2013年、オックスフォード大学でAI(人工知能)の研究をしているマイケル・A・オズボーン准教授によって、「人間が行う仕事の約半分が機械にとって代わる」と発表がなされました。
そうした背景もあって、日本では「AI(人工知能)に仕事が奪われてしまう!!」そんな不安を煽るような情報が飛び交っていますが、それは取越し苦労でしょう。アメリカをはじめとした海外では、そうした不安の声よりも「人間が創造的なことに費やせる時間が増える!」「単純な作業しなくても良くなる!」と前向きな声が多いようです。
アメリカのガートナーというリサーチ会社によれば、「2020年までにAI(人工知能)が奪う仕事よりもAI(人工知能)が生み出す仕事の方が多くなるだろう」という見方が出ています。ITの発展によって、今後もますます時代の変化が大きくなっていくことは間違いありません。
とはいえ、どんな情報を聞いても、やっぱり自分たちの働き方が将来どうなっていくのか気になるのが人間ですよね。そこで今回は、AI(人工知能)が仕事をどう変えていくのかについて、お伝えしていきます。
AI(人工知能)とは
まず、本題であるAI(人工知能)が今後仕事をどう変えていくかを知る前に、AI(人工知能)がなんなのかを簡単にでも理解しておく必要があるでしょう(※AI(人工知能)なんてもう知ってるよって方は本章は読み飛ばしちゃいましょう)。
AI(人工知能)とは、人の知的な活動(話す、判断する、認識するなど)を自動化する技術やその研究分野の通称です。専門家の間でも統一された定義がなく、あたかも知能を持っているかのように振る舞うものや技術、そうした分野に関わるものを表す概念としてAI(人工知能)と呼んでいます。
AI(人工知能)の中心となる技術に機械学習があります。機械学習とは、簡単に言うと、データからデータに潜む規則やルールを見つけていくコンピュータの仕組みです。AI(人工知能)は、この機械学習という技術を用いて、たくさんのデータから学習し、実用できるレベルへと成長していきます。
AI(人工知能)や機械学習については以下のページで詳しく紹介しています。
AI時代の新しい仕事、AI(人工知能)を教育する仕事「AIトレーナー」が増える
この作業を行う人のことを、AI(人工知能)を教育するトレーナーということで「AIトレーナー」と呼びます。
例えば、熟練の社員でしか判断ができないような目視検査をAI(人工知能)に代替させる場合を考えてみましょう。熟練社員の立場からしたら、「自分の仕事が奪われてしまう、どうしよう・・・」と考えてしまいそうですが、そんな不安とは別に、AIトレーナーとして活躍する新たな道が見えてきそうです。なぜなら、AI(人工知能)が判断できるようになるため(学習するため)の元データについて、これは良品、これは不良品などと判断基準を作る役割として、熟練社員が活躍しそうだからです。
AI(人工知能)に学習材料を与えて教育しているのも、AI(人工知能)の予測や判定の精度を上げていくのも、また人間です。AI(人工知能)がますます仕事に浸透していく社会において、AIトレーナーという仕事が増えてくるのは間違い無いでしょう。
正しい問いを立てながら働く人とAI(人工知能)を管理していく仕事が求められる
データドリブンというのは、企業の意思決定はデータから始めるべし!という考え方です。つまり、従来の勘や経験をもとに意思決定をするのではなく、データを分析して導き出した価値ある知見に基づいた意思決定を重視するという考えです。
何千万人、何億人もの行動履歴から蓄積した大量のデータ。情報通信技術の飛躍的な発展によって、データ収集が促進された。ビッグデータを分析することで、気づかなかった大衆の行動パターンや傾向といった価値ある知見を導き出せる。
データ分析が得意なAI(人工知能)が意思決定をサポートする時代においては、人間はどの部分で価値を生み出し、AI(人工知能)にはどの判断をサポートしてもらうべきか、が問われることが想定されます。そうした状況から、人とAI(人工知能)をどう管理していくかを考えていく役職が求められるでしょう。
「本当に人間がすべき業務なのか?」「AI(人工知能)を使って本当に効果が出るのか?」「そもそも解決すべき課題は何?」と、仲間とAI(人工知能)と協力しながら、こうした正しい問いを投げかける力が今後求められていきそうです。
AI(人工知能)は自ら問いを立てることはできません。解決すべき課題や出すべき成果を設定するのは人間です。解くべき問題が間違っていたり、取り組むべき業務が間違っていれば、成果は出ませんよね。「今、自分にとって本当に大事なことは何か?」と問いを立てることで、仕事も人生も状況が変わるのかもしれません。
新たな技能を身につけるために学び直す時代になる
機械学習の専門家であるスタンフォード大学のアンドリュー・ング教授は、
「今後AI(人工知能)が社会に浸透していくと、今ある仕事の50%は2030年までに無くなる。これからは、社会人も新しいスキルセットを学べる場が必要だ」
と宣言し、ネット上で大学の講義を受講できるシステム(ムークと呼ばれます)を作りました。これはcoursera(コーセラ)と呼ばれている授業プログラムで、MITやスタンフォード大学などの授業を受講可能です。
また、日本では、2018年はリカレント教育元年とも言われました。リカレント教育とは、社会人になった後、改めて就労に活かすため学び直したり就労するサイクルを繰り返すことです。終身雇用制度が崩れた現在では、新たな技術を必要に応じて身につけなければ人生100年時代を生き残れないと言われ、リカレント教育に関する法整備が検討されています。
長寿化が進み、70歳や80歳になっても働き続ける「人生100年時代」が訪れようとしています。60歳で定年して余生を過ごすという人生計画は通用しないものとなりました。これまでよりも自律的な人生設計が求められています。
さらに、神戸大学大学院法学研究科 大内伸哉教授は、
「今後の大きな変化が予想される世界において、特定の職業を想定し、それに必要なスキルを身に付けても、習得したスキルの有効期間はより短くなっていくでしょう。大切なのは、技術の変化に対応できる基礎力で、その根底にあるのは教養です。」
と言っています。
このように、AI(人工知能)が今以上に社会に浸透していくこれからの時代、自分がどれだけ新しい技能を学ぶために投資できるか、時代に合わせて自分を変化させていけるかが、鍵になってくると考えられます。
僕自身はAIエンジニアになりたくて、新卒で入社したデザイン・出版会社を辞めてゼロから転職を図った経験があります。その後色々あって今はこうして文章を書いていますが、、。人生何が起こるかわかりません。
プロジェクト毎に人が集まる新しい企業の形
こうした背景から、従来の企業の存在意義も変化していくことが想定されます。企業は、社員を抱え込んで様々なプロジェクトを進めていく、という従来の姿は徐々に薄れ、プロジェクトをする度に人を募集して終われば解散、のような仕事スタイルになっていくと思われます。今後は個人事業主として働くスタイルの人々が益々増えていきそうです。
まとめ
さて、今回はAI時代に求められる仕事や働き方についてお伝えしてきました。
- AI時代の新しい仕事、AI(人工知能)を教育する仕事「AIトレーナー」が増える
- 正しい問いを立てながら働く人とAI(人工知能)を管理していく仕事が求められる
- 新たな技能を身につけるために学び直す時代になる
- プロジェクト毎に人が集まる新しい企業の形
などがわかりましたよね。
過去、マイクロソフト社のエクセルが普及したら、会計士は不要になると言われた時代がありましたが、エクセルの普及は逆に新たな雇用を生み出しました。AI(人工知能)の普及も同じように、今ではAI(人工知能)を実装する「AIエンジニア」や、データ分析を通じて導き出した知見や洞察を仕事に活かすよう提言・実行していく、「データサイエンティスト」といった新しい職業が生まれてきました。
今後も技術の進歩は加速し、ますます世の中が変わっていくことは間違いありません。
私たちは、何事に対しても「今までがこうだったから将来もこうなるだろう」と想像してしまいがちです。今までは1ずつ変化してきたら、未来も1、2、3、4、5、・・・というようになっていくだろう、というように。しかし、世の中のテクノロジーは指数関数的成長していきます、つまり、1、2、4、8、16、・・・と変化していきます。
10年後のテクノロジーは、10倍ではなく、2の10乗つまり、1024倍パワーアップしていることになるでしょう。人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイルは、21世紀に起こる技術の進歩は、過去200世紀分の進歩に相当するとも言っています。
このように、私たちはすごい時代に生まれてきました!古い価値観や常識は手放し、いつでも軽やかに変化していくことで、楽しく生きていけるといいですよね!
<参考>
・石角 友愛(2018).『いまこそ知りたいAIビジネス』株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン.
・加藤 エルテス 聡志(2017).『機械脳の時代―――データサイエンスは戦略・組織・仕事をどう変えるのか?』ダイヤモンド社.
・AI時代のその先に待つ働き方の未来像とは【前編】
・AI時代のその先に待つ働き方の未来像とは【後編】
・AI(人工知能)は人間の働き方をどのように変えるのか【前編】
・AI(人工知能)は人間の働き方をどのように変えるのか【後編】
・人工知能 (AI) ができる3つのこと – 消える職業と生まれる職業 –
AI(人工知能)って「なにそれ美味しいの?」ってレベルだった僕が、AIエンジニアを目指してステップを踏んだり踏まれたりしている記事を書いてます。よかったら読んでみてください(実話)。
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