テクノロジー

なぜ人工知能(AI)でベーシック・インカムが促進するのか

ベーシックインカムで生活するイメージ

ベーシックインカムは日常生活では馴染みのない言葉ですよね。これは、所得や資産、疾病や障害の有無に関係なく、誰にでも一律のお金を政府が支給するという政策です。推進派は様々なメリットを主張しますが、主な目的は貧困対策と景気の刺激。そんな風にお金をばら撒いても巧くいかないだろうと思うでしょうが、海外での導入実験などを見ると、そうとばかりも言えないようです。

ベーシックインカムは昔からある考え方なのですが、最近になって急に注目され始めました。このままの勢いで人工知能(AI)が進歩・普及すると、将来、仕事の多くが人工知能(AI)奪われるかも知れない。それへの対策としてベーシックインカムが浮上してきたのです。ベーシックインカムには賛否両論ありますので御紹介しましょう。

ベーシックインカムのメリットとデメリット

労働意欲がなくなるイメージ

制度が非常に単純化しますから、手間が省けてコストが下がり、公務員の数を減らすことができることはおわかりでしょう。また、全国民一律ですから、不正支給の問題もなくなります。経済的には、収入が増えれば消費が拡大することが期待されますし、余暇時間が増えて新たな需要ができる可能性もあるのです。

もちろん、良いことずくめではありません。無償でお金が支給されれば人々の労働意欲がなくなるのではないか、ベーシックインカム以外の福祉の水準が低下するのでないか、本当に消費が刺激されて経済に良い影響が出るのか、と心配になりませんか。特に、労働意欲が低下して人が怠け者になると言って、この制度に強硬に反対する意見があります。これを確かめようとした試験運用がおこなわれました。

ベーシックインカム導入実験の結果

支給されたお金で勉強をするイメージ

外国の自治体などが行ったベーシックインカムの導入実験では、そのような労働意欲の低下傾向は確認できません。むしろ、進学したり職業訓練を受けたりして、支給されたお金を足掛かりに労働の質を高めようとする場合も多いと報告されていて、希望がわきます。

もちろん、導入実験は、2017年からフィンランドで国レベルの試行が始まったのを別にすれば、限られた地域で限られた期間に行われたものばかりで、国レベルで恒久的に実施した場合どのようなことが起こるかは未知数と考えてください。

新しい政策の例に漏れず、最大の問題の一つは財源。試算方法や新たな制度の設計運用計画によっていろいろな意見があるのも、いつも通り。前述した通り、現行制度よりはコストが下がりますから、増税の必要はないという意見もありますが、最低限の生活を保障するためには新たな財源が必要だという意見が優勢です。

このように、問題も指摘されながら、今、ベーシックインカムが注目されるきっかけの一つとなったのが、人工知能(AI)の発達によって失業者が増加する、という予測です。

人工知能(AI)との関係

人工知能(AI)に仕事を奪われるイメージ

経済関連の雑誌やホームページでも「人工知能(AI)の発達で、なくなる仕事と生き残る仕事」というような見出しを多く見掛けるようになりました。ちょっと不安になりますよね。

これについては、

近い将来、シンギュラリティ(人工知能(AI)が人間の知能を完全に超えること)が起こって、全ての仕事が奪われるという極端に悲観的な意見があります。
心配ですよね。その一方、
産業革命以来、工業用ロボットやオフィスオートメーションなど、新たな自動化技術が登場する度に、人々は仕事が奪われると騒いだけど、現実には人間のする仕事はなくならなかったから、今度もそうに違いないという、極端に楽観的な意見もあります。
それでは何もしなくても良いのでしょうか。

多くの学者や評論家の意見はその間にありますが、野村総合研究所の研究によると2025〜2035年には「日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能(AI)やロボット等により代替できるようになる可能性が高い」と推計しています。程度の違いはあれ、多くの人が予測する人工知能(AI)による「失業者は多いが、生産性は高い」社会における富の再分配の方法として、ベーシックインカムが浮かび上がってきました。

それでは、人工知能(AI)にベーシックインカム政策の立案や実施管理ができるでしょうか。

人工知能(AI)でベーシックインカム政策を導けるか

人工知能(AI)にベーシックインカムについて聞くイメージ

今、何かと話題になっている人工知能(AI)開発技法であるディープラーニングは、多くの事例から特徴を抽出し、それに基づいて結果を予測するものですから、ベーシックインカムのように過去に事例のない新しい政策を実施した時どうなるかを予想するのには向かないでしょう。

こういう場合に利用されるのはシミュレーションの技法です。つまり、数値的なモデルを作って、仮想的にテストしてみるやり方。しかし、人間社会は変数が多く、関連の仕方も多様な、いわゆる複雑系で、人工知能(AI)を使ってもシミュレーションすることは困難です。そんなに簡単に未来が予測できないのは当然ですよね。

興味深いことに、現在実用化に向けて開発が進められている量子コンピュータは、このような変数の多い事柄をシミュレーションして「最適解」を求めることが得意なのです。量子コンピュータを使った人工知能(AI)が実用化されたとき、「ベーシックインカムの充実した使い方」を訊ねることができるかも知れません。例えば、ベーシックインカムの支給額と財源となる税金の額の最適なバランス、などが導き出せるかも知れません。そういう、人工知能(AI)の進歩自体が失業者を増やすかも知れないというのは皮肉なことですけど。

 

未来を掴むイメージ

どんな人にも無条件で生活を保障するだけのお金を支給するという政策は、初めて聞いたときには非常識に思えるかも知れませんが、それなりに理にかなったものだということがわかっていただけたでしょう。

人工知能(AI)が今後どのように発達するかは、技術的な飛躍しだいというところもあり、特に量子コンピュータの進歩などは簡単には予想できませんが、何らかの準備はしておくべきだと考える人は多いのです。やっぱり不安ですから。日本の各政党も、肯定的否定的の別はあれど、マニフェストなどでベーシックインカムに触れていますよね。

社会の動きは複雑で不確定な要素も多いので、大量失業時代が必ず来るとは言えません。しかし、人工知能(AI)を始めとした情報技術、自動化技術の進歩は早く、予断を許しません。この制度について考え、良い未来を掴みましょう。

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