2014年にソフトバンクから発表されたAI(人工知能)ロボットPepperですが、今ではすっかりお馴染みになってきましたよね。ちょっぴり不思議な動きと愛嬌のある表情から「ペッパーくん」と呼ぶ人も多いのではないでしょうか。(以下文中では、特に断りのない限り、愛情を込めて「ペッパーくん」と表現いたします。)
これまで、ペッパーくんはソフトバンクショップなどの店頭に配置され、自身が持つAI(人工知能)機能を使った案内役として活躍してきました。お店の入り口に立つ受付役として業務をこなすことができるので、皆さんの中でも実際に店頭でペッパーくんに話しかけたことがある人も多いのではないでしょうか。
このように、AI(人工知能)案内ロボットとしてかなり認知されてきてはいますが、実はこのペッパーくん、かなりのポテンシャルがあるらしく、まだまだAI(人工知能)案内ロボットとしての実力を発揮しきれていないそうなのです。
そこで今回は、誕生から4年経ったペッパーくんにスポットを当て、「かわいいフリしてあの子、わりとやるもんだね♪」と思ってしまうような、AI(人工知能)案内ロボットとして、今まで見たこともない実力について解説いたします。
ペッパーくんの誕生について
まずは、ペッパーくんの歴史について簡単に振り返ってみましょう。
ペッパーくんの開発コンセプトは、世界初の感情認識パーソナルロボットで、「感情エンジン」と「クラウドAI」を搭載しました。
これらの機能により、ペッパーくんは表情を持ち、より人間らしい受け答えができるAI(人工知能)ロボットとして開発が進められました。
そして、2014年6月に家庭向け人間型ロボット「Pepper」としてリリースされます。その後、ソフトバンクショップを中心に配置され、ペッパーくんは認知度を上げていくのです。
ペッパーくんのスペックとは
こんな愛嬌があるペッパーくんですが、実はかなりの進化を続けています。いや、厳密に言うと、進化をすることができる環境があるのです。
まずは、ペッパーくんの基本機能について解説します。かなり簡単に言うと、高スペックのパソコンと多くのセンサーがついているロボットと言えるでしょう。
パソコンと同様に、CPU、メモリ、記憶領域、モニターなどのハードウェアが搭載されており、ソフトウェアも専用のOS(オペレーションシステム)が搭載されています。さらに、頭、胸、手、脚にはカメラや赤外線センサー、さらに、柔軟に動く関節が搭載されており、これらが連動してペッパーくんの働きを担っています。
ペッパーくんが進化できるワケ
さらに、ペッパーくんの中身は基本的にはパソコンなので、プログラミングをすればカスタマイズすることができるのです。このプログラミングの開発環境は、ソフトバンクから公開されており、誰でもペッパーくんの開発に携わることができます。
また、開発は複数の言語に対応しており、初心者からプロフェッショナルまで多くの言語に対応しております。Android studio(Googleが提供するAndroid開発用プラットフォーム)、PythonやC++などの言語だけではなく、シンプルなGUIの開発ソフトも付属しているため、プログラミング未経験者や子供でもプログラミングが可能です。
駅の案内業務で大活躍
そんなペッパーくんの可能性に目をつけたのが東日本旅客鉄道株式会社(以下JR東日本)です。今年の5月にJR東日本は、東京駅校内の商業施設グランスタと錦糸町駅直結の商業施設テルミナの2ヶ所にペッパーくんを使ったAI(人工知能)案内ロボットを設置しました。
さらに、このペッパーくんはIBMのAI(人工知能)Watsonと連携をして、より高いレベルのAI(人工知能)案内ロボットとして稼働しているのです。(以下文中では、特に断りのない限り、愛情を込めて「Watsonくん」と表現いたします。)
ペッパーくんとWatsonくんは、それぞれ役割が異なり、ペッパーくんは利用者と対話するロボットして、Watsonくんは質問内容の理解と回答検索をするロボットとして動いています。
ペッパーくんに搭載されたマイクに利用者が質問 ↓ 音声データはWatsonくんがテキストデータに変換 ↓ Watsonくんがテキストデータの内容を理解し学習データから最適解を選択 ↓ その最適解をペッパーくんが発話して回答
現場に出てからも勉強熱心
実はペッパーくんの実力はそれだけではありません。
Watsonくんが回答を導き出せない場合でも、ペッパーくんは、次のように他のデバイスと協力し、AI(人工知能)案内ロボット として回答をすることができるのです。
ペッパーくんの胸のタブレットに「ボクの友達に聞く」と表示 ↓ 利用者は胸タブレットの表示をタップする ↓ ペッパーくんと連携したロボット遠隔操作システムが起動し、オペレータ(人間)を呼び出す ↓ オペレータがヘッドセットで回答を発話 ↓ Watsonくんが回答内容をテキストデータに変換 ↓ ペッパーくんが発話して回答
このように、オペレータが回答した内容は、新たなデータとして質問内容とセットでWatsonくんの中に蓄積され、正答率の向上のために活用されます。
いかがでしょうか?「ペッパーくん、知らない間に他の人と協力してちゃんとお仕事ができるようになったね!」と声をかけたくなりますよね。
今回は、AI(人工知能)案内ロボットして活躍するペッパーくんの実力と題して、ペッパーくんの驚きの働きぶりをご覧いただきました。
一見、かわいい顔したペッパーくんですが、かなりのポテンシャルを持ち、私たちのプログラミング次第では、人間を大きくサポートする可能性が秘められていますよね。
JR東日本によると、AI(人工知能)案内ロボットとして、実際にペッパーくんが対応した利用者数は、1日あたり200人という結果が出ました。これを1人の人間が対応するにはかなりの労力を要することを考えると、労働力としては十分に評価することができますよね。
何よりも偉いのが、ペッパーくんがひとりで仕事を抱え込まず、分からない事があったらWatsonくんなど他の人やデバイスに助けを求めるところではないでしょうか。このペッパーくんの働きぶりに、私たち人間も見習うところがあるのではないでしょうか。
今後は、さらなる音声認識技術の発展や、データの蓄積により、ペッパーくんがAI(人工知能)案内ロボットしてますます活躍することで期待できそうですよね。
みなさんもそんなペッパーくんを見たら「おつかれさま」と一声かけてあげてください。気の利いた一言を返してくれるかもしれませんよ。