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AI時代の新たな課題、私たちのプライバシーは全て人工知能に把握される

AI時代の新たな課題、私たちのプライバシーは全て人工知能に把握される

私たちの日々の生活において、もはやSNSは欠かせない存在です。SNSは便利ですが、日常の出来事を気軽に発信できるため、プライバシーが守られるかどうか心配なところもありますよね。

ところでAI(人工知能)時代の現在、SNSと言えばFacebookを抜きにしては語れません。なんといってもFacebookの2018年(1~12月)売上は6.3兆円で前年4.6兆円の約1.4倍とまさに絶好調!

なお、売上のほぼすべては広告収入によるもので、全世界23億人!の利用者と700万の広告主を抱えるFacebookに代わる広告プラットフォームは今のところ存在しないため、当面はFacebookの一人勝ちが続くものと予想されています

このように現在、SNSの頂点に君臨するFacebookですが、一方でプライバシーに関して、さまざまな問題も指摘されています。

AI(人工知能)時代と言われる現在、SNSにはどういったプライバシーの課題があるのか、Facebookを例にとって、一緒に考えてみましょう。

AI(人工知能)によるユーザー情報の把握が、Facebookの強み

Facebookのイメージ

AI(人工知能)時代と言われる現在において、Facebookの強みはユーザーが登録したプライベートな情報とAI(人工知能)との組み合わせにあります。

ユーザーが登録したプロフィールや日々の書き込み内容(どこに行ったのか、好きな本・映画・音楽・食べ物、最近楽しかったこと、など)、また、何に「いいね」をクリックしたか、などをAI(人工知能)で解析することにより、ユーザーの性別・年齢から性格・趣味・嗜好(しこう)などを予測できます。

ちなみに「いいね」のクリック件数が300件を超えると、AI(人工知能)はユーザー本人よりもユーザーについて深く理解(予測)できるとも言われています!

この予測データを元に、ユーザーに最適な広告を提供できる点がAI(人工知能)時代におけるFacebookの強みです。

Facebookを使えば使うほど、Facebookにはユーザーに関する大量の情報が蓄積されていきます。

つまり、FacebookのAI(人工知能)はユーザーの趣味・嗜好(しこう)といったプライバシー含めたすべての情報を把握してしまう可能性もあり、AI(人工知能)時代とは言え、はたして一つの企業が個人に関するこれだけ多くの情報を所有してもいいのか、といった懸念も指摘されています。

そこで次項では、Facebookに指摘されている問題点として以下の3点についてご紹介します。

1)個人情報の取扱に関するセキュリティ問題
2)顧客選定アルゴリズムの問題
3)社会の分断を進めてしまう危険性

個人情報の取扱に関するセキュリティ問題

個人情報のイメージ

AI(人工知能)時代のSNSの課題1つ目はセキュリティ問題です。ここでは、Facebookにおいて発生したセキュリティ問題を3件ご紹介します。

ケンブリッジ・アナリティカ事件
2015年、Facebookで利用できる性格診断アプリの開発者が、もともと学術目的に利用予定であった、アプリ診断により得られた利用者27万人とその友達も含めた5千万人の個人情報を、イギリスの選挙コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカに販売してしまった、という事件です。
ケンブリッジ・アナリティカは、ソーシャルメディアなどの行動履歴データの分析を得意としており、2016年の米大統領選および英国のEU脱退の国民投票に、購入した個人情報を活用したのではないか、との疑いも指摘されています。

5千万人の個人情報流出の危機
2017年7月に提供開始したFacebookの機能に含まれるソフトウェア欠陥により、個人情報流出の危険にさらされていたことが2018年9月に判明しました(同月にすでに対処済)。
具体的には、個人情報の流出につながる「デジタルの鍵」5千万人分が盗まれてしまったため、この「デジタルの鍵」を使用した本人なりすましにより、約1年間に渡って個人情報を盗むことが可能な状況にありました

数億人分のパスワードを暗号化せずに保管
2019年3月、Facebookは数億人分のパスワードを暗号化せずに平文のまま保管していたことを認めました。なお、平文のまま保管していたのは2012年頃からだと言われており、その間パスワードをFacebookの従業員2万人以上が参照できる状況にありました

顧客選定アルゴリズムの問題

facebookのロゴイメージ

AI(人工知能)時代のSNSの課題2つ目は、顧客選定におけるAI(人工知能)そのものが持っている問題です。

先にFacebookの強みであるターゲッティング広告(ユーザーの嗜好を予測して最適な広告を提供)についてご紹介しましたが、このターゲッティング広告における顧客選定アルゴリズムには性別・年齢などの観点で「偏り」があるとの指摘があります

例えば、求職・住宅販売・銀行ローンなどの広告において女性や高齢者を除外する傾向がある、スーパーマーケットの店員募集広告は女性に偏る、逆にタクシーの運転手では男性に偏る、などの傾向があります。

これは、AI(人工知能)が機械学習により現実社会に存在する「偏り」を増幅してしまう特性によるものと理解されています

Facebookはこの問題に対しては「一部の広告ではアルゴリズムによる最適化を完全にやめなければ解決できないだろう」とも述べており、ユーザーに最適な広告を提供してくれるAI(人工知能)が、現実社会の状況を学習すると「偏り」を生んでしまうとは、AI(人工知能)時代における何とも皮肉な状況になっています。

社会の分断を進めてしまう危険性

社会分断のイメージ

AI(人工知能)時代のSNSの最後の課題は、SNSが社会に所属する私たちを、分断する機能を持ってしまったという問題です。

2017年5月、子どもを人身売買する組織の暗躍に関する、ウソの投稿動画を真実と信じ込み激怒した住民が、無罪の男性6人を集団暴行のうえ殺害してしまうという事件がインドで発生しました。(注:メッセージアプリWhatsApp [2014年にFacebookが買収]への投稿動画)

私たちには、SNSへのデマ投稿動画や悪意の書き込みにより駆り立てられてしまう性質があります。これらは、数分程度の動画あるいはたった数行の文章であるにも関わらず、私たちの考えや行動に非常に大きな影響をもたらします。たとえば私たちはSNSで何かを感じた場合には思わずクリックしますよね。素直に感動した、応援したい場合もあるでしょう。

しかしながら、怒りや対立を感じた場合のクリックの方が多いのが現状で、クリックがヒット率向上とランキング向上を生み、それがさらにクリックを呼ぶという循環により怒りや対立が拡大し、私たちの分断を進めてしまいます。

このようにSNSは、悪意ある人間が多くの人々を操作して、自分のやりたいように行動させる、あるいは私たちの社会を分断させることができる「力」を持っています

Facebookアプリのイメージ

以上、今回はAI(人工知能)時代と言われる現在、SNSにはどういった課題があるのか一緒に考えてきました。

1)個人情報の取扱に関するセキュリティ問題

  • ケンブリッジ・アナリティカ事件:性格診断により得られた個人情報を販売
  • 5千万人の個人情報流出の危機:ソフトウェア欠陥により個人情報を盗むことが可能な状況に
  • 数億人分のパスワードを暗号化せずに保管:Facebook従業員2万人以上が参照可能な状況に

2)顧客選定アルゴリズムの問題
AI(人工知能)が機械学習により現実社会に存在する「偏り」を増幅してしまいます

3)社会の分断を進めてしまう危険性
SNSは悪意ある人間が、多くの人々を操作して自分のやりたいように行動させる、あるいは私たちの社会を分断させることができる「力」を持っています

ところでFacebookがこれだけ巨大化ができた最も大きな要因は、創立者でCEOでもあるマーク・ザッカーバーグの情熱と言われています。

彼はお金には興味のない人間で、Facebookに対しさまざまな買い手が繰り返す巨額の申し出を全てを拒否し「ざまざな情報へのアクセスを拡大して情報共有を広げることにより、世界をもっとオープンな場所にできる」「もっとオープンで透明な世界では、人々が社会的規範を尊重し、責任ある行動をするようになる」という、彼の純粋な目標実現に向けてFacebookの開発を進めて来ました。

彼の考えに対しては、理想的すぎる、とプライバシー問題の観点から問題指摘をする人も多く、実際に今回ご紹介した3件以外にもセキュリティ問題が発生しています。

一方で、設立当初よりザッカーバーグはFacebook成功のためにはユーザーのプライバシー保護が欠かせないことも理解しており、プライバシー機能の改善を繰り返してきました。

でも残念ながら、これらの機能がユーザーにあまり知られていないこと、加えて、悪意ある利用者による不正利用やFacebook側自身の問題などもあり今まで数多くのセキュリティ問題が発生しています。

私たちはこういった現状を把握し、SNSを使うときにはプライバシー機能を必ず利用するなど、できるところからでも「自衛する」という意識を持つ必要があります。

そしていつの日か、ザッカーバーグが理想に掲げたような、安全なSNSが実現されることを期待したいですよね!

 

参照元
スコット・ギャロウェイ「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」[東洋経済新聞社](クリック件数が300件を超えるとユーザー本人よりもユーザーについて深く理解できる、そして社会は分断される))
デビッド・カークパトリック著「フェイスブック 若き天才の野望」[日経BP社](ザッカーバーグの想いについて)

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