリティ)を迎えると、文明進歩の主役はAI(人工知能)に取って代わられる可能性があるとか。人間と変わりない、あるいは人間を超えたAI(人工知能)は自己増殖と進化により、どんどん増え、どんどん高度な知性を付けるでしょう。そうなると技術的特異点(シンギュラリティ)後の未来は、楽観的に考えればより便利な社会が待っている、悲観的に考えれば歴史の主役が人間からAI(人工知能)にとって代わられる、と予想されています。
ここまで技術的特異点(シンギュラリティ)の意味について説明しました。続いて、誰が技術的特異点(シンギュラリティ)を世に知らしめたのかお伝えします。
そもそも誰が技術的特異点(シンギュラリティ)を世に知らしめたのか?
最初に技術的特異点(シンギュラリティ)を提唱したのは、数学者・SF作家であるヴァーナー・ヴィンジ氏であるといわれており、1993年にエッセイ「The Coming Technological Singularity」の中で、「30年以内に技術的に人間を超える知能が作られる」と書きました。30年というと2023年なので、ヴァーナー・ヴィンジ氏の予言が正しければもうすぐAI(人工知能)が人間を超える日が来る・・・かもしれませんよね。
さらに技術的特異点(シンギュラリティ)を広く世に知らしめたのは、人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル氏といわれており、2005年に発表した著作『The Singularity is Near』で2029年にAI(人工知能)は人間と肩を並べるほどの知能を備え、2045年に技術的特異点(シンギュラリティ)が来る、と提唱したことで話題になりました。そして2045年に技術的特異点(シンギュラリティ)がやってくること、それに伴い人間社会が変化することなどを含めて2045年問題とも呼びます。
ヴァーナー・ヴィンジ氏とレイ・カーツワイル氏の2名が技術的特異点を世に知らしめる上でのキーマンでした。でも、そもそも技術的特異点(シンギュラリティ)が騒がれているのか気になりますよね。次に技術的特異点(シンギュラリティ)が注目を集めるのはなぜか、解説します。
技術的特異点(シンギュラリティ)はなぜ騒がれているのか?
技術的特異点(シンギュラリティ)がなぜ騒がれているのか、もっとも大きいのが雇用の問題です。技術的特異点(シンギュラリティ)を迎え、AI(人工知能)の知性が高度になるにつれ、私たち人間の仕事に大きな変化をもたらすと考えられています。
技術的特異点(シンギュラリティ)を迎えることでどのように人間の仕事が変わるのか、人工知能研究の第一人者である松尾豊氏は「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」で次のように解説しました。
松尾氏は人工知能に仕事の変化として、短期的(~5年)にはAI(人工知能)が従来からある仕事に入り込み、中期的(5~15年)には事務的な仕事や防犯などの異常検知の仕事、ルーティンワークな仕事は減り、一方でルーティンの少ない仕事やクリエイティブな仕事が残されると予測しています。しかし、長期的(15年~)にはAI(人工知能)が高度化することで人間の代わりにできることが増えていき、人間に残される仕事は、経営者や事業の責任者のように大局的な判断が必要とされる仕事と、カウンセラーや介護士のように人間対人間の方が良いとされる仕事に絞られてくるのではないかと予想しています。
また、仕事の多くがAI(人工知能)に取って代わられることで、楽観的には人間は余暇の時間を多く手に入れることができるでしょう。そのため、人間は今以上にのびのびと時間を過ごし、趣味に勤しみ、よりたくさんの芸術作品が生まれたりする可能性があります。一方で悲観的には、AI(人工知能)が仕事を“奪う”ことで多くの人が失業状態となり、貧富の格差が大きく開いていく、という懸念もあります。
このように技術的特異点(シンギュラリティ)は大きく騒がれていますが、そもそも本当に技術的特異点(シンギュラリティ)って本当にやってくるの?と疑問がわきますよね。最後に、技術的特異点(シンギュラリティ)は到来するのか解説します。
技術的特異点(シンギュラリティ)は本当にやってくるのか?
人工知能の権威であるジェリー・カプラン氏は、人工知能と人間は異なる存在であり、そのため人間と同じような思考はしない、と技術的特異点(シンギュラリティ)は来ないと主張しています。ジェリー・カプラン氏によれば、技術的特異点(シンギュラリティ)やAI(人工知能)に過剰に危機感を抱くのは映画やドラマといったフィクションの影響が強いことが背景にあるとのこと。
一方でもちろん技術的特異点(シンギュラリティ)は到来するだろう、と肯定的に考えている著名人もいます。その中でもスティーブン・ホーキング氏は代表格で、生前技術的特異点(シンギュラリティ)は到来するだろうとし、同時に完全な人工知能の登場を「人類の終焉を意味するかもしれない」と危機感を抱いた悲観的な意見を示していました。実業家のイーロン・マスク氏も技術的特異点(シンギュラリティ)の到来に対して懸念を示しており、AI(人工知能)が独裁者となり、人間を滅ぼしてしまうのではという仮説を立てています。
さて、今回は技術的特異点(シンギュラリティ)の意味や技術的特異点(シンギュラリティ)をめぐる話題について解説しました。
技術的特異点(シンギュラリティ)とは、AI(人工知能)が人間の知性を超え、また自分自身の知性を超えるようなAI(人工知能)を生み出すようになる時点を指します。代表的な提唱者はヴァーナー・ヴィンジ氏やレイ・カーツワイル氏であり、とくに2045年に技術的特異点(シンギュラリティ)がやってきて人間社会を大きく変えていくというレイ・カーツワイル氏の主張は2045年問題として注目を集めています。2045年というと近いような遠いような感覚ですが、それまでに私たちは技術的特異点(シンギュラリティ)に備えた方が良いのかもしれません。
技術的特異点(シンギュラリティ)がやってくるにあたって、広く一般的に騒がれているのが雇用の問題で、人間の仕事がAI(人工知能)に取って代わる可能性が大きいというものです。短・中期的にはルーティンワークなどは人間がやらなくなるといわれ、さらに長期的にはほとんどの仕事がAI(人工知能)に取って代わられ、大局的な判断を必要とする仕事やクリエイティブな仕事が残されるといわれています。これが我々の余暇を増やすのか、格差社会が到来するのか、どちらにせよ自分のキャリアプランについて見直す必要があるかもしれません。
そんな技術的特異点(シンギュラリティ)ですが、本当にやってくるのか疑問に思う人もいるでしょう。実際に著名人の間でも意見がわかれており、どのようになるのかはまだ明らかとなっていない、というのが本当のところ。
少なくともAI(人工知能)技術はこれからも上昇し、これから強いAI(人工知能)も登場する可能性もあります。技術的特異点(シンギュラリティ)が不安な人も、待ち遠しい人も、AI(人工知能)とどう共存するのか考えることが、技術的特異点(シンギュラリティ)を迎えるに当たって重要なことに違いありません。
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