SFの小説や映画では、さまざまなロボットが人間の言葉を話し、また人間とコミュニケーションを取ることができます。なかにはスターウォーズのC-3POのような、人間くさいやり取りやユーモアを見せるロボットもいますよね。
現実でもロボットの研究は長い間続けられており、すでに作業用ロボットが工場などで活躍しています。そして現在、AI(人工知能)の発達によって、ロボットに人間のようなやりとりをさせる研究も進んでいるのです。
自分のすぐそばに、人間と同じようなコミュニケーションが取れるロボットがいるなんて世界が、もうすぐ現実のものになるかもしれません。でも人間のようなロボットは、一体どうやって作るのでしょうか。
そこで今回は、ロボットを人間に近づける方法や、実際に行われてきた成功事例についてお伝えしていきましょう。
ロボットを人間に近づける方法
実はロボットを人間に近づけようとする試みは、すでにコンピュータによるカスタマーサポートや受付ロボットなどで行われています。どれもとても高性能なものがそろっていますが、まずはこれらが本当に人間に近づいているのか考えてみましょう。
総合コンサルタント企業であるアクセンチュアが世界26か国で行なったアンケート調査に、とても興味深い内容のものがあります。それは「人間のアドバイザーではなく、コンピュータのアプリケーションとやり取りするメリット」というもの。そのなかでは「24時間365日対応できる」「対応が素早い」「サービスの提供が早い」といった、ロボットやコンピュータならではのメリットが並んでいます。
しかしその一方で「偏見が少ない」「コミュニケーションが人間よりも丁寧である」という声が6割に達したのです。もはやコミュニケーション能力に関しては、機械のほうが人間よりもすぐれているといえるのかもしれません。
やはりロボットといえば、正義のために戦う鉄腕のロボットや、やたら人間くさい猫型ロボットのようなものを思い浮かべるのではないでしょうか。優秀なのはもちろんのことですが、それ以上に人間と同じような感情をもつロボットたちです。
つまりロボットを人間に近づけるために必要なのは人間の「感情」であり、それを再現できるようになることが必要なようです。そして実際にロボットに人間のような感情を与える研究が、すでに行われています。
ロボットが感情を数値化する
ロボットにデータを学習させるためには、そのデータを数値化する必要があります。しかし計算式や法則ならともかく、感情なんてあいまいなものを数値化するなんていわれても、いまひとつピンときませんよね。
しかし感情を数値化する技術は、すでに実現しています。マイクロソフトの「エモーションAPI」がそのひとつで、人間の顔を撮影してアップロードすると、その写真に写っている顔の表情を数値化してくれるというものです。
- 怒り
- 軽蔑
- 嫌悪
- 恐れ
- 喜び
- 穏やかさ
- 悲しみ
- 驚き
「エモーションAPI」では、人間の感情を上記のような8種類の項目に分類。アップロードされた写真の顔から、どの感情にあてはまるかを自動的に分析して数値化するというのです。
※同じような感情認識を行っているアプリなどを紹介している記事はこちら
もちろん「喜びの入った驚き」「怒りと軽蔑から嫌悪している」といった、複数の感情が入り混じった複雑なものも、数値化することによって読み取ることができます。
感情をロボットに表現させる
感情を読み取って分析する段階からさらにもう一歩進んで、ロボットに人間の感情を表現させるという取り組みも進められています。
株式会社エーアイが開発した音声合成エンジン「AITalk」は、関西弁を含む17人、36言語ものバリエーションがあり、さらにそのなかの数名は「喜び」「怒り」「悲しみ」といった感情をつけることが可能です。
また産業用ロボットを開発するリシンク・ロボティクス(現在は閉鎖)の協働ロボット「バクスター」は、ロボットの頭部にあたる部分がディスプレイとなっており、そこに表情を映し出すことができます。7種類の感情を使った49通りの表情が用意されており、現在の状況を知らせるという仕組みでした。
MITメディアラボが開発した教育用ロボット「Tega」はさらに驚きの機能をもっています。もはやなんの生き物なのかわからない見た目なのですが、目の前の子どもの感情に合わせて、いろいろな反応をするというのです。
- 学習がつまづいた子どもに対し、必要なアドバイスをする
- 子どもが飽きたりイラついたりしたら、しばらく子どもと遊んであげる
- 子どもが興奮したら一緒に興奮し、気が散ったら同じように気が散ったような行動をとる
相手の感情を読み取って理解し、それに合わせてロボットも人間と同じような感情を表現する。そんなことが現実にできるようになっているのです。
ロボットに人格を与える
「子は親の背中を見て育つ」といわれるように、子どもの人格は親など教育をする人間に大きく影響を受けます。そしてロボットに人格を与えようとするときも、ロボットに教育をする人物の影響を大きく受けるようです。
マイクロソフトの音声アシスタント「コルタナ」は、ユーザーが質問したことに対して音声で答えてくれるシステム。しかしただ機械的に答えるだけでなく、「人間に近づきたい」といったり、「電話にでんわ」なんて寒いダジャレをいったり、妙に人間くさい一面を見せたりします。
コルタナのこのような人格は脚本家ジョナサン・フォスターをはじめ、小説家や詩人、童話作家たちによって作りあげられたもの。どんな質問にどのような答えをするか、というこまかいところまで議論したそうです。
それ以外にもIntelligent Digital Avatars社によって開発された「SophieCare」というバーチャルナースがあります。こちらも脚本家によって「ソフィー」という人格を作りあげ、患者とのコミュニケーションを円滑に進めようという試みがされました。
ソフィーに人格を与える際、ソフィーの生い立ちまでこまかく設定されており、患者の様子を会話から把握したり、薬をきちんと飲むよう促すといったデリケートなやり取りに役立てているのです。
※AI(人工知能)が人格を持ったときの対応方法はこちらを見てみましょう。
さて、ロボットを人間に近づける方法や、実際に行われてきた成功事例についてお伝えしてきました。
- ロボットを人間に近づけるために必要なことは、ロボットに感情を与えることと人格を形成させることである
- マイクロソフトの「エモーションAPI」は、人間の顔を撮影してアップロードすることで、8項目にわたる感情のうちどれが含まれているかを数値化できる
- ロボットに感情を表現させる試みとしては、音声合成エンジン「AITalk」や協働ロボット「バクスター」、さらに子どもの感情に合わせて行動を自動で判断する「Tega」といったものがある
- マイクロソフトの「コルタナ」などのような、コンピュータに人格を形成する試みも行われているが、そのために脚本家や詩人、童話作家などさまざまな人たちが参加している
現在でも受付ロボットや電話の自動対応システム、ネットショップのカスタマーサポートなど、人間とコミュニケーションを取ることができるロボットやコンピュータがすでに活躍を始めています。
しかし本当の意味でロボットが人間に近づくためには、やはり人間くささがほしいところですよね。ロボットが人格を持ち、人間に対して感情を交えてコミュニケーションを取る、そんなロボットの研究がすでに行われているのです。
ロボットがいつもそばにいる身近な存在となって愚痴をいったり悩みを打ち明けたり、あるいはロボットに対して恋をしてしまう、そんな世界がすぐにやってくるかもしれません。なんだかワクワクしますよね。
参考元
「ロボットの人間らしさ」を追求する
AITalkとは
開発元が廃業した研究用ロボット「バクスター」、その偉大なる功績
感情を読むAI?! MITの “Tega” が実現する(かもしれない)パーソナライズの革命とは
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