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5分でわかる!シンギュラリティを支える「収穫加速の法則」とは

5分でわかる!シンギュラリティを支える「収穫加速の法則」とは

最近話題の「シンギュラリティ(技術的特異点)」いう言葉について調べたときに「収穫加速の法則」という言葉を見たことがある人もいますよね。

シンギュラリティは「私たちが持っているパソコンが人間よりも進化する未来」という意味ですが、なぜシンギュラリティが起きるのかの理由・背景としてあげられるのが「収穫加速の法則」。とはいえ、パッと言葉を見た瞬間に収穫加速の法則ってどういうことなんだ?「収穫」って何?など、疑問がたくさん出てくるでしょう。

まえだまえだ
まえだまえだ

・・・うーん、「収穫加速」となんだか難しそうに見える感じがするなぁ。パッと聞いても意味がイメージできなくてまったくよくわからん!

実は一見複雑で難しそうに見える「収穫加速の法則」が言おうとしていることはとてもシンプル。そしてこの考え方を理解できるようになると、シンギュラリティについての理解もぐっと深まるはずです。

ということで今回は、「収穫加速の法則」について5分で読んでわかるように解説しましょう!

収穫加速の法則とは、その意味を解説

どんどん変化していくイメージ

収穫加速の法則を一言にまとめると「技術が指数関数的に進化すること」。とはいえ、指数関数的ってどういうこと??数学ができない人にとってはちんぷんかんぶん、という方が多いですよね。それでは、そんな収穫加速の法則について解説します。

収穫加速の法則=「技術の進化のスピードがどんどん早くなっていること」

指数関数的、というのは掛け算のようにどんどん増えていく様子を現しています。この反対語としては「線形的」という言葉がありますが、こちらは足し算のように徐々に増えるイメージだと考えれば良いでしょう。

シンギュラリティ関連で解説するときに収穫加速の法則がどういう意味で使われるかというと、人類の進歩にかかる時間がどんどん短くなる・変化がどんどん加速している」こと。つまり人類の歴史を振り返る・人類が産まれた、火を使うようになった、紙ができた、機械ができた、ロボットができた・・・など、どんどん近い時間でうまれるようになっています。

実際に生命の誕生~人類の誕生、人類の誕生~直立歩行ができるまで、直立歩行~今の人類の基礎(ホモサピエンス)が生まれるまで、ホモサピエンス誕生~都市・国家が生まれるまでなど、何万年とかかって進化を続けていきましたが、現在では携帯電話やインターネットなど私たちにも身近になる発明されるまで数年(コンピュータからインターネットの登場までは約14年)というスピードになりました。

なぜこのように進化のスピードがどんどん早くなるのかというと、1つの進化がさらに次の進化を生み出すように使われるからです。上記の例で言うなら、

生命の誕生

(生き残るためにより賢くなる)人類の誕生

(動物から逃げるためにより早く走れるようになる)二足歩行

と、進化すると次にどんなことが必要になってくるかを考える、という点で次の進化につながる、と指摘しました。

まえだまえだ
まえだまえだ

確かに私たちは、インターネットにしてもスマートフォンにしても「どうやったら使いこなせるだろうか?」「どうやったら便利になるだろうか?」を考えて使いつつ、これらの道具そのものも進化していますよね。検索すればいろんな情報が出てきたり、ボタンひとつで買い物ができるようになったり・・・。

またレイ・カーツワイルは「ポスト・ヒューマン誕生」で「進化のプロセスは閉鎖系ではない、進化はより広い系にあるカオスを必要とし、その中において進化が起こり、多様な選択肢の中から進むべき方向が決まる」と主張しました。どういうことなのかというと、一つ進化すると次の段階へ進むときにつながりを求めて、そのつながりをヒントに進化することで方向性が定まる、ということです。

なんとなくのイメージとしては、技術の進化でもコンピュータの速度が進化するだけでなくコンピュータがインターネットの登場・発展によって他のコンピュータとつながることで、さらに情報を交換することができるようになる、そうしてIoTやAI(人工知能)など新しい技術の誕生につながる・・・という感じでしょう。

このように、次の段階に進むのがどんどん早くなっている、というのが「収穫加速の法則」です。

収穫加速の法則を唱えたレイ・カーツワイルが伝えたいこと

この収穫加速の法則を唱えたのはレイ・カーツワイル。「シンギュラリティは近い」「ポスト・ヒューマン誕生」で技術・経済の進化の形としてこの法則が唱えられるようになりました。

※レイ・カーツワイルがどんな人物なのかは、以下の記事をご覧ください。

レイ・カーツワイルは「イノベーションは性能を倍々に改良しようとする。足し算のように加法的ではなく、乗法的に進むものだ」と収穫加速の法則を使って解説していますまた最終的に「いずれテクノロジーは自分自身の進歩を完全にコントロールするようになっても、加速を続ける」として、AI(人工知能)が進化した未来について解説し、いずれ人類の知能を超えるだろう、というシンギュラリティ(技術的特異点)を結論として提示しました。

どういうことなのかというと、AI(人工知能)が今は人間にデータを教えられながら分析していた「教師あり学習」のが、今はデータを教えなくても学習できる「教師なし学習」ができるようになっています。もしかしたら、今後データがなくても分析ができるようになるかもしれない。AI(人工知能)が自分自身で発展していくだろう、ということです。

※この2つの違いは、こちらの記事にもまとめられています。

そうなると、もし収穫加速の法則通りに機械の発展するなら技術は掛け算のようにどんどん進化するだろうとレイ・カーツワイルは予測しています。

まえだまえだ
まえだまえだ

果たしてどんな未来になることやら。

とはいえ、レイ・カーツワイルが何の根拠もなくこの収穫加速の法則を唱えているわけではありません。実はこの収穫加速の法則には、「ムーアの法則」という原点があります。次では、そのムーアの法則について解説しましょう。

収穫加速の法則の原点「ムーアの法則」

半導体のイメージ

ムーアの法則とは収穫加速の法則と同じく、「進化の段階がどんどん早くなっている」ことです。収穫加速の法則は技術全般を指していますが、ムーアの法則は「半導体の進化」をメインで指しています。そこで、ムーアの法則についてレイ・カーツワイルの「ポスト・ヒューマン誕生」の内容にそって説明しましょう。

ムーアの法則とは「半導体が小さくなる=コンピュータの性能が進化する」「その進化のスピードがどんどん早くなっている」こと

ムーアの法則とは「コンピュータを動かす半導体がどんどん小さくなっている」という法則のことです。パソコンで有名なインテル社を作ったドン・ムーアは、2年ごとに集積回路上に詰め込めるトランジスタが2倍になっていることを発見しました。回路に詰めるトランジスタが増えるということは、回路の動きが早くなり、コンピュータの性能が上がっていることを意味します。

このムーアの法則が起こる原因は半導体そのものが小さくなることです。実際に計算すると、5.4年ごとに大きさが半分になっているのだとか。大きさが半分になると、性能が落ちることなく製造コストも減り、結果的にトランジスタの価格もどんどん下がります。

そうなると、数年前までまでスーパーコンピュータのようにでかくて研究に使うようなコンピュータにしかできなかった計算も、私たちが手にするようなコンピュータでもできるようになるでしょう

コンピュータの進化=技術の進化につながる

つまり、半導体の進化→コンピュータの発展の関連性を見出だしたのがドン・ムーアで技術の発展につながる、というのがレイ・カーツワイルの考えです。

まえだまえだ
まえだまえだ

そういえば知り合いの研究室にあるスーパーコンピュータ、2000万円ぐらいするって聞いたことある。それが今使われているスーパーコンピュータが、いつか私たちが使うコンピュータにも使われるかもしれない・・・。

これと同じように、レイ・カーツワイルの「シンギュラリティは近い」では、20世紀の頭にコンピュータの処理能力を2倍にするためには3年かかっていたと発表しました。しかし、20世紀中頃にはそれが2年、現在では1年になりつつあり、半導体であるコンピュータのチップもどんどん小さくなっているのだとか。最近ではマイクロチップと呼ばれるようになって今や体に埋め込むこともできるようになっています。

※弊社の社長がマイクロチップを埋めた記事はこちら

このように技術の進化の掛け合わせによってどんどんコンピュータが進化して、新しい段階へ進むまでの時間が短くなっています。つまり、このムーアの法則が当てはまっているのならばコンピュータないしAI(人工知能)の進化するのもそう遠くないに違いありません。

実際収穫加速の法則ってどうなの?

疑問のイメージ

でも、そんな収穫加速の法則について「いや、そんなこと起きるわけないでしょw」と批判したくなる気持ちもありますよね。もちろん、そう感じるのが普通です。次ではそんな、収穫加速の法則に対する批判の意見について紹介しましょう。

収穫加速の法則は当てはまらない、むしろ減退しているのでは?

「シンギュラリティ教徒への論駁の書」ではではシンギュラリティをはじめとしたレイ・カーツワイル氏の主張について反論をしています。この中の1記事である「収穫加速の法則批判『減速する加速』」では、次のように書いています。

「さまざまな現象を虚心坦懐に取り上げてみれば、指数関数的な成長ではなく、むしろ減速、停滞が、あらゆるところで観察できます。」

引用:収穫加速の法則批判 「減速する加速」

この記事では「直近20年で生活が大きく変化していない」という点から収穫加速の法則について批判しています。記事内では生活水準の変化、科学技術の発展などの視点から分析していますが、この記事ではわかりやすく物の発明という視点で見てみましょう。

例えば私たちの生活に密着しているものの中で、1900年~2000年の100年に誕生したものといえば

  • 真空掃除機:1901年
  • 無線通信ができるラジオ:1902年
  • エアコン:1902年
  • 電子式洗濯機:1907年
  • 飛行機:1913年
  • 吸収式冷凍庫:1922年
  • スプレー:1926年
  • 電子式テレビ:1927年
  • 自動車:1949年
  • クレジットカード:1950年
  • 電卓:1957年
  • インスタントラーメン:1958年
  • ペットボトル:1967年
  • カラオケ:1971年
  • 世界初のデジタルカメラ:1975年
  • 携帯電話:1977年
  • CD:1980年
  • インターネット:1983年

などがありますよね。(※これらの誕生時期には、諸説あるので多少の差異があります)もちろんここであげられているのはほんの一部ですが、その中でも1900年~1920年の間でも「掃除機」「ラジオ」「エアコン」「洗濯機」「飛行機」と5つのものが発明されました。しかしその一方で、2000年〜2020年までに新しく発明されたものは

  • Blu-rayディスク:2002年
  • iPhone:2007年

ぐらいしかありません。確かに、並べて比較すると新しく発明されたものが少ないと感じるでしょう。

しかも、この20年の間に生活の流れに特に変化は起きていません。たとえば乗っている車が空を飛ぶようになった、ロボットと人が一緒に暮らしている、という姿はまだ少ないですよね。そんな点を取り上げ、「収穫加速の法則」の法則は当てはまっていないのではないか、むしろ技術の発展は停滞・減速しているのではないかと主張しています。

まえだまえだ
まえだまえだ

なるほど、そういわれると私たちの生活も大きくは変わっていないのはうなづける。

このほかにも、

  • そもそも収穫加速の法則の定義が曖昧
  • 次の段階へ進化する「パラダイムシフト」の「パラダイム」の定義がない

なども、批判できる点として挙げられています。

そもそも「収穫加速の法則」には限界があるのでは

また、当メディア(AIZINE)でも収穫加速の法則に対して「本当に当てはまるのか」という疑問の声が上がっています。気になった方は、以下の記事も参考にしましょう。

これらの記事で解説されている点としては、

  • ムーアの法則が適用されても、限界がどんどん近づいている。つまり何かのきっかけがないとこれ以上の発展は難しい
  • AI(人工知能)が進化を重ねても、判断の根拠がわからないのでなぜこの判断が間違っているのか、を学習することができない
  • そもそも、現在では新しい発見をすることが困難になっている

などがあります。特にこの3つめに関しては、先ほどの発明されたもののリストをあげると1900年代に発明された物は「一から発明された物」が多いのに対して、2000年代に発明された「Blu-rayディスク」は元々発明されていたDVDディスクからより発展させた形で、iPhoneも携帯電話から発展させた形なので「全く新しい発明」ではないですよね。そこからもなんとなくイメージをつかむことができるかもしれません。

そんなわけで、「収穫加速の法則」が今後当てはまるかどうかはわからないのではないかという主張もあります。

それでも、もし収穫加速の法則が本当だったらやってくるのが「シンギュラリティ」。最後に収穫加速の法則の考えを踏まえて「シンギュラリティ」について一緒に考えましょう。

収穫加速の法則がもたらす未来「シンギュラリティ(技術的特異点)」

シンギュラリティのイメージ

シンギュラリティとは「私たちの持っているコンピュータが人間の知能を超えること」。別の名前としては「技術的特異点」「2045年問題」とも呼ばれています。このあたりはすでにたくさんの記事が出ているのでそちらを参考にしましょう。

実は収穫加速の法則とはもともと経済理論の言葉です。研究による技術の発展だけではなく、それを工場の設備に投資し私たちの使う製品の質をあげる、というのが本質なのだとか。実際にコンピュータの進化に伴って、コンピュータの研究にかけられる予算も増える、研究者もより研究に力を入れることができるようになり、その分進化が早くなっていくでしょう。

そのような意味を含めて、レイ・カーツワイルは「経済的発展は一時的に後退しても、それは一時的なもの」としていて、長い目で見れば経済的発展はしている主張しました。たとえば労働における生産性も指数関数的に成長しています。1980年のアメリカの一人当たりの国内生産量は約6,759ドルだったのに対し、1990年には約9,365ドル、2000年には13,130ドル、最新の2019年には19,076ドルとなっているとのこと。

この背景にあるのは、「車そのものの技術が上がり、燃費が良くなる→短時間で遠くまで行くができる」等の技術の変化があります。最近話題になっているリモートワークやオンラインMTGも、「Webの技術が発展し遠隔でもデータのやり取りが可能になる」など、技術の進化が関わっていますよね。

まえだまえだ
まえだまえだ

つまり、収穫加速の法則は経済・技術の発展の仕方として、最終的にたどり着く先が「シンギュラリティ」ということになるでしょう。うーむ、めちゃくちゃ壮大だなぁ。

まとめ

そんなわけで、今回は「収穫加速の法則」について解説しました。では、今回の内容についておさらいしましょう。

  • 収穫加速の法則=技術的・経済的な発展のスピードがどんどん早くなっていること
  • 収穫加速の法則は、半導体の進化の法則である「ムーアの法則」に由来している
  • そんな収穫加速の法則は本当に当てはまっているのか?という批判の声もある
  • もし収穫加速の法則が当てはまるのなら、AI(人工知能)が人間を超える「シンギュラリティ」来るだろう

最近ではAI(人工知能)の発展がとても目覚ましいので「私たち人間を支配するのかも?」と不安になるかもしれません。しかしたとえ収穫加速の法則が当てはまらなくても、新しいものの発明や技術・経済は発展するでしょう。

とはいえ大事な点としては、技術・経済が発展した未来で私たちがどうやって対応するか、です。数年後には全く新しい発明や技術が進化して生活が変わっているかもしれないですが、私たちもうまく使いこなせるようにしたいはず。ぜひ、新しい時代の波に乗れるようにしましょう!

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参考元
レイ・カーツワイル「シンギュラリティは近い 人類が生命を超越するとき エッセンス版」NHK出版
レイ・カーツワイル「ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき」NHK出版
カーツワイルのシンギュラリティ説とその批判 – シンギュラリティ教徒への論駁の書
収穫加速の幻影 – シンギュラリティ教徒への論駁の書
収穫加速の法則批判 「減速する加速」 – シンギュラリティ教徒への論駁の書
アメリカのGDPの推移 – 世界経済のネタ帳
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