AI(人工知能)とファイナンス

AIに仮想通貨の運用を任せるとき、押さえておきたい注意点4つ

仮想通貨のイメージ

ここ数年 “ディープラーニング”という言葉を雑誌、インターネット、テレビなどで良く目にしますよね。“ディープラーニング”はAI(人工知能)の一手法ですが、これまで長年研究されてきたAI(人工知能)分野において画期的な成果を出し、注目を集めています。

ディープラーニングを用いれば、画像の中に何が映っているのか自動で認識したり、チャットやLINEなどの製品問合せに自動で答えたり、これまで人間が行ってきた作業を自動化することができます。また、囲碁やオセロなどで人間を圧倒するなど、特定の分野では人間を超える能力を発揮しているAI(人工知能)もあります。

このように、様々な分野で人間以上の能力を発揮しているAI(人工知能)なので、当然仮想通貨の投資にも応用できるのではないかと期待できるでしょう。とはいえ、AI(人工知能)は万能ではなく少なからずデメリットもあります。そこで今回は、仮想通貨の運用にAI(人工知能)を利用する際に気を付けなければならない点についてお伝えします。

注意点1:学習データ不足による予測精度の不安

データのイメージ

優れたAI(人工知能)を作るためには、膨大な量の過去のデータを機械的に学習させて予測モデルを作ることが必要です。

しかし、一番古い仮想通貨であるビットコインが本格的に普及したのが2016年頃なので、ビットコインですら約3年分のデータしかない状況。

ですが、投資の世界で高精度な予測モデルを生成するためには、最低でも20年以上のデータが必要と考えられています。

たった3年分のデータだけを学習したAI(人工知能)が高い予測精度を発揮するのは、難しいでしょう。

AI(人工知能)が活躍している分野はこれまで十分な歴史があって、大量のデータを学習できる環境のある分野ばかり。

ですから仮想通貨のように新しい分野で過去のデータが少ししか存在しない場合には、優れたAI(人工知能)を期待するのは難しいのです。このままAI(人工知能)に運用を任せたとしても、予測が外れてばかりでは当然資産を失ってしまい困るでしょう。

仮想通貨の運用は、自分の考えに基づいて運用した結果資産を失うならある程度納得できますが、AI(人工知能)に任せて資産を失った時のことを考えたら、どうにもやりきれない気持ちになりますよね。

将来的に仮想通貨が普及し、数十年の歴史が出来たころには、AI(人工知能)による運用もリスクは少ないかもしれませんが、現時点でのAI(人工知能)による運用は、大きなリスクがあるかもしれません。

注意点2:自動売買による例外時の損失リスク

グラフのイメージ

ところで、AI(人工知能)を利用した自動売買と聞くと様々なメリットがあると思ってしまいますよね。

AI(人工知能)だと買い時も売り時も自動で決めて決済してくれるので、利用者は何も考えなくて楽。また、一日に何回もアプリを開いて売買を行ったり、チャートを気にする必要もなくなり、仮想通貨取引にかける時間もほとんど必要なくなるでしょう。

このような取引を行っている人は、いつもチャートが気になってしまうため精神的にも落ち着かないですから。

これらの問題を解決してくれるのが自動売買です。しかし自動売買はいいことばかりに見えてしまいますが、残念ながらそんなことはなくリスクもあるんです。

自動売買のリスクは、不意の出来事による一時的なチャート変化に弱いこと。

例えば、ある仮想通貨取引所がハッキングされ、コインが流出したというニュースが流れた場合、何が起こるでしょうか。それはパニック売りと呼ばれる現象で、このようなニュースが出た直後にチャートが暴落することになります。その後、仮に流出したコインが返却されたり、あるいは、ハッキング犯人が捕まった場合には、その安心感から今度は一気に暴騰することになるでしょう。

AI(人工知能)は、過去のデータだけを学習して予測を行うため、このような場合に値下がりが一時的であることを判断できません。

人間の判断であれば、「これは一時的な値下がりなので売らずに保持しておこう」と考えますが、

AI(人工知能)はこの判断が出来ず問答無用で決済してしまうため、結果的に大きな損失に繋がってしまう場合があります。

このように、AI(人工知能)による自動売買は簡単で手間いらずであるという反面、不意の出来事で損失を被ってしまうリスクもあるため、気を付けて利用しなくてはなりません。

注意点3:予測傾向が学習データに依存

データのイメージ

注意点1でAI(人工知能)で予測モデルを作成するためには大量の学習データが必要になることは説明しましたが、優れた予測モデルを作るためには学習データの質も関係してきます。

学習データの質とは、どれだけ網羅的なデータを含んでいるか、ということ。

例えば、顔認識を行うAI(人工知能)モデルを作成するためには、大量の顔画像を機械的に学習することになります。この際、正面向きの顔だけを学習した場合、横を向いた顔を認識することが出来ません。そのため、横向きの顔を認識するために横顔を学習データに追加します。この時、正面向きの顔に対して横顔の数が増えてしまうと、今度は正面顔の認識性能が下がってしまうでしょう。

これは、正面顔と横顔の認識性能がそれぞれの学習データの数に依存しているということ。一般的にAI(人工知能)は、与えられた学習データに忠実に学習を行うため、学習データが偏ってしまうと、作成されるモデルも偏った性能になってしまいます。

このため、性能の良いAI(人工知能)モデルを生成するためには、偏りなく様々な状況を含むバランスの良いデータが必要になります。

仮想通貨の場合でみてみると、

例えば学習したデータが世の中的に好景気の時期だけのものであった場合、不景気の時には予測性能が期待できません。
また、ビットコインでいうと、2016年までの緩やかな上昇時期のデータだけを学習したモデルでは、2017~2018年のような暴騰、暴落を繰り返すチャートを精度高く予想することは難しいと言えます。

AI(人工知能)を利用する場合には、その学習データが大よそいつからいつのものを利用しているのか、をなるべく意識してから利用する必要があるでしょう。

注意点4:AI(人工知能)プログラムの不具合

AIのイメージ

4つ目の注意点は、非常に稀なことですが、いくらAI(人工知能)のプログラムにも不具合が発生することがあるという点です。

プログラムの不具合により囲碁AI(人工知能)が負けたニュースを見たことはありますか。囲碁の対局には様々な局面があり、AI(人工知能)は多種多様の局面データを学習してモデルを作成するのですが、たまたまとある局面だけは学習されておらず、AI(人工知能)プログラムが混乱する状況に陥ってしまったのが原因と言われています。

例えば仮想通貨でも、これまで学習したことのないパターンのチャートになった場合に、AI(人工知能)プログラムが混乱して勝手に損切をしたり、通常ではありえない買い注文を入れてしまうリスクも考えられますよね。

AI(人工知能)の不具合は表向きは分からないため、このようなことが起こったら不運としか言いようがありません。

 

ビットコインのイメージ

今回は、AI(人工知能)による仮想通貨の運用について、メリットの他、注意しなければならない下記4点についてお伝えしてきました。

  • 学習データ不足による予測精度の不安
  • 自動売買による例外時の損失リスク
  • 予測傾向が学習データに依存する懸念
  • AI(人工知能)プログラムの不具合によるリスク

AI(人工知能)に運用を任せることで、手間も時間もかからないのは大きなメリットですが、まだまだ歴史の浅い仮想通貨のため、十分な学習データがないことによる予測精度の懸念があることが分かりました。他にも自動的に売買されてしまうリスクやAI(人工知能)プログラムの不具合などがあるため、不意に資産を失ってしまう可能性もあります。

これからAI(人工知能)による仮想通貨の運用を考えている方は、是非このようなリスクも頭に入れておきたいですよね。しかし、AI(人工知能)については発展途上のため、十分な学習データがなくても高精度に予測できるアルゴリズムが発明される可能性もあります。AI(人口知能)の今後の動向は引き続き注目していきましょう。

コメントをどうぞ

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました