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量子コンピュータ×人工知能(AI)で変わる私たちの日常とは

量子コンピュータ×人工知能(AI)で変わる私たちの日常とは

最近、「量子コンピュータ」という言葉を耳にする機会が増えてきましたよね。また同時に、量子コンピュータと人工知能(AI)との組み合わせで「ものすごい技術が生まれる」とも噂されています。普段、ITの世界にどっぷり浸かっていない方の中には、量子コンピュータについて「何やらすごい技術で作ったコンピュータかな?」とは思っていても、実際に量子コンピュータがどう凄いのかピンと来ない人もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は量子コンピュータの専門家であっても、一言で説明するのは難しいそうです。この記事では、この「何やらすごい技術」と人工知能(AI)が結びつくと私たちの日常がどう変わるのか、どんな未来が待っているのか、その可能性についてお伝えします。

そもそも量子コンピュータとは

そもそも量子コンピュータとは

我々が普段使っているPCやスマートフォンでは、機械の中で計算するために「ビット」という単位を使っているのはご存知の方も多いでしょう。ビットは一つの単位で「0か1のいずれか」の状態しか保持できないのですが、量子コンピュータでは「0であり、かつ1である」という「重ね合わせの状態」の表現が可能になる「量子ビット」と呼ばれる単位を持つことによって、より多くの状態を同時に保つことが可能になりました。

この量子ビットによって並列に計算処理を行えるようになり、従来のコンピュータよりも計算速度が早くなる・これまで解くことができなかった問題を解くことができるようになることが期待されています。…まあ、難しく考えずに、とにかく「色んなことができそうなコンピューター」と考えてください。

ただ、そんな量子コンピュータにも弱点があります。

それは、計算でノイズやエラーが出やすいこと。
そのせいで、「本当に量子コンピュータは従来のコンピュータより複雑な問題が解けるようになるのか?」と学会で色々な議論を呼んでいましたが、先日、Googleが「近い将来実現する」と発表してから、現実感がいよいよ高まってきました。Googleによると、同社が研究開発している量子プロセッサによって、量子コンピュータの弱点であるノイズやエラーをかなり削減できたそうです。そんな中、量子コンピュータは今、様々な分野の研究者から熱い注目を集めています。

量子コンピュータ × 人工知能(AI)

そんな風に今注目されている量子コンピュータですが、商用では以下の分野に利用できると期待されています。

・シミュレーション … あれこれ条件を仮定して結果を予測したりするために使われます。
・最適化問題 … 身近な例でいうと、最適な経路を教えてくれるGoogleマップや乗り換え検索のアプリなどですでに使用されています。「目的地まで一番短い距離や早い時間で到達できる経路を検索する」=「最適な経路を検索する」というわけです。
・サンプリング … 統計に使われます。

これらの分野は人工知能(AI)の研究分野でもあります。人工知能(AI)の研究では学習に長く時間がかかることが問題の一つとされていますが、高速の計算処理を可能とする量子コンピュータが実現することによって劇的な進歩をもたらしてくれることでしょう。

では、これが具体的に私たちの生活にどう影響するのでしょうか。

質の良い商品が増える

質の良い商品が増える

服であれば布、車であれば金属など、普段私たちは色々な材質でできた商品に囲まれていますよね。科学者はこれまで新しい材質を開発するために、物質と物質の組み合わせや化学反応を試験管の中で試しながら作るということをやってきたわけですが、量子コンピューターが得意とするシミュレーション技術によって、膨大な数の物質の組み合わせや化学反応のモデリングを短時間で予測することができれば、これまでに存在しなかった新しい材質を早く開発できるといわれています。

良い材質を造り出すことができれば、私たちが今使っているモノの素材が良くなるだけではなく、画期的な商品が手に入るようになるかもしれません。服や靴の生地がよくなって、より汚れにくい服や擦り減らない靴なんてものもできるでしょうし、電化製品にもっと良い素材を使うことで壊れにくくなるでしょう。

また、今話題の3Dプリンティング技術にも貢献してくれることでしょう。3Dプリンティングで使用できる材質が、量子コンピュータと人工知能(AI)によってもっと開発されて、さらに3Dプリンティングの技術も今より格段に進歩すれば、家で気軽に欲しいものをいろいろ作ることができるようになりますよね。

健康で長生きに

新薬の開発のために行われる化学反応のモデリングや化学物質の解析には、従来型の研究開発では長い時間と莫大な費用がかかりますが、量子コンピュータによるシミュレーションでこれを短時間で行うことができれば、新薬の開発が進むといわれています。末期がんやHIVやアルツハイマー病のように、今は治療が難しいとされている難病であっても、量子コンピュータと人工知能(AI)によって特効薬が見つかるかもしれません。

また、現在すでに病気の診断に人工知能(AI)の技術が使われていますが、量子コンピュータとのコラボでより正確な診断ができるようになるでしょう。ひょっとしたら、不老長寿も可能な時代がやってくるかもしれませんよ。

おいしいものが増える

おいしいものが増える

量子コンピュータが得意とするシミュレーションや最適化の技術で、様々な応用が期待されていますが、農業もその一つです。量子コンピュータによって、気象状況や土壌の状態を今よりもっと正確に予測できれば、作物の種をいつ、どのように、どこに植えたらおいしい作物ができるのか把握できるようになりますし、センサーの技術が進歩することで、突然の気象状況の変化も今よりもっと正確に早い段階で予測することも可能に。冷害や風害などによる作物の被害を防ぐことができれば、生産コストも最小限に抑えることができるでしょう。また、量子コンピュータのシミュレーション技術によって、ものすごくおいしい新種の野菜や果物が生み出されるかもしれません。

電気代が安くなる?

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの普及を望む声があるなか、再生可能エネルギーの普及を妨げる一因が、「電力需要と供給の予測が難しい」ということでした。気象状況の急激な変化によって、太陽光の量や風量が左右されてしまうからです。しかし、量子コンピュータと人工知能(AI)のコラボが実現して、気象予測や各家庭の需要予測をより緻密に短時間に立てることができれば、電力供給のムダがなくなります。

また、太陽光電池に使われる材質が改良されることで、電池の持ち時間がアップし、各家庭や企業でオール太陽光で電力を賄えるようになるかもしれません。さらに太陽光パネルの材質が改良されれば、パネルの寿命も大幅に改善できます。そうなればいつか、電気代も安くなって、地球環境にも優しいエネルギーを皆が使えるようになるかもしれませんよね。

いろんなムダが減る

電力だけでなく、様々な製造物の需要と供給がより早く正確に予測できるならば、必要ないモノを作って売るムダがなくなるでしょう。たとえば、ネットショッピングで表示される値段も、動的に変化するような仕組みができるといわれています。そうなれば、モノを売る側も在庫を作ったり調整するためのムダがより少なくなって、コストも当然安くなりますよね。

また、社会全体のムダがなくなればゴミも減ります。ただ、面白いからといってご家庭で3Dプリンティングを使って余計なモノを作ってしまうと、ゴミになってしまいますので要注意でしょうか。

量子コンピュータ×人工知能(AI)で「以心伝心」の世界へ?

量子コンピュータ×人工知能(AI)で「以心伝心」の世界へ?

人工知能(AI)の世界では今、人間の脳波を調べて、その人が何を考えているのか推測する研究が行われています。もし脳波を検知することによってその人の考えを理解できるマシンが登場すれば、何かを操作しなくても、また、何か言わなくても勝手にやってくれるかもしれません。

「お腹がすいたな」と思えば、マシンが勝手にご飯を作ってくれるとか、「疲れたな」と思ったらマシンが優しくマッサージをしてくれたり、「寂しいな」と思えばマシンが優しく抱きしめてくれるなんてことも。
今まではそれは映画や漫画の世界での夢物語にすぎませんでしたが、量子コンピュータと人工知能(AI)のコラボでそれが可能になる時代がやってくるかもしれませんよ。

メールやチャットも、脳波から情報を得てマシンが勝手に入力してくれたら楽ですよね。人間が何も言わなくても、タイプしなくても分かり合える世界が現実に? でも、いつも悪いことを考えている人には、逆に使いたくないツールになるかもしれません…(笑)

 

さて、この記事では量子コンピュータと人工知能(AI)で私たちの生活がどう変わるのか、予想をいくつか取り上げてみました。「人工知能(AI)」という言葉の響きが今はまだ冷たく遠くに感じても、もうすぐ私たちの身近になくてはならない存在となる日がやってくるかもしれません。

これまでの人工知能(AI)の技術では難しいとされていた問題が、量子コンピュータの登場によって解決できたなら、私たちの生活はもっと便利になるでしょう。今不可能と思われている色んなことが可能になります。もしかして、今話題になっている日本の高齢者問題も、量子コンピュータと人工知能(AI)がなんとかしてくれるかもしれませんよ。今よりもっと健康でおいしいものが食べれて、色々なムダが減って便利な生活に。その日が来るのが大変楽しみですよね。

参照元 Commercialize quantum technologies in five years
A Preview of Bristlecone, Google’s New Quantum Processor
Google thinks it’s close to “quantum supremacy.” Here’s what that really means.

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