量子コンピュータがもたらす人工知能(AI)の未来

量子コンピュータがもたらす人工知能(AI)の未来

昨今、人工知能(AI)の言葉を聞かない日はないほど、現在様々な分野で人工知能(AI)が活用されて私たちの生活に役立っていると感じますよね。一方で量子コンピュータはどうでしょうか。なんだかSFめいた響きで、遠い世界のもののように聞こえますよね。しかし、この量子コンピュータが人工知能(AI)の発達に大きな貢献をもたらすことがわかってきていて、しかも現段階でかなり実用化が期待できる段階まで来ているのです。量子コンピュータと人工知能(AI)とはお互い高め合っているといえるでしょう。

しかし、現在の盛り上がりとは裏腹に、人工知能(AI)と量子コンピュータとは、もともと別々に発展してきました。それがどうしてこのような密接な関係となったのでしょうか。

そこで今日は、人工知能(AI)がより高度に発達するためには何が必要で、そのために量子コンピュータが人工知能(AI)にどのように役に立っているのかをお伝えしましょう。

人工知能(AI)はひたすら学習する

人工知能(AI)はひたすら学習する

現在、人工知能(AI)はいろんなところで活用されていて、またこれからさらに活躍が期待できるでしょう。みなさんがよく知っている話題としては、自動車の自動運転ではないでしょうか。日々のニュースを見ていると、もう運転手がハンドルを持たなくても目的地に安全に走ってくれる日がもう間近に迫っている印象がありますよね。また囲碁や将棋の世界では、名人級の方々を破るほどの実力を持つようになりました。

これらの能力はどのように獲得したのでしょうか。それはやはり人間と同じく「学習」を積み重ねることにより実現しているのです。しかも人間よりもはるかに膨大な量の学習を。

人工知能(AI)で使われる2通りの学習方法

人工知能(AI)で使われる2通りの学習方法

私たちが「学習する」と言えば、どのような学習方法を想像するでしょうか。小学生から大学、社会人にいたるまで程度の差はありますが、共通しているのは「やり方を教師(講師)から教えてもらい、そのやり方を使って問題(課題)に対処できるかを確かめる」という方法ですよね。

では、人工知能(AI)の「学習」はどういうものか見ていきましょう。
人工知能(AI)の学習方法は大きく2通りあり、一つは「機械学習(マシン・ラーニング)」で、もう一つは「深層学習(ディープ・ラーニング)」というものです。これらの用語は、皆さんもどこかで耳にしたことがあるかもしれません。

機械学習と深層学習との違いについて、科学的に正確に理解するには数学の高度な知識が必要となるため、たとえ話でイメージをつかんでみましょう。例えば、漢字をたくさん覚えて、読めるようになるために学習することを想像してみてください。私たちが漢字を学んだ方法は、部首やつくりなど、漢字を形作る部品を覚えて、次にその組み合わせを覚えてたくさんの漢字を覚えていきましたよね。少なくとも学校の先生はそのような教え方だったのではないでしょうか。

機械学習は比較的人間の学習方法に近い方法ではないでしょうか。機械学習では漢字の特徴のとらえ方、例えば、部首の形の特徴や、配置などをあらかじめ教え込んだ上で、大量の事例、例えばいろんな書体、いろんなクセのある字などを読み込み、その字を識別するポイントを見定めていると言えるでしょう。

一方、深層学習の学習方法は独特で、学習者(コンピュータやプログラム)には、漢字の読み方、識別のやり方は一切教えません。学習の前に

 1. 目に入る画像(漢字)をどの程度目を凝らして観察するのか
2. その観察で見つけた差異や変化に対してどの程度敏感に区別するか
といった知覚能力の調整を人間が行い、そして、やはり大量の事例を読み込ませることにより、漢字固有の画像の特徴を学ぶのです。深層学習で漢字を学んだコンピュータは部首なんてものは知る由もありません。

量子コンピュータは従来のコンピュータとどう違うのか

量子コンピュータは従来のコンピュータとどう違うのか

次に、量子コンピュータとはどういう特徴があるのでしょうか。量子コンピュータは実は「膨大な計算を一度に処理することができる」のが最大の特長といえます。それってどういうことか想像がつきますか?

量子コンピュータは量子力学(量子物理学)と呼ばれる、物質の原子レベルの目に見えないほどの極微の世界で起っている現象を利用したコンピュータで、その世界では、「0」でもあり「1」でもあるという状態が存在するのです。

またまた訳の分からない言葉が出てきましたね。そうなんです、私たち人間が目にする世界や現象とは違う現象が起きていて、そのような現象を利用すると、たくさんのパターンの計算を一度にできてしまうのです。

量子コンピュータにも2種類ある

量子コンピュータにも2種類ある

そんな不思議な量子コンピュータには、

 1. 量子ゲート型
2. 量子アニーリング型
と呼ばれる2種類の方法が主流として研究および実用化が進められているのですが、それぞれ興味深い運命をたどっていると言えるでしょう。

もともと、量子コンピュータは当初、量子ゲート型を目指して研究が始められました。量子ゲート型は現在私たちが利用しているコンピュータの計算のさせ方に近く、汎用性があると期待されています。しかし、量子ゲート型は実用化に向けてのハードルが高いため進歩が遅く、既存のスーパーコンピュータより有利になるほどの計算能力にはまだ達していないのです。

一方、量子アニーリング型は、最初から特定の計算用途にしか役に立たないことがわかっていました。その用途とは「最適化問題」と言われるもので、たとえば、「地図上の20地点の都市を効率よく、すべて回るにはどうすればよいか?」といった問題に対して、無数にあるルートの中から最適なルートを見つけ出すといった問題を解決することに応用できると考えられてきました。

ここまで聞くと、汎用性のある量子ゲート型、用途限定の量子アニーリング型のどちらに将来性がありそうかは、言うまでもないですよね。この量子アニーリング型は量子ゲート型と比較すると、計算の汎用性もないため、「量子アニーリング型は量子コンピュータと呼べるのか?」と怪しまれることもたびたびあり、最初は日陰者扱いだったのです。

量子コンピュータと人工知能(AI)との出会い

量子コンピュータと人工知能(AI)との出会い

そんな量子アニーリング型の量子コンピュータでしたが、人工知能(AI)へ貢献できることがわかってくると、一躍主役に躍り出ました。量子アニーリング型の量子コンピュータが唯一得意だった「最適化問題」が、人工知能(AI)の学習に役立つことが分かったことがきっかけで、量子アニーリング型の評価が上がったといえるでしょう。

前に述べたとおり、人工知能(AI)は膨大な量の学習を行うことで、その品質を高めることができます。量子アニーリング型の量子コンピュータは、まさにその膨大な量の人工知能(AI)用の学習データを生み出すことができるのです。

さらに、米航空宇宙局(NASA)の試算によると、量子アニーリング型が得意な分野での計算能力は既存のコンピュータの約1億倍近い性能を発揮するとの報告があり、また消費電力が既存のスーパーコンピュータと比べて極めて小さいということも、実用化のモチベーションを高めていると言えるでしょう。まさに量子アニーリング型の量子コンピュータは人工知能(AI)のためにあると言えるでしょう。日陰者どころか良いことずくめですよね。

 

このように、人工知能(AI)の性能を高めるためには、人間が学習する量とは桁違いの膨大な量の学習が必要で、そのための学習データを用意しないといけません。その作業には、やはり膨大な計算能力を持ち、従来と全く異なる計算方法を行う量子コンピュータという計算機が人工知能(AI)に役に立つということがわかってきたのです。

しかもその計算方法は、当初量子コンピュータに期待されていた仕組みとは異なる、いわば「亜流」、悪く言えば「偽者」ともいえる仕組みの方が、実は世の中が期待する人工知能(AI)に役立つと分かったのは驚きです。そして現在では、量子コンピュータと人工知能(AI)とはお互い不可欠な存在といえるでしょう。しかも「本流」よりも実用化が手に届くところまで来ていて、現在国や世界を代表する企業がこぞって取り組んでいるというのは痛快ですよね。

人工知能が今後ますます発達すると、これまで人間が苦手とする単純な作業やルーチンワークを、早く習得していつでも間違いなく実行してくれることにより、人間の負担は軽減されるでしょう。それに代わり、人間はより創造性や感性を活かした活動に多くの時間を使うことができるようになるはず。量子コンピュータの活用で、そんな未来が早く来るといいですよね。

参照元 [量子コンピュータ1]突然商用化した夢のマシン
AI開発に実用される量子コンピュータ--人工知能研究を加速
「量子コンピュータが人工知能を加速する」とそれに関連するメモ.
量子コンピュータと従来型コンピュータは共存する

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そねあす
AIZINE編集部のそねあすです。記事の編集を担当しています!

もともとデザインやHTML、CSSと仲良くしていたつもりがあれよあれよと編集の世界に。AI(人工知能)は作れないけど興味深々なんでまずはSiriを使いこなしてみようと模索中です。

編集初心者が、自動運転やAI家電、AI(人工知能)を使った未来まで 日々変化していくAI(人工知能)のニュースをお届けします!