ここ数年で、AI(人工知能)という言葉をテレビや新聞、ニュースなど、様々なところで耳にするようになりましたよね。しかし、AI(人工知能)とはどのようなもので、どんな技術が使われ何ができるのか、と言った点を明確に答えられる人は、意外に少数派かもしれません。
これまで、コンピュータの処理速度は1年ごとに倍々になっていく傾向がありましたが、近年発展した新たな技術が、その成長スピードをも超える目覚ましい高速化を実現しています。AI時代と呼ばれ、世界の名だたる企業がこぞってAI(人工知能)へ莫大な研究開発費を投じている現在、今後の世界の流れを知るためにも、AI(人工知能)に関する技術の理解を深めることには大きな意味があると言えるでしょう。
人類の歴史上、類をみないほどの速さで世の中は変化しており、例えば人々は高性能なコンピュータをポケットに入れて持ち運ぶようになり、インターネットを通じて、全世界の人々とリアルタイムで繋がれるようになりました。完全自動運転の自動車の実現は間近に迫っています。
人のようになんでもできるような高い知能を持ったAI(人工知能)の実現はまだまだ難しいですが、限定的な範囲、例えばチェスや囲碁、医療用の画像解析などの特定領域に絞って見れば、AI(人工知能)は人間を上回る能力を発揮しています。
このようにAI(人工知能)の発展はとどまることを知らず、AI(人工知能)は将来的に人類の脅威になり得ると、思慮に富む多くの著名人たち、例えばテスラ・モーターズのイーロン・マスク氏などが、AI(人工知能)の危険性について主張していることもまた事実です。
このような情報だけを聞けば、AI(人工知能)の研究開発や将来に不安や恐怖を抱いたりしがちですが、それはAI(人工知能)に対する情報不足が大きな要因となっているのかもしれません。
AI(人工知能)に対する正しい認識や今後の世界の流れを知るためにも、AI(人工知能)に関する技術の理解を深めることには大きな意味があります。そこで今回は、AI(人工知能)で使われている技術や、AI(人工知能)によって実現出来ることについてお伝えしていきます。
必要な情報だけサクッと得られるように章ごとにまとめていますので、理解度に応じて気になる章だけ読んで頂くのも良いです!今回の主であるAI(人工知能)の技術と出来ることについては、後半から登場します。
AI(人工知能)とは
そもそもAI(人工知能)とは、Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)の略です。
AIとは、、、、、コカコーラCMでヒット曲を歌ってたアメリカ生まれ鹿児島育ちのあの人ね!!と思ったみなさん!・・・残念ですが今回は、コンピュータ技術のAI(人工知能)についてのお話です!(今さら)
ロボットの脳みそと考えて頂くとイメージがつきやすいかもしれません。詳しくいうと、AI(人工知能)とは、話す、判断する、認識するなどといった、人間の知的な活動をコンピュータ上で実現する技術や研究分野のことを言います。ただ、専門家の間でも統一された定義がなく、あたかも知能を持っているかのように振る舞うものや技術、そうした分野に関わるものを総称してAI(人工知能)と呼んでいます。
AI(人工知能)の二つの概念、強いAIと弱いAIがあり、弱いAIだけが現在実現している
AI(人工知能)には二つの概念があり、強いAIと弱いAIに分けられます。強いAIは、汎用人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)とも呼ばれ、人間の知能に迫るAI(人工知能)のことです。ドラえもんや鉄腕アトム、ターミネーターなどの、存在が該当します。
一方、弱いAIは、特化型人工知能(applied AI、Narrow AI)とも呼ばれ、特定領域で活躍するAI(人工知能)です。ゲームや画像認識の領域では人間の能力を超える事例が出てきています。
現在世の中に存在しているのは、弱いAI(特化型人工知能(applied AI、Narrow AI))のみです。強いAI(汎用人工知能(AGI))の研究は60年前から続けられていますが完成までの道のりはまだまだ長いでしょう。
現在の強いAI(汎用人工知能(AGI))の開発状況を強いて言うなら、水の中でゴーグル無しで目を開けておぼろげながら何か見える?よりもっと見えづらい、というような感じかもしれません。(とにかく道のりは遠いということです!)
人間の脳みそをコンピュータ上で再現することは、スーパーコンピュータを用いても現在はできないわけです。しかし、近年非常に注目を集めているディープラーニング(Deep Learning)という技術を用いて、かなり限定的にですが人間の知能の一部が再現できるようになってきています。
ディープラーニング(Deep Learning)は深層学習とも呼ばれている、最近非常に注目を集めている技術です。詳細については後半で説明します。
AI(人工知能)の種類、現在世間で注目されているのは機械学習である
AI(人工知能)と呼ばれる代表的なものをピックアップすると、「機械学習」、「遺伝的アルゴリズム」、「群知能」、「ファジイ制御」、「エキスパートシステム」など様々なものがあげられます。
いきなり小難しい言葉が出てきましたが、ここではAI(人工知能)にも何やらいろんな種類があるんだなあ、と思って頂ければ問題ありません。これらの中でも近年特に大きな成果をあげて注目されているのは「機械学習」です。
そこで以降の章では機械学習に注目してお話していきます。現在世間で騒がれているAI(人工知能)は、機械学習のことを言っていると考えて頂いてほぼ問題ないでしょう。
それでも先ほどの小難しい単語(AI(人工知能)の種類)について気になる!という熱心な方は、以下の補足情報もご参考ください。
- 機械学習:コンピュータ上のアルゴリズムが学習し、判断を行います
- 遺伝的アルゴリズム:生物の遺伝子を模倣します。コンピュータ上の遺伝子が突然変異、および交配を行います
- 群知能:生物の群れを模倣します。シンプルなルールに則って行動する個体の集合体が、集団として高度な振る舞いをします。
- ファジイ制御:曖昧さを許容したファジイ集合を利用します。人の経験則に近い制御が可能で、主に家電などに用いられています。
- エキスパートシステム:人間の専門家の判断力を模倣します。知識に基づく推論・アドバイスが可能です
機械学習とは、AI(人工知能)の中心をなす技術で、データからパターンや傾向を掴み、未知のデータに対して予測や判定を行うことができる
機械学習は、英語読みでMachine Learning(マシンラーニング)と呼ばれることもあり、AI(人工知能)の中心となる技術です。コンピュータがデータから反復的に学習し、データに潜むパターンや傾向、規則を見つけて、それを新たなデータに当てはめることで、パターンや傾向に従って予測や判定を行う技術です。
一般的にはこのように言われていますが、難しい説明になっていて普通理解できません。もっとわかりやすく、具体例でみていきましょう!
例えば、
「結婚年数」と夫婦間の「愛の深さ」の関係性について、たくさんの人に聞いてみたとしましょう。「あなたの結婚年数と夫婦間の愛の深さ」を数字で表現してください、と指定したならば、こんな声が聞こえてきそうです。
(仮の話ですよ)
このとき、聞き取りして集めた情報(データ)をもとに、例えば次のようにグラフ上に点が取れたとします。
私は未婚ですので、世間の実態を知らない純情な青年としての希望に基づいた仮の話をしています。何か言いたいことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、どうか細かい点は気にしないでください。
結婚年数が長ければ長いほど、愛が深まるような傾向が見えてきましたよね。たくさん集めたデータをもとに次のように線が引けそうです。
線が引けました!!これってすごいことですよね!
え?・・・当然じゃんって思った方、多いはずです!もちろん当然なんですが、この直線がすごいのは、まだ聞き取り調査をしていないような未知のデータ、例えば結婚年数35年の夫婦に対しても(グラフ上の赤の点のあたり)、「愛の深さ」が予測できそうだということです!
私たち人間ならば簡単に線を引いてしまいますが、それは知能があるからです。このような作業をコンピュータ上で実現しようとするのが、機械学習です。つまり、機械学習とは、たくさんの聞き取り情報(データ)から、直線を引き(パターンや傾向、規則を見つけて)、まだ聞き取り調査のしていない結婚年数40年が経過した夫婦(新たなデータ)の愛の深さを予測する(パターンや傾向に従って予測や判定を行う)、という技術です。
改めて本章冒頭の説明を確認してみましょう。きっとさっきより格段にイメージしやすくなっているはずです!
機械学習とは、コンピュータがデータから反復的に学習し、データに潜むパターンや傾向、規則を見つけて、それを新たなデータに当てはめることで、パターンや傾向に従って予測や判定を行う技術です。
ディープラーニング(Deep Learning)とは、近年のAI(人工知能)ブームの火付け役であり、非常に可能性を秘めた技術
近年のAI(人工知能)ブームの火付け役がディープラーニング(Deep Learning)です。ディープラーニングは、機械学習の中の一つの手法で、深層学習とも呼ばれています。人間の脳の仕組みを真似てコンピュータ上で再現しようとする技術ですが、これがまたすごいんです!
何がすごいのかというと、今までのコンピュータが苦手としていた「ルールのわからない問題」を解決できるようになりました。物事の特徴を見抜けるようになり、人間にしかできなかったようなことがコンピュータにもできるようになったのです。
もう少し詳しく説明します。ディープラーニングが話題になる前のAI(人工知能)のほとんどが、脳の仕組みを参考にしていないAI(人工知能)でした。すごく簡単に言うと、AI(人工知能)が行動を起こせるように、人間が詳細にルールを設定する必要があったのです。AならBをしてね、CならDをしてね、AI(人工知能)君!というようにです。
なので例えば、仮の話ですが、アジアゾウを特定できるAI(人工知能)を作ろうとした場合は、体調5.5-6メートル、尾長1.2-1.5メートル、体高2.5-3.2メートル、薄い灰色または白色、、、、などのように無数にルールを定めてAI(人工知能)に指示する必要が出てきます。しかし、実際のアジアゾウの姿は、角度や光、体勢などで変わってしまいます。どれだけ詳細に言葉や記号で伝えたとしても、当てはまらない場合が出てくるでしょう。つまり、世の中にはルールでは伝えられない情報がたくさんあるということです。
脳の仕組みを参考にしていない、ディープラーニング登場以前のAI(人工知能)では、こうした問題を解決することができませんでした。しかし、人間の脳の情報伝達の仕組みを真似たディープラーニングを用いることで、視覚的な情報に隠れたルール(特徴)をコンピュータが把握できるようになったのです。
近年、ディープラーニングが、他の機械学習モデルよりも非常に高い精度を出すようになってきました。特に画像や自然言語、音声データに対する学習の精度が飛躍的に向上しています。
ただ、ディープラーニングで高い性能を出すには、他の単純な機械学習モデルより非常に多くのデータが必要となってきます。例えば、グーグルが2012年に開発した猫を認識するAI(人工知能)は、1000万枚という量のデータを利用して誕生しました。ですので、準備できるデータが少ない場合は、ディープラーニングでは思うような成果を得られません。
ディープラーニングが導いた結果について人間はなぜそうなったのか?を示せず、研究者にもそれはわかりません。この現象は「ブラックボックス問題」とも呼ばれています。
ディープラーニングをもっと知りたい方は、以下の記事が参考になるでしょう。
トッププロ棋士に勝利した囲碁AIにもディープラーニングが使われています。
私は小中と囲碁に熱中していたからこそ、このニュースには大変な衝撃を受けました。約10数年前、「コンピュータが囲碁で人間に勝つのは100年以上先、またはあり得ない」と碁打ちの誰もが信じて疑いませんでした。
囲碁は19×19のマス目があります。全ての手の組み合わせは10の360通りあると言われており、これを計算し尽くすには、46億年前の地球の誕生と共にヨーイドンッでスーパーコンピュータで計算を開始しても、まだ計算が終わらないほど途方も無い数字なんです!
AI(人工知能)の利用用途は「識別」「予測」「実行」の3つに大別される
AI(人工知能)の中心である技術、機械学習を業務やサービスなどに活かそうと考える場合、大きくAI(人工知能)のできることは「識別」、「予測」、「実行」の3つに分けられます。
◇6-1 AI(人工知能)技術で出来る事その1:識別
まず、「識別」とは、例えば、クレジットカードの利用履歴を元に不正利用を「識別」したり、正常な細胞とがん細胞の画像の「識別」、Googleフォトにアップした画像が自動で「識別」されて整理される、などの機能が含まれます。
「識別」でできることの一覧を以下に示します。
ものづくりの分野では、従来属人的になっていた熟練社員の感覚や匠の技と言ったものを、機械学習の「識別」という利用用途によって、機械が作業を代替したり、経験の浅い社員でも品質を落とさずに業務を進められるように、ますますAI(人工知能)の導入が進んでいます。
工業におけるAI(人工知能)導入事例や動向については以下の記事で紹介しています
◇6-2 AI(人工知能)技術で出来る事その2:予測
次に、「予測」とは、字のごとく、例えば商品がどれだけ売れるかを「予測」したり、工場における設備機器の稼働データを元にして故障が起きそうなタイミングを「予測」したり、個人の検索キーワードを元にユーザーが興味を持ちそうな広告を提案する機能などが含まれます。
「予測」でできること一覧を以下に示します。
貸付先を定量的に評価をおこなうためのツールです。貸付先の特徴からどれくらい信頼できるのかを数値もしくは格付けであらわします。
ファネル(漏斗)とは、らっぱのような形で、細い先を瓶などの口に差し込み、上から液体を流し入れる用具のこと。マーケティングでは、見込み客から受注へと絞り込まれる様子を例えて「セールスファネル」と表現される。
コンテンツ連動型広告とは、インターネット広告のうち、Webページのコンテンツの内容を解析して、その内容に最も適した広告を配信する方式である。または、そうした手法によって配信される広告のことである(引用)
最近、米企業が、生まれる前の赤ちゃんのIQを受精卵の段階で機械学習を用いて「予測」する技術を開発したというニュースを目にして、非常に複雑な気分になられた方もいるかもしれません。今後もAI(人工知能)を活用する人間の倫理が真剣に問われていく事は間違いなさそうです。
◇6-3 AI(人工知能)技術で出来る事その3:実行
「実行」とは、人が五感などを使いながら行う作業を代替することを言います。例えば、機械学習や自然言語処理(人間が書いたり喋ったりする言語をコンピュータに処理させる技術や分野)を駆使して、AI(人工知能)が人間に代わって、画像データからロゴマークをデザインするなどしています。車の自動運転も、人の運転作業を代替する取り組みです。こうした「実行」の作業を機械学習によって実現する事例は今後も増えていく事でしょう。
一覧を以下に示します。
機械学習を用いて、画家レンブラント本人が書いたとしか思えないような作品をAI(人工知能)が生み出した2016年のニュースには驚きました。これも「実行」の一つです。AI(人工知能)が書いた作品は下記よりご覧いただけます。
このほか、最近のAIブームを巻き起こしたDeep Learning(ディープラーニング)を用いたヤバイ事例の数々を集めましたので興味のある方はこちらをご覧ください。
まとめ
さて、今回は、AI(人工知能)で使われている技術とそれで出来る事一覧についてお伝えしてきました。
- AI(人工知能)とは、人間の知的な活動(話す、判断する、認識するなど)をコンピュータ上で実現する技術や研究分野のことを言う。ただ専門家でも定義は様々である
- AI(人工知能)の二つの概念、強いAIと弱いAIがあり、弱いAIだけが現在実現している
- AI(人工知能)にはいくつか種類があるが、成果を上げて現在世間で注目されているのは機械学習である
- 機械学習とは、AI(人工知能)の中心をなす技術で、データからパターンや傾向を掴み、未知のデータに対して予測や判定を行うことができる
- AI(人工知能)の利用用途は「識別」「予測」「実行」の3つに大別される
など、AI(人工知能)の概要をはじめ、AI(人工知能)に使われている技術、出来ること、利用用途がわかりましたよね。今後も間違いなくAI(人工知能)の活用は活発化していくことに加えて、成長スピードも一層加速していくことでしょう。なぜなら、技術の進化が新たな技術を生み出し、その技術が様々な分野に影響してまた他の分野で技術が飛躍的に成長し、、、というような連鎖が起こっていくはずだからです。
遅くとも2045年までに、つまりあと27年以内に、全人類の知能を合わせたよりも高い知能を持つAI(人工知能)が誕生し、そのAI(人工知能)が自身を改良した新たなAI(人工知能)を生み出し、またそのAI(人工知能)が、、、というように、AI(人工知能)の爆発的な成長が止まらなくなる時点(シンギュラリティ、技術的特異点)がやってくると言われています。
その時、人類の知能をはるかに超えたAI(人工知能)は、人間にとって予測のできない存在となっており、私たちがAI(人工知能)とどのような関係を築いているのかは誰にもわかりません。
AI(人工知能)と今後どのように付き合っていくのか。これは私たちが抱えている大きなテーマでしょう。歴史上類を見ない速度で変化し続けている世界。人工知能の権威レイ・カーツワイル氏は、「二十一世紀のテクノロジーの進歩は、過去200世紀分の進歩に相当することになる」とも言っています。
つまり私たちは、これまでの常識や生活、文化が根底から大きく覆されるような歴史的転換期を迎えようとしているのです。繰り返しになりますが、これからの世界の流れを知るためにも、AI(人工知能)の技術を学ぶことには大きな意義があります。今後も日々AI(人工知能)の技術についての理解を少しずつ深めていきながら、私たちの暮らしが一層豊かになるよう、効果的にAI(人工知能)技術を日常に取り入れていきましょう。
<参考>
・韮原祐介(2018).『いちばんやさしい機械学習プロジェクトの教本』株式会社インプレス.
・三津村 直貴(2018). 『近未来のコア・テクノロジー ニューラルネットワーク、データマイニング、ブロックチェーン、ロボティクス、量子コンピュータが1冊でわかる』株式会社翔泳社.
・我妻 幸長(2018) 『はじめてのディープラーニング -Pythonで学ぶニューラルネットワークとバックプロパゲーション- (Machine Learning)』SBクリエイティブ株式会社.
・神崎 洋治(2018)『やさしく知りたい先端科学シリーズ3 シンギュラリティ』株式会社創元社.
・安宅和人(2015)『「人工知能はビジネスをどう変えるか」(ハーバードビジネスレビュー)』
・奥野 陽、 グラム・ニュービッグ、萩原 正人(2016).『自然言語処理の基本と技術 (仕組みが見えるゼロからわかる)』株式会社翔泳社.
AI(人工知能)って「なにそれ美味しいの?」ってレベルだった僕が、AIエンジニアを目指してステップを踏んだり踏まれたりしている記事を書いてます。よかったら読んでみてください(実話)。