ライフスタイル

「AI‐TV」や「AI 育成お笑いバトル」、AIがお笑いに出演する理由

漫才のイメージ

2017年10月、フジテレビ系列で放送された「AI-TV」というお笑い番組が、画期的な試みを行って話題となりました。「霜降り明星」や「ゆりやんレトリィバァ」といった人気お笑い芸人らを差し置いて注目の的となったのが、番組MCに抜擢された人型ロボットの「Pepper」、そして番組内の企画を考えるAI(人工知能)の「AI-CDβ」です。

TV番組の企画をAI(人工知能)が考え出すというのはもちろん前代未聞ですよね。

そしてこの番組の放送以降、AI(人工知能)がTVのお笑い番組に参加するというケースが決して珍しいものではなくなりました。

そこで今回は、いまなぜTVのお笑い番組にAI(人工知能)が参加し始めているのか、AI(人工知能)はお笑いを支える存在になりうるのかについてお話しましょう。

AI(人工知能)の企画力とは?その秘密を探る

人間とAIが企画をするイメージ

まず「AI−TV」では、実は番組内の企画を「AI-CDβ」というAI(人工知能)が考えていました。これはそもそも、「人間が考える企画には限界があるのではないか?」という仮説のもと始められたことだったようです。つまり、AI(人工知能)を活用してこれまでの常識を打ち破るようなTV番組を作ろうとしたわけ。

実はこの「AI-CDβ」、本来は世界初の人工知能クリエイティブディレクターとして開発されたもので、過去10年間に広告賞を受賞したCMの優秀作品のデータがインプットされています。

そしてこれらのデータをもとに企画コンセプトを発案するというのです。

実際にこの「AI-CDβ」が初めて受注したCMが「クロレッツミントタブ」というタブレット製品のリニューアル告知CMでした。クライアントからの課題を受けて「AI-CDβ」がはじき出したクリエイティブディレクションが、

 野生を 歌モノで 都会的なトーンで 浄化を印象付けて 解放を感じさせろ

というもの。

にわかには理解しがたい、と思われるかもしれません。しかしそれでも私たち人間もこのコンセプトをもとに映像化を行い、ここにはじめてAI(人工知能)と人間との協働によるCMが完成したのです。

ちなみにこの「クロレッツミントタブ」のCMでは、別途人間のクリエイティブディレクターによる作品も制作され、視聴者による決選投票が行われたのですが、結果は「AI-CDβ」が僅差で敗れるという結果に。

しかし、この「AI-CDβ」はクリエイティブ業界における大きな一歩だったといえるでしょう。

AIがお笑い芸人に弟子入り!?「AI育成お笑いバトル」とは

TVのイメージ

先ほどご紹介したフジテレビ系の「AI-TV」は、放送開始から約半年で終了となってしまいました。やはり、AI(人工知能)のお笑い業界への進出はハードルは高かったのでしょうか。いえいえ、そんなことはありません。

この「AI-TV」の試みは、着実に「AI×お笑い」のムーヴメントを生み出したのです。それは「AI-TV」の放送終了からさらに半年後、今度はNHKでAI(人工知能)が参加するお笑いTV番組が放送を開始。それが「AI育成お笑いバトル 師匠×弟子」です。

この番組は、AI(人工知能)が人気お笑い芸人たちに弟子入りするという何とも斬新なもので、実際に芸人さんが師匠となって、弟子であるAI(人工知能)のお笑い能力を育成していきます。そして最終的に、それぞれのAI(人工知能)を大喜利で戦わせようというのです。

果たして、AI(人工知能)に笑いのセンスは身についたのでしょうか。

師匠の一人である千原ジュニアさんは、弟子のAI(人工知能)の想像以上の進化に「えげつないで」「メチャクチャおもろなってんねん」と漏らしてしまうほどだったと言います。

例えば、「『はは〜ん、こいつ宇宙人やな』なぜそう思った?」というお題に対して、AI(人工知能)が導き出した答えは、「改札通るときに、読み取り部分へこめかみをピッとあてる」というもの。

なんというクオリティの高さ!プロの芸人さんの回答と言われても疑いようのないほどですよね。

さらには、「写真を見てひと言」のようなお題にも対応できるといいますから、大喜利を知り尽くしたジュニアさんが感心するのも十分わかる気がします。

なぜ!?いま AI(人工知能)がお笑いに参戦するのか

お笑いをするAIのイメージ

このように、お笑いをはじめクリエイティブな分野へのAI(人工知能)の進出がひとつのムーブメントとして確立しつつあるのにはどのような背景があるのでしょうか。

「AI育成お笑いバトル」の放送開始と時を同じくして、TOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」に、大喜利をするAI(人工知能)「大喜利β」が開発者の「株式会社わたし」代表の竹之内大輔さんとともに出演を果たしました。

番組ではさっそく大喜利を披露。「うわっ、このアーティストくせが強い!どんなアーティスト?」というお題に対し、「全員ドラム」と回答、出演者の笑いを誘いました。

この「大喜利β」では、通常の日本語に加え、ギャグなどユーモアな要素を含む日本語を学習させています。この通常の日本語とユーモアを含む日本語の差を、面白要素として回答に反映させているのです。そこに、インターネット上やSNS上にある面白いと評価されている文章や言葉を「面白さ」の判断基準として加えることでより面白い回答を出す精度を高めているというしくみ。

番組内では開発者の竹之内さんが、AI(人工知能)をお笑いにさせようと考えたきっかけに

「人を笑わせるということは人間のコミュニケーションの中でも最も難度の高いもの。その難しいことをAI(人工知能)にチャレンジさせてみたかった」

と語っています。それが開発のモチベーションにつながったのでしょう。

竹ノ内さんも語っているように、お笑いとは「ただ何かを伝えるだけ」では成り立ちません。相手に「面白い」と思ってもらう必要がありますよね。さらには、いくらユーモアのあることであっても、ありきたりな手あかのついた言い回しでは誰も笑いません。

ですから、お笑いには「相手に面白いと思わせる」+「斬新なアイデアを盛り込む」という2つの要素が必要になるのでしょう。

先ほど触れた広告の世界においても同様ですが、クリエイティブな分野ではAI(人工知能)の活用はまだまだハードルが高く、なかなか進んでいないというのが実情です。「そこを何とかしたい」という、開発者や彼らを取り巻く人たちの思いが、AI(人工知能)をお笑いに参加させようというムーブメントにつながっているのではないでしょうか。

こんなところにもお笑い×AI(人工知能)が?「オフトゥンフライングシステム」とは

布団とお笑いのイメージ

最後に一風変わった試みをご紹介しましょう。

ビッグデータの活用、データマーケティングサービスを手掛ける株式会社ブレインパッドでは、ダジャレを心から愛する社員4名がメンバーとなってダジャレ検知マシンを作成しました。

その名も「オフトゥンフライングシステム」。

日本テレビ系列の大喜利番組「フットンダ」をリスペクトしたもので、面白いダジャレを言うと装置に設置された布団が吹っ飛ぶという革新的なシステムとなっています。

この「オフトゥンフライングシステム」には2つのAI(人工知能)を搭載。一つは入力されたワードをダジャレかどうか判別するためのAI(人工知能)「Shareka」、もうひとつはダジャレと判断したワードを面白いかどうか評価するためのAI(人工知能)「Ukeruka」です。

「Ukeruka」では、ディープラーニングのモデルを構築して、ダジャレの評価を行っています。

このように、AI(人工知能)をお笑いに活用しようという動きは、今様々なところで活発化し始めているということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

 

AIとタッグを組む人のイメージ

今回は、AI(人工知能)が今なぜお笑いの世界に進出しようとしているのか、その理由について「AI-TV」などを例に、掘り下げてきました。

徐々にではありますが広がりつつあるこのムーブメントの原動力になっているものを、少しは垣間見ることができたでしょう。

活用が困難とされている、クリエイティブな分野へのAI(人工知能)の活用ですが、「AI-TV」などのTV番組の出現を目の当たりにすると、それも決してもう絵空事ではありません。

皆さんもご存じのとおり、日本のAI(人工知能)研究は世界に比べて大きく出遅れています。ただ、今回のテーマのようなクリエイティブな分野へのAI(人工知能)の活用というのは世界的にもまださほど進んでいないでしょう。ですから日本がここから再びAI(人工知能)の分野で主導権を握るためにも、AI(人工知能)お笑いへの進出というのは大きなチャンスです。

今回ご紹介したような、AI(人工知能)をTVのお笑い番組のような新たなステージでも活躍させたいという、気骨のある日本のAI(人工知能)技術者の方々がこれから増えていくと良いですよね。

コメントをどうぞ

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました