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AIが書いた小説で「全俺が泣いた」?小説家が消える日は来るか

AIが書いた小説で「全俺が泣いた」?小説家が消える日は来るか

AI(人工知能)がSF小説を書き上げ、その作品が有名な文学賞の一次審査を通過した」と聞くと、いったいどんな内容なのか気になりますよね。これは2016年に実際に起こった出来事で、文学賞の審査員にはAI(人工知能)が書いた作品だということは伏せられていました。AI(人工知能)が書いた小説という先入観がなく、人間が書いた作品と同じ基準で判断されたことになります。

このシチュエーションそのものがSF小説のようですが、いよいよAI(人工知能)が芸術の分野まで対応できるようになったと、当時はかなり話題になりました。人間の小説家にしてみたら、「AI(人工知能)に仕事を取られるかも?」とソワソワしてしまうかもしれません。

そこで今回は、AI(人工知能)は本当に人間の作家のように小説を書けるのかについてお伝えします。AI(人工知能)が小説を書いた仕組みをはじめ、私たちはAI(人工知能)の書いた小説に笑ったり感動したりできるのか、人間の小説家がAI(人工知能)作家に消される日は来るのかなど、さっそく見ていきましょう。

人工知能(AI)が書いた小説が文学賞の選考を突破

文学賞のイメージ

AI(人工知能)に小説を書かせることに成功したのは、はこだて未来大学の松原仁教授が中心となった「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」です。2012年9月にスタートしたこのプロジェクトは、星新一のショートショート全編を分析し、エッセイなどに書かれたアイデア発想法を参考にして、人工知能におもしろいショートショートを創作させることを目指しています。

「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」は、「SFショートショートの神様」と呼ばれるSF作家・星新一にちなみ、2013年に日本経済新聞主催で創設された「星新一賞」にその作品を応募しました。

星新一賞は理系的な発想に基づいた短編小説を対象にしていて、「一般」「学生」「ジュニア」の3部門があります。AI(人工知能)は「一般部門」に応募でき、2016年には一般部門に約1,450作品の応募があり、そのうち11作品でAI(人工知能)が制作に関わっていました。

では、実際にAI(人工知能)がどんな小説を書いたのか紹介しましょう。

AI(人工知能)が書いた小説をチラ見!

チラ見のイメージ

「作家ですのよ」プロジェクトが星新一賞に応募し、一次審査を通過した作品は一般に公開されています。それらの一部をチラッと見てみましょう。

・「私の職業は
(一部引用)私の仕事は工場のラインに入り、決められたルーチンをこなすこと。
毎朝同じ時間に起き、同じ電車で仕事場に向かい、同じ作業をして、同じ時間に帰るだけの毎日。最近は景気も悪く、出勤しても手持ち無沙汰である。
真新しいことなど何もなく、面白いと思うことも悲しいと思うことも、最近はない。

・「コンピュータが小説を書く日
(一部引用)その日は、雲が低く垂れ込めた、どんよりとした日だった。
部屋の中は、いつものように最適な温度と湿度。洋子さんは、だらしない格好でカウチに座り、くだらないゲームで時間を潰している。でも、私には話しかけてこない。
ヒマだ。ヒマでヒマでしょうがない。

・「人狼知能能力開発テスト
(一部引用)人狼ゲーム。それはプレイヤーが村人と人狼に分かれて行うゲーム。人狼は正体を隠して村人の中に紛れ込んでいる。プレイヤーは全員で昼間に会議をし、紛れている人狼を見つけ出して処刑する。夜になると人狼は本性を現し、ひっそりと村人を襲撃する。処刑できるのは 1 日に一人で、誰を処刑するかは全員で投票を行って決める。

sakura
sakura

意外と小説になっているじゃないか!と、某グルメリポーター風に「文学のIT革命や~!」と叫んだ方がいるかもしれません(いない)。

逆に「思っていたよりぎこちない」と感じた方ももちろんいるでしょう。感想は様々でしょうが、これらの作品を見る限り、レベルは別としてAI(人工知能)が小説を書く技術を習得したことは間違いなさそうですよね。ではAI(人工知能)はどうやって小説を書いたのか、その仕組みを紹介しましょう。

AI(人工知能)が小説を書く仕組み

仕組みのイメージ

「作家ですわよ」プロジェクトでは、次の3つの方法でAI(人工知能)に小説を書かせました。

  1. AI(人工知能)が既成の文章の一部を変え、新しい文章を作る
  2. 人間がストーリーや登場人物を設定し、AI(人工知能)が文章を書く
  3. AI(人工知能)がストーリーを設定し、人間が文章を書く

1はテキストの切り貼りのようなイメージといえばわかりやすいかもしれません。しかしこの方法は、いろんなサイトから文章をただコピペするのとあまり変わらないデメリットがあったといいます。

2は登場人物の性格やストーリーを人間が設定し、AI(人工知能)がその設定にふさわしい文章を作ります。例えばだらしない主人公という設定なら、「彼女の部屋はいつも散らかっている」という一文を入れたりします。

3は心理ゲーム「人狼」をモデルに、まず10人分に相当するAI(人工知能)を用意しました。そして全てのAI(人工知能)を1万回対戦させ、その中で面白かった展開をストーリーとして採用したのです。

AはAI(人工知能)が単独で実行したといえますが、BとCについてはAI(人工知能)と人間のコラボレーションといったところです。実際、このプロジェクトのリーダーである松原教授は「今はまだ人間8割でAI(人工知能)2割」と発言しています。

sakura
sakura

こう聞くと「じゃあ、どうすればAI(人工知能)だけで小説を書けるようになるんだろう?」と疑問がわきますよね。

では続いて、AI(人工知能)が単独で小説を書き、真の「小説家」になるためにはどうすればよいかを説明します。

人工知能(AI)は作家の仕事を奪うか

仕事を奪われたイメージ

AI(人工知能)が人間の手を借りずに小説を書くためには、人間が小説を書く時と同じような仕組みが必要になるはずです。しかし現在、そもそもなぜ人間が文章を書けるのか、その理由は解明されていません。不思議なことに人間は、なぜできるのか自分たちにもわからないまま、文章を書く力を使っています。

人間にわかっていないものを、AI(人工知能)に理解させられるはずがありませんよね。もし人間が文章を書くメカニズムがわかれば、コンピュータにプログラムするための「アルゴリズム」の開発につながります。そうすれば一人(一台?)で考えるAI(人工知能)作家が実現する可能性は高いといえるでしょう。

ただし現実は厳しく、AI(人工知能)は今のところ人間なしでは小説を書けません。

sakura
sakura

ここでさらに悲報ですが、短文作成はクリアできても長文を書くことは怪しいということです。

「作家ですのよ」プロジェクトがSFショートショートを選んだのも、短くてオチがはっきりしており、さらに構成がわかりやすいなど、AI(人工知能)に優しいジャンルだったからといいます。

2016年以降も「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」は、AI(人工知能)が書いた小説を文学賞に応募し続けています。しかし一次審査は通過するものの、残念ながらまだ受賞には至っていません。さらに長編にはまだチャレンジしていないようです。

これらの事実を見ると、まだまだ人間の作家は安泰なようです。ここまでは文章を作成するスキルについてみてきましたが、続いて小説のストーリーの面白さや、読者が感動できるかどうかについて紹介します。

AI(人工知能)が書いた小説で全俺が泣く日

全俺が泣くイメージ

結論から言うと、AI(人工知能)が書いた小説で感動した全俺が泣き、それどころかハリウッドで映画化されて全米まで大号泣、という日は相当先になるでしょう。その理由はこれまでに説明したように、まず長文が書けないという大きなハンデがありますし、小説の面白さの柱になるストーリーを自発的に作ることができないという弱点があるからです。

sakura
sakura

「人狼」ゲームで実際にプレイした内容からストーリーを作ることには成功しましたが、あくまでもゲーム実行によるデータから導き出した面白い結果をストーリーとして選んだだけでした。これでは、自発的に考えたとは言えませんよね。

AI(人工知能)はデータに基づいて多くの人が好むものを予測するのは得意だけれど、これまでにない新しいストーリーを作り出す能力はまだ未知数です。人間は見たことのない新しいものや、予想を超えたとんでもないものに心ひかれる特性がありますが、今後ますますAI(人工知能)が進化し、人間のそんな部分まで推し量ることができれば、人の心を震わせたり、面白さで時間を忘れたりするような優れた小説を創作することができるかもしれません。そうなれば人間の作家も、いよいよ落ち着いてはいられなくなるでしょう。

 

読書のイメージ

今回はAI(人工知能)は本当に人間の作家のように小説家を書けるのかについてお伝えしました。

  • 人工知能(AI)が書いた小説が文学賞の選考を突破
  • AI(人工知能)が実際に書いた小説とは
  • AI(人工知能)が小説を書く仕組み
  • 人工知能(AI)は作家の仕事を奪うか
  • AI(人工知能)が書いた小説で人は感動するか

など、AI(人工知能)と小説を取り巻く現状と課題についておわかりいただけたのではないでしょうか。

現在、AI(人工知能)が得意なのは最適化といわれています。この力を小説の創作に活かし、既に亡くなってしまった作家の小説を読み込ませれば、そっくりの小説を書くことが可能になる可能性があります。そうなれば「まるであの作家がよみがえったみたい!」と思わせてくれる小説が生まれるかもしれませんよね。

また、人間が文章を書ける仕組みがまだわかっていない…という点が意外だった方もいらっしゃるでしょう。しかし見方を変えれば、AI(人工知能)に小説を書かせる研究をすることで、人間が文章を書ける謎が解けるかもしれません。ひいては、人間の創造性についてより深く知ることにつながります。AI(人工知能)を知ることが人間を知ることにつながり、互いに成長を遂げることができる。そんな未来が来る日を楽しみに待ちたいですよね。

 

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