「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という言葉、最近よく耳にしますよね。ひょっとしたら「何となく聞いたことあるかも」くらいの方のほうが多いかもしれません。
DXの事例はいろいろありますが、その方法は業種によってさまざま。でも、どれも時代の先端を目指しているだけあってその内容は興味深いものばかりです。
5年後、10年後、私たちの生活がどんなふうに変わっていくのか、まるで未来を垣間見るようなワクワク感。DXの事例は、そんなあなたの知的好奇心を満たしてくれる新しいアイデアがいっぱいです。
でもいざ「DX(デジタル・トランスフォーメーション)の意味は?」と聞かれてすんなり答えられる方、案外少ないのでは。それに「今DXに取り組まないと大変なことになる」などと危機感をあおるような報道もよく見かけます。本当のところはどうなんでしょうか。
ここでは「DXの意味」と「今なぜ重要視されているか」、あと「DXの事例」も交えてご紹介します。
では早速みていきましょう。
そもそもDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは
日本では2018年に政府がDXについてのレポートや推進ガイドラインを発表してから、認知度が一気にアップ。DXの対象は「企業」として、多くの方に知られるようになりました。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)によって企業が具体的に変革を目指すポイントは次のとおり。
- 製品やサービス
- ビジネスモデル
- 業務のしくみ
- 組織
- 企業文化・風土
これらを改革することによって、企業は競争で優位に立ち、収益が安定。そしてユーザーに新しい価値を生み出し、これまでになかった便利さを提供します。
私たちの生活の中で一番身近なDXの成功事例はAmazonでしょう。1994年に小さなオンライン書店としてサービスを開始してから20年もたたないうちに、世界の主要IT企業にまで成長しました。
しかし、このような世界を代表するIT企業は今の日本では見当たりません。日本が徐々に世界から取り残されつつある現状は、おそらく皆うすうす感じているでしょう。
政府がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に乗り出してきたのもこのような理由から。その内容を次でご説明します。
なぜDX(デジタル・トランスフォーメーション)なのか
そもそも「デジタル化」と言われてもう随分たつのに、どうして今さらDX(デジタル・トランスフォーメーション)なのでしょうか?
今DXが大きくクローズアップされている理由・・・その答えは2018年に経済産業省が発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」を見ると明らかに。
レポートのテーマには、いきなり「2025年の崖」というインパクトのある言葉が登場しています。
そしてこの損失は「レガシーシステム」が原因、とレポートにはあります。
レポートでは、このレガシーシステムの保全やトラブルが原因で、現在も年4兆円の損失を出し続けているというのです。
確かに企業には古いシステムがたくさん残っているし、それによるトラブルも頻発しているはず。システムサポートの終了も次々と押し寄せてくるから、このままでは不安ですよね。
「年12兆円の損失」から「130兆円超の押上げ」とは・・・この差を見ると「崖」という言葉が気を引きたいだけの大げさな表現ではないことがわかります。
た、確かに、これは崖かも
今すぐDXに取り組むかどうかで、日本の将来は想像以上に大きく変わってきそうです。実は、日本でも一足早くこのDXに取り組み、成果を出している企業があります。その成功事例を業種別にみていきましょう。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)成功事例:医療介護
服薬の履歴を見て医療関係者が指導に役立てることもできます。
毎日同じ薬を飲んでいると、「今日はお薬飲んだかな?」と忘れてしまうことありますよね。高齢者だとなおさら。
おじいちゃん、おばあちゃんにぜひ使ってほしい!
このシステム、今は主に薬の飲み忘れによるリスクの大きい脳梗塞患者に使用されています。使用方法はまだ限定的ですが、今後データが積みあがってくるとそれを元に新たな知見が生まれてくるでしょう。
そして将来、個人の医療データが各医療機関で共有されるようになったら、もっと活用の幅が広がりそうです。
次は金融業界のDX成功事例をご紹介。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)成功事例:金融
単語の重要度や主語述語まで考えて分析しているんですって
システム導入前は、お客様の声を人が1件ずつ手作業で仕分けし、それぞれの担当部署が対応してきました。
今まで見えなかった改善ポイントが可視化されるようになるので、顧客の満足度が高まること間違いなし。
また、各部署が個別に対応して終わりではなく、データを総合分析すると新しいサービスを生み出すヒントにもなるでしょう。
次は飲食業界のDX成功事例。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)成功事例:飲食業
DXの事例3例目は、回転ずしのスシロー。スシローのITによる効率化はもう有名ですよね。
そして今。最新のテクノロジーを駆使した新たなサービスを次々と導入しています。
- 自動受付案内システム:チェックインから席まで無人で案内
- 自動案内機:待ち時間がある場合、順番がきたら音声とモニターで席まで無人で案内
- テーブルオートウェイター:オーダー品の取り間違いを防ぐ専用レーン
- 自動皿会計システム:皿を画像認識し、皿の数から価格を計測。
- セルフレジ:受付時に渡されるQRコードで客が画面をタッチして清算
- 持ち帰り用自動土産ロッカー:スマホで事前に注文し、時間がきたら店舗のロッカーにQRコードをかざすと中の商品が受け取れる
- キッチン内オートウェイター:厨房内にもレーンを設けてスタッフの移動を軽減
スシローでは、これらさまざまなサービスを各店舗のスタッフ状況にあわせて、フルスペックで導入したり部分的に導入したりして、柔軟に対応。スシローがDXに成功した秘訣はここにある、と言っても過言ではないでしょう。
利用客の待ち時間を徹底的に減らすことによる顧客満足度の向上と、従業員の負担軽減、そして商品レベルの向上により、スシローは競合を圧倒的に引き離して独走状態を継続しています。
次は観光業界のDX成功事例。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)成功事例:観光業
DXの事例最後はJTBが提供する訪日外国人向けの旅行ガイドアプリ「JAPAN Trip Navigator」。英語と中国語に対応しており、ユーザーの興味関心に応じて最適の観光スポットを案内。
その特徴は次のとおり。
- 詳細な経路検索で最適なルートを提示。タクシーの配車も可能
- 宿泊予約機能、その地域のレジャー施設やイベントチケットの購入も可能
- JTBが厳選した観光情報約10,000件は47都道府県を網羅、ここからモデルプランを作成
- AIのチャット機能で、困りごとがすべて解決
- 画像翻訳機能
「JAPAN Trip Navigator」アプリを利用することによって旅行の段取りがすべてスマホ1台で完結。現地では時間を無駄にせず快適な旅行が楽しめます。ダウンロード数は100万を超える人気アプリに成長。(2019年11月時点)
日本でもルート案内や宿泊予約など、それぞれの目的に特化したアプリはありますが、1つのアプリで全部できてしまうのはありがたいですよね。
海外旅行する時、私もこんなアプリがあったら使いたいな
では最後に、DX(デジタル・トランスフォーメーション)のこれからについて考えてみましょう。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)のこれから
もし、日本が今国をあげてこの問題に取り組み、理想的なDX(デジタル・トランスフォーメーション)が実現するとどんな未来が待っているのでしょうか。
- 朝は自動運転の車に乗って通勤。車同士がデータ送信しながら走行するので渋滞はありません。
- 車内ではバーチャル会議、商品は3Dで確認することができます。
- 職場に着くと人とロボットが行き交い、海外で起こったトラブルには遠隔操作で対応します。
- 仕事帰りにスーパーへ行くと、自分専用のおすすめメニュー、自分だけの価格が提示され、食材が適量組み合わされてパッキング。レジはなくそのまま持ち帰って決済完了です。
- 体調が気になったら、自宅でオンライン診察。薬はすぐにドローンが届けてくれます。
このような生活、今すぐ社会全体でDXに取り組めば、実現は意外と近いかも。なんだかワクワクしますよね。
しかし、今投資を躊躇していると企業の経営状態は数年後目も当てられない状況に。政府が警告する「2025年の崖」、この悪い方のシナリオが実現することになります。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)は日本の未来を左右する最重要課題だと言えるでしょう。
今回はDXについて、その意味と成功事例をご紹介しました。DXは業種によってその方法はさまざまですが、目標とする「あらゆる面で生活が良い方向に変化する」という点においては同じです。
DXの成功事例はどれも、トップが自ら指揮をとって変革をリードしています。ビジネスモデルから企業文化まで、根底から改革に乗り出すのですから当然と言えば当然ですよね。
逆にDXの失敗事例によく見られるのは、社長が部下に「DXに取り組むように」などと丸投げすること。それではただの「デジタル化」にとどまり、「企業を根底から変革」するには及びません。やはりトップが先頭に立って取り組むことが何より大切です。
目先の売り上げも大切ですが、視点をほんの少し未来に向けて行動することによって、結果は大きく違ってきます。何もせず「2025年の崖」を転がり落ちるのを待つのか、方向転換して高みを目指して上り続けるのか・・・企業は今、その大きな岐路に立っていると言えるでしょう。
日本全体が順調に成長していけるように、ユーザーである私たちができることはITリテラシーを高めておくこと。目新しいデジタル関係のサービスを見かけたら、しり込みせずに挑戦してみるところから始めましょう。きっと新しい未来が見えてくるはずです。