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【働き方改革】今すぐ知りたい!生産性向上のための取り組み事例ご紹介

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企業の成長のためには生産性向上が必要不可欠ですよね。しかし日本企業における生産性の現状は芳しくありません。

日本生産性本部によると2019年度の1人当たり名目労働生産性は821万円、実質労働生産性上昇率は前年度と比較して-0.8%という結果が出ており、2年連続でマイナス傾向にあることが判明しました。

このままでは企業の競争力の低下、国内市場の縮小などの問題が生じる可能性も。

政府は働き改革の一環として助成金や補助金を支給するなどして企業の経営活動を支援していますが、企業レベルではどのような取り組みがなされているのでしょうか。

そこで今回は生産性向上に関する事例を複数紹介して、各企業がどういった方法で生産性を高めているのかをお伝えします。

生産性向上が求められる主な理由

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まず企業の経営活動においてなぜ生産性を高める必要があるのかを理解しておきましょう。生産性向上が求められる理由は以下の2つです。

少子高齢化による労働人口の減少

少子高齢化による人材不足は労働の場においてだけではなく、国が直面している大きな課題です。

厚生労働省が発表した「令和元年(2019)人口動態統計の概況」によると2019年の国内出生数は86万5239人で、前年の91万8400人より減少。一方で死亡数は138万1093人で、前年の136万2470人より増加しています。

死亡数から出生数を引いた数字である自然増減数は51万5854人で、人口減少による働き手の不足は避けられないと考えられます。

そのため一人あたりの生産性を高めることで企業の経営活動を支えよう、という取り組みが行われているのです。また労働者の新規獲得が困難となり既存労働者が長時間労働を強いられ、結果としてメンタルヘルスの悪化、自殺率が高まるなどのおそれも。

労働者保護の観点からも生産性向上は必須といえるでしょう。

国際競争の激化

インターネットの発達により日本企業は海外企業との競争を余儀なくされました。

しかしながら日本生産性本部の調査「労働生産性の国際比較2020」で明らかとなった日本の1時間あたりの労働生産性は47.9ドル。この数字はOECD(経済協力開発機構)加盟国37カ国中21位、先進国の中では最下位となっており、諸外国と比較してもかなり低い水準にとどまっていることが分かりますよね。
海外企業による国内市場進出はますます加速し、現状の非効率的な労働環境ではグローバル化した競争に打ち勝つことはできません。日々変化する市場に対応するためには、早急な生産性向上が求められるのです。

生産性向上の取り組み事例1:業務の可視化

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製造業の取り組み事例

まず西欧業の取り組み事例をご紹介しましょう。

ある企業は、複数ある工場ごとに業務プロセスが異なり、ルールの決め方も曖昧という状況にありました。そのため業務の質の低下やミスを防ぎきれず、生産性の向上は急務であると感じるように。

生産管理システムを導入することで、作業工程や現場の記録など必要な情報を全て電子化。業務フローをすぐに理解できるようになり、無駄な工程の洗い出しもしやすくなりました。

印刷業の取り組み事例

またある印刷業では、高クオリティのサービス提供を続けているうちに作業量に対する利益が追い付かなくなったため、売上データの「見える化」に着手。

専用ソフトを使用し案件ごとの利益をチェックし、数字を分析することで経営判断がしやすくなりました。
また社員全員がデータを共有できるようになったので、自身の働きによって数字が変化するという気付きを社員にもたらし、モチベーションアップにもつながっています。

生産性向上の取り組み事例2:業務の自動化

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通信業の取り組み事例

次は業務の自動化についての取り組みをご紹介します。

ある通信業では紙で管理していた請求書は年間6万件に及び、処理作業に多大なコストが発生していました。

そこで基幹システムとRPAの連携により約3万件の処理作業を自動化することに成功。
これによって4000時間以上の工数削減を達成し、業務自動化の恩恵をしっかりと受けられていると感じられるように。また支払業務における見落としも防げるので、正しく支払処理を進められています。

金融業の取り組み事例

次に金融業の取り組みをお話します。

ある金融では住宅ローンの申し込み件数増加による審査業務、事務作業の負担軽減のためRPAを導入することにしました。
具体的には審査関連業務を自動化することで審査期間が短縮、年間94,830時間の削減が実現。また時間だけでなく事務処理作業にも効果がありました。

わずらわしくミスの発生しがちなデータの入力作業を自動化することにより、確認する側の負担軽減にもつながっています。

生産性向上の取り組み事例3:業務の効率化

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飲食業の取り組み事例

次は業務の効率化を取り組んだ事例をお話しましょう。

ある飲食業では、惣菜の製造工程にムダが多く、特に運搬工程における効率を改善できないかと考えていました。

そこで工程を検証。ビデオ解析による作業分析を導入を行いました。各作業の時間を計測し、所要時間をグラフ化することで作業のムダが分かりやすくなったのです。

具体的な取り組みとしては惣菜のコンテナを所定の位置へ移動させる器具を導入することで、歩いて持って行く必要がなくなり作業時間が短縮されました。

小売業の取り組み事例

今度は小売業の業務の効率化です。ある企業では野菜をカットする作業をまとめて行っていたためスペース、動作にムダが生じていました。

そこで一個ずつカットすることで省スペース化、少しの動作で作業が完了するように。野菜一個あたりの作業時間が約8秒短縮され、生産性が22%向上という結果をもたらしたのです。

これは年20時間、2万円分の削減効果も出ており、他の野菜や他店舗にも導入する予定。

生産性向上の取り組み事例4:業務の標準化

マニュアルのイメージ

小売業の取り組み事例

今度は業務を標準化した取り組みについて事例をお話しましょう。

ある企業では赤字に転落した事業があり、業務体制を見直しをおこないました。するとマニュアルが分かりにくく、ムダな作業が労働時間を圧迫していることが明らかになったのです。

そこで商品の陳列方法などを改めてマニュアル化。業務の標準化を進めることで徹底的にムダを省いていきました。その結果定時退社率93.9%、売上も10年の間に約2倍に。

またマニュアルを全社員で共有することにより意見交換も活発化、労働意欲を向上させる効果も生まれています。

金融業の取り組み事例

次に金融企業での取り組みについてお話しましょう。

この企業では部署の統合をきっかけに引き継ぎ業務が発生しました。

そこでマニュアルを作成することで業務を標準化することに着手。他部署の社員でも理解できるように経験者と一緒に作成業務を進めることで、誰が見ても分かりやすいマニュアルが完成しました。
すると標準化に取り組んだ結果少ない人員で業務をこなせるようになり、労働時間が短縮されています。また実際に使ってみて判明した問題点などを定期的に修正することでマニュアルの品質が維持され社員同士の意見交換も活発になりました。

生産性向上の取り組み事例5:人材のスキルアップ

人材のイメージ

飲食業の取り組み事例

今度は人材に対しての取り組みをお話しましょう。

ある飲食店では、収益拡大が早急な課題であると感じていたため、集計レポート機能搭載のレジスターを導入しました。それに伴い集計機能を使いこなせる従業員の育成のため、ITスキル向上を目的とした研修を実施。
すると集計作業にかかっていた時間の短縮と従業員の育成が同時に叶い、充実したサービス提供が可能となりました。また生産性の向上も著しく、従業員の時間給も40円引き上げることで労働意欲を高めています。

製薬業の取り組み事例

次は製薬業の取り組みです。

このきg日本だけでなく世界中に拠点を有する大規模な企業であるため、社員研修にかかる膨大なコストが生産性向上を大きく妨げていました。

そこでeラーニングシステムを活用し社員全員に対するグローバルトレーニングが可能に。このシステム導入から一年で約160万ドルのコスト削減に成功、世界的に活躍できる人材の育成にもつながっています。

生産性向上の取り組み事例6:柔軟な働き方を提案

柔軟な働き方のイメージ

アパレルの取り組み事例

最後に働き方についての取り組みです。

あるアパレル企業では女性従業員が多数在籍しており、出産・育児で離職した後の復帰率が低く、従業員の新規獲得や研修に多大なコストをかけていました。

そもそも出産・育児をサポートする体制が整っていないことが原因と考え、従業員の育児支援を目的とした短時間勤務制度を導入したのです。
その結果出産による離職率が低下、育児休暇取得者の復帰率は100%を維持しています。柔軟な働き方を採用することで、働きやすい環境が実現しました。

教育業の取り組み事例

またある企業では、メインの教育や、教育だけでなく福祉、文化など幅広い分野を扱っていました。そのため社員が創造性を発揮することでより良い事業展開が可能になると考え、コアタイムなしのフレックスタイム制を導入。

このフレックスタイム制では業務量、進行を社員自身に任せることで自己管理能力と計画性の向上を図りました。
その結果プライベートでは家族と過ごす時間が増え、仕事では業務を効率的に進められるようになったのです。また社員からも好評。

 

働き方のイメージ

生産性向上のための取り組み事例をご紹介してきました。

各企業が試行錯誤を繰り返し、色々なやり方で生産性向上のために力を尽くしていることが分かりましたよね。

さっそく自社でも生産性向上のための取り組みを、と考える人もいるかもしれません。しかし急いで現状の体制を変えてしまうと社員の間で戸惑いが生じ、作業効率が悪化してしまう可能性も否定できないでしょう。

生産性を上げるためには労働体制の見直しや改善は必須ですが、まずは自社の抱える課題や改善点を明確にし、全社員の間で共有するようにしてください。そうすることで会社任せだった事柄を「自分ごと」として意識できるようになり、生産性向上が結果として社員のためになることを認識できます。

会社の規模が大きくなるほど社員との意識共有は難しくなりますが、生産性向上は時間をかけて取り組むべき抜本的な組織改革であると考えて取り組んでいきましょう。

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